1stステージ48:決着!
「誰だあれは!」
「俺たちの魔法を―――かき消しただと!」
「ディル! ブラッドは何をしたの?」
みんなが慌てふためく中、ディルはその問いに答えるべく口を開く。
「みんな―――あの人はかつて神に仕えた3人の偉大な魔導士1人、時空間魔法の始祖:デイ様。 さっきブラッドが使った、時空間魔法の禁じ手、”過去の偉人の召喚”によって現れた本物の偉大な大魔導士よ――――あの神話の登場人物が、現代に……」
いでたちは美しく、長い白い髪をした和服姿の女性。
そして何より、ディルと同じ甲冑を身にまとっている。
その女性―――デイは、ブラッドの元へと歩み寄る。
「小僧―――呼んだのは貴様か?」
「そうだよ~デイさん。 俺の名前はブラッド、よろしく~」
そういい笑顔でデイに言うブラッド。
そしてデイは後ろにあった大きな扉――――オールドアを見上げる。
「おお、我らの主の扉はこの世であっても無事であったか―――よきことじゃ。 さて、そこにおる者達は誰じゃ?」
そういい、デイは俺たちを指さす。
すると、ブラッドは
「単純に俺たちの敵ですよ、デイさん。 俺はそのためにあなたを召喚したのだから――――」
そういうと、デイはため息をつき
「いつの世も、扉を求める争いはなくならぬのか――――ああ、神がお聞きになったら何とも嘆かわしい事かと、お嘆きになるだろう。 世界の平和と言うのは、絶対に無しえぬことなのかと、うれいておるわ」
といい、俺たちに向かって構える。
そして、ディルは俺に向かってこういう。
「翔琉――――全員に神魔法を受け渡すまでに、どのくらいかかる?」
「早くて1分だけど、どうして?」
「1分か―――分かった。 じゃあ、その間まで私が時間を稼ぐわ」
「うん。 先にディルにかけてっと――――じゃあ、急ぐからな!」
そういって、俺はみんなに神魔法を受け渡しに回る。
「あの少年―――我が主と同様の魔法を使うのか。 なるほど、面白い―――」
「行かせないわよ、デイ様」
そういって、ディルはデイの前に立ちふさがる。
「小娘、わらわの前に立つとは良い度胸ぞ―――その勇気に免じて名を名乗らせるぞ。 申してみよ」
「始めまして、私の名前はディル。 18代目時空間魔法伝承者にして、3人の太古の魔導士の1人よ」
「おお、お主はわらわの子孫と言うことじゃな。 なんとも、皮肉な運命じゃのう――――我が末裔よ」
「そうですね、始祖様。 ですが、この運命はあらがえないようですね―――いくら、時の魔法を扱える私たちでも」
「そうじゃのう―――わらわも厄介な魔法を作ってしまった―――時空間魔法:過去戻。 過去の人間を召喚し、隷属させる魔法。 この魔法の解き方は知っておるな?」
「はい―――召喚者を倒すか、召喚されたものを倒すか―――または1時間経つか、ですね。」
「その通りじゃ。 じゃがのう、よりによって時空間を操るものを召喚するとは――――これで、1時間の制約は、簡単に破ることが出来る。 あの小僧、色々と頭のキレる奴じゃ。 まさか、この魔法を生み出した本人を出すとは―――恐れ入る」
「そうですね―――できれば、こんな形でお会いしたくはありませんでした、ご先祖様。 ですが、私たちは―――」
「もうよい―――これ以上は、言葉の無駄じゃ。 戦わねばならぬ宿命で運命であるならば、我らはそれを全うせねばならぬ。 それが、時空間を操るものとしての責務じゃ」
その瞬間、ディルとデイは消えた。
どうやら、違う空間に移動したようだ。
「さあて、ディルはこれで終わりだとして~あとはお前等だな~」
そして俺たちは、ブラッドに挑むのであった。
全員神魔法を発動して―――
凄まじい音がする。
爆発音。
破壊音。
破裂音などなど……。
「へえ~噂通り、神魔法を他人に貸し与えられるなんて~やっぱり便利だね~」
そういうブラッドはすでにボロボロである。
血まみれなのに、更に血まみれになっている。
血が大好物とか、蚊か吸血鬼位なものだ。
「御託は言い――――一瞬でけりをつけてやる」
とカッコいいセリフを言うトルネ。
普段もこういう風にお願いします。
「やれるものなら~ど~ぞ」
「ブラッドォォォォォ! お前に翔琉は渡さんぞ!」
そういって、ライがブラッドに突っ込んでいった。
俺たちもそれに続いて攻撃を仕掛ける。
「雷の魔法:雷轟稲妻・滅!」
「炎の魔法:煉獄炎零式!」
「水の魔法:水龍波音!」
「闇の魔法:暗転闇雲!」
「氷の魔法:氷零凍結!」
「風の魔法:疾風怒号巻!」
「地の魔法:大地之雄叫!」
「光の魔法:神之憤怒!」
俺たちの各属性の最強の魔法をブラッドに放つ。
しかしながら、彼は笑っている。
何故だ?各属性の最強クラスの魔法が8属性すべてが襲い掛かるというのに笑っている。
「この瞬間を待ちわびたよ―――」
そういって、彼は攻撃をオールドアへと威力を倍にして受け流す。
しまった!このままでは、オールドアが破壊されてしまう!
その瞬間、ディルが扉の前に現れた。
「詰めが甘いわね、ブラッド!」
そういうと、彼女は時空を捻じ曲げ再び攻撃をブラッドへと軌道をそらす。
「まさか―――そんなことって!」
と言い、ブラッドは魔法を出す間もなく各属性の攻撃を受けた。
ボロボロだが、また立ちあがった。
そしてディルは再び消える。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
笑い転げているブラッド。
そして、自分の血を見つめ、舐めて再び笑顔になる。
「何この痛み‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 最高‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼ 生きてる感覚が、身体に染み渡る~~~~~~‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
真正のドMか?
その隙をついてホルブとヒョウがブラッドを封印しようとかかる。そして、封印に成功する。
しかし、封印は失敗して、床に叩きつけられてしまう。
「そんな~もっとやろうよ‼ 殺ろうよ‼ 殺って殺って、殺りまくろうよ‼ この快感は、永遠に続けなきゃ! 意味がないじゃないか‼ あははははははははははははははは……んじゃ、お返しな」
そういって、先ほどの最強の魔法をすべて跳ね返す。
跳ね返す―――と言うよりかは、エネルギーに変えて、一度に放出した。
強大なエネルギーの塊が、俺たちに襲い掛かろうとしている。
「ホルブ! あのエネルギーは、吸収できないのか?」
「流石に、質量がけた違いじゃ。 あんなもの、惑星1つ作れるほどのエネルギーがあるぞ‼」
「どうすればいい? どうすれば……」
俺は頭をフル回転させた。
確か、エネルギーを発散させてしまう、最適な方法があった気がする。
何だっけ―――――
「翔琉‼ 危ない‼」
そう言って、ライやヒョウやリュウやボルやホルブやエンやトルネやグランが、俺の前に立って、エネルギーを必死に食い止めている。
「翔琉‼ もう、あの時のブラックホールを打ち破った時の、君の発想力が必要なんだ‼ 頼む! 何か、思いついてくれ!」
「翔琉ちゃん!」
「翔琉‼」
……。
「分かった――――もう、この方法で行く!」
俺は光天神を、精神が擦り切れるように集中して、極限まで高めた。
高めて。
高めて。
光の翼を伸ばし、エネルギーを覆った。
「みんな! 俺が押さえてるうちに、早く結界を何重にも張って隠れてくれ!」
「翔琉はどうするんだ!」
「いいから、早く!」
そういって、みんなを安全な場所へ逃がした。
これでいい……
これで、皆だけは助かる。
「あはは~翔琉君……君、死ぬ気?」
「ああ、そうかもね。 お前の思い通りになるくらいなら、死んだ方がましだ……」
「ふふっ……そんな諦める台詞を言っても、諦め無いのが君だよね翔琉君。 どうせ、またなにかしら打開策をするんでしょ?」
「……」
ふふっ。
ふふっ。
バレちゃったか。
「まあ、死ぬ気ない目をしてるからね~」
「んじゃ、さくっと反撃させてもらうよ。 光の魔法:絶対滅亡操作」
そう言うと、エネルギー体は消えた。
消滅した。
と言うか、消費させただけだ。
発散させた。
エネルギーの一番の消費方法である、別のエネルギーの変換を行って―――つまりは、先ほどの力は神魔法の栄養源にした。
エンジンに燃料を加えたのと同じだ。
「それは! 消去魔法!?」
「いいや、違うねブラッド。 これは消去魔法じゃない」
「ならば、何故あのエネルギー体が消えたのだ? あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない‼」
「あり得なくはないだろう? 天才少年ブラッド……まあ、君程度の実力ではこの現象を説明することは出来ないか……」
「偉そうな口調! 急に目が覚めたぞ! なんだよ、急に強きになっちゃって……」
「うん、だって強いもん」
カチーン
と、聞こえた。
心乱せたようだな。
「こんなに、イラッとしたのは久しぶりだよ……」
「それは、お褒めに預り光栄の至りだ」
「あれ? そういえば、お仲間は?」
「ああ……結界を張って、その中の隠れているよ」
「でも、出てこないだなんておかしいね?」
「そりゃあ、出てこれないだろうな……」
「は?」
「だって、結界の上から時間停止の魔法かけたもん」
「は? なんで、翔琉くんが時間魔法使えるのさ?」
なんでって……
「神魔法を発動しているとね、声が聞こえるんだよ」
「声?」
「次に使いたい魔法を瞬時に言ってくれる声……その声が、俺に時間魔法を導かせた」
「???」
「まぁ、君には難しすぎた説明かもね……」
「生意気な口を利くガキだな~もういいや。 お前は、殺しておもちゃにする……暗黒魔法教団教祖ブラッド=ブラックの名の元に……お前に裁きを下そう……」
どす黒いオーラが、ブラッドを包み込んでいく。
寒気を感じさせる……狂気と殺気が混じっている気迫。
「天野翔琉ぅぅぅぅ……俺が、加重魔法だけで教団のトップに君臨してると思うなよ……俺の、否‼ 俺様の真の力を見せてやるよ! 終焉魔法:腐海華」
黒いオーラが、花びらとなって、辺り一面に散る。
桜吹雪を彷彿とさせる、その光景は圧巻である。
しかし、これは桜と違って安全ではない。
床に花びらが触れると、その部分が黒く染まって、消滅する。
「!? なんだ! この魔法は!」
「あははぁぁぁぁぁぁ‼ この程度の魔法も理解出来ないようなガキに、俺は散々バカにされてたのかぁ? くずだなぁ! クソだな! 冥土の土産に教えてやんよ!」
口調が大分崩れてしまっているな、ブラッド。
「終焉魔法は、この世を終わらせるための魔法‼ この世界を創造した魔法に対をなす、究極の魔法‼ 俺がぁ……俺がぁ……俺が、ディルを騙して得た、古の知識から得た究極の魔法だぁ! あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
「ディルを騙した?」
「そうだ! あの女ぁ……友達少ねぇから、簡単に騙せたぜ。 いいご身分だよな‼ 監視者なんて、絶好のポジションな女がたまたま近くに居てよぉ……利用して利用して、飽きたらポイしてやったよ……あいつすげぇ泣いてたな……可愛いんだよ泣き顔。 女神より可愛いよ……あの泣き顔見れるなら、何度でも何度でも騙してやれそうだぜ‼ あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは‼」
「ブラッドォォォォ‼ お前! 絶対に許さねぇ!」
ディル……こんな男に騙されて……
さぞ、悔しかっただろ?
安心しろ。
俺が、この元凶を取り除いてやる!
ディル……
不器用で、マイペースで、怒りっぽくて、いろいろと厳しいけどさ……
泣き顔なんて似合わねぇ!
お前に似合うのは。
笑顔だろ!
「我―――千載一遇を運命の籠へといざなうとき――――千年の響、千年の宴……紡がれし言の葉よ……盟約と制約の名の元に祈れ……」
「ほう……また、くだらねぇ神魔法でも繰り出すってのか? 無駄無駄無駄無駄無駄‼ あっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。 今の俺様には、誰にも敵わねーよ! 神でさえ、俺には勝てねぇ!」
「……祈りは力となりて、運命は楽園へと導く梯となり、永き年月過ぎ去りて、光となる……」
「勝てねぇよ! 負けちまえよ! 命乞いしろよ」
「闇を討ちし、光の柱よ、空に響かせ、星々の路となり、悪き者を打ち払え!」
「死ね! 天野翔琉ぅぅぅぅ!!!! 2度と面見せんな! 終焉魔法:天地獄国!!!!」
「―――東西を照らす太陽となる! 光の魔法:神之憤怒!」
黒い塊と、光の波状が絡み合い。
衝突する!
「うぉぉおおおおおおお!!! 負けてたまるかぁ!」
「クソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキクソガキィィィィ!!!!」
凄まじい轟音が部屋に広がる。
負けてたまるか!
神魔法よ!
俺に力を!
「いっけぇ!」
次の瞬間、波状の光は、黒い塊を打ち破り、ブラッドを貫く!
「今だ! 時間魔法解除!」
バキーン、と結界が割れ、ヒョウとホルブが飛び出てくる。
「ホルブ!」
「いくぞ、ヒョウ!」
そういって、ヒョウは氷。
ホルブは闇の封印魔法を展開させて、ブラッドを封じ込めた。
「やった! ブラッドを倒したぞ! これで、暗黒魔法教団は、壊滅だ!」
その場にいた全員が勝利を確信した。
そういえば、ディルはどうなったんだ?
一瞬助けに来てくれたけど……
あのあとどうなったんだ?
「翔琉ちゃん! こっちよ!」
とリュウ達が、オールドアの前にすでに集まっていた。
早!
「いよいよか……」
とうとう元の世界へと帰れるのだと思うと、嬉しい。
でも、仲間たちと別れるのは悲しい。
「お待たせ!」
と、異空間からディルが現れた。
よかった。
無事だったんだな!
「いやー、ご先祖様はやっぱり強かったわ。 でもまあ、なんとか制限時間が来て、消えてくれたから助かったわ」
ん?
今、なにかおかしなこと言わなかったか?
気のせいか?
「じゃあ、7人の大魔導士のみんな……封印を解いて」
そうディルが言うと、7人の大魔導士たちは一斉に自身の属性の魔法を扉の前で手元に灯す。
そうすると、扉には各属性の紋章と思われるものが浮かび上がり、扉が開いた。
封印が解かれたオールドアのまわりに溜まっていた埃が、一気に飛び散っていった。
「やったね、翔琉。 これで、あなたの元いた世界に帰れるわね」
と、ディルが笑みを浮かべて言う。
「ああ、そうだな……」
あれ?
ディルってこんなキャラだっけ?
なんかおかしい気がする。
「なあ、ディル……あのさ……」
そう言いかけたところで、すごい脱力感を覚えて俺はふらつく。
え?
なんだこれ?
「ありがとう翔琉……おかげで計画通り、神魔法を手に入れることができたよ」
そういって、俺に笑みを浮かべるディルがその場にはいた。
手には光輝く塊を持っている。
あれは……神魔法?
「ディル‼ 翔琉ちゃんに、なにすんのよ!」
「ディル? どうしたんだ、お前」
そういって、リュウとライがディルに掴みかかろうとした瞬間、ボロボロになって異空間から出てきたデイが
「お前ら! その小娘から、離れろ!」
と言って、魔法のビームを放つが、ディルはあっさりと弾き飛ばす。
「ああ……まだ、いたの? もう、お前の役目は終わったんだから、消えろよ……」
ディルが指をならすと、デイは消滅した。
というか、召喚限界時間まで、早送りされた?
そして、大魔導士たちが俺を守るように取り囲みディルに言う。
「「貴様は何者だ!」」
そういうと、ディルは答える。
笑っている。
いつものディルの、あの可愛らしい笑みではなく。
どす黒い。
悪魔のような顔だった。
「いいだろう。 俺の名前は、ロギウス―――この身体は、もはや俺のものだ。 そして神域魔導士の小僧―――お前の役目も終わりだ、消えるがいい!」
そう言い終わった時、強い衝撃波が俺の身体に襲いかかった。
大魔導士達の声が響き、魔法で脱出しようとしたが、時すでに遅く、俺は扉の奥へと押し出されてしまったのだった。
オールドア編完結




