1stステージ43:光を扱う闇の者
朝方、俺たちは鎖国国家の大地之中心へと向かった。
道中は特に何もなく、あっさりと入国審査のある門の前まで来たのだった。
「じゃあ、この勲章は我が持っていよう。その方が、話がつけやすいからのう。」
そういって、ホルブはいつも来ているマントの上から勲章を付けた。
似合っているな。
「じゃあ、行きましょうか」
そうディルがいい、俺たちはいよいよ大地之中心へと潜入するのであった。
入国審査において、他の人物たちが入国拒否をされている中、ホルブのつけている勲章を見ると、門番はあっさりとドアを開けて
「どうぞ、お通り下さいませ――――」
と言うのであった。
鎖国国家と言う割には、案外簡単に入ることができたのが拍子抜けではあったが、今回は都合がよかった。
そして、地下へ降りていき目にしたのは、光るクリスタルが多く散らばっている美しい光景だった。
地底とは思えないほど明るい景色だった。
そして、文化的ともいえる家々や建物が見える中に唯一外見があっていない建物があった。
黒くて刺々しい、巨大なビル――――
「あれが―――暗黒魔法教団の本部だ」
ボルはそう言った。
元暗黒賢者が言うのだから、間違いはないだろう。
復活した教団のアジト―――よくよく、町民を見てみると、教団のマントを羽織った人が多い。
もはや、この国は奴らの手に落ちたとみて、判断してしまっていいかもしれない。
「じゃあ、作戦開始!」
そういって、俺たちは2手に別れた。
暗黒魔法教団本部強襲部隊:俺・ディル・ボル・ヒョウ・ホルブ
地の大魔導士グラン捜索部隊:リュウ・エン・ライ・トルネ
このメンバーに別れて、役目に沿うように俺たちは目的地を目指すのであった。
暗黒魔法教団本部。
黒くて怪しいビル。
「いよいよだな……」
そう言ったのも束の間、俺たちは教団の団員たちに囲まれてしまう。
何やら、戦闘する雰囲気――――ではないようだった。
そして団員たちは
「お待ちしておりました―――中で暗黒賢者様がお待ちです」
そういって、すんなり道を開けた。
完全に罠ではあるが、ここで進まなければ教団は落せないだろう。
覚悟を決めて、一歩ずつかみしめながら前に進む――――
中に入ると、団員がこちらですと指示しているような、そぶりをしている。
どうやら、そちらの方に暗黒賢者はいるようだ―――
俺たちは長い長い階段を登る―――そして、頂上に着いた時に暗黒賢者はいたのであった。
フードを深々と被る。
「始めまして―――神域魔導士の天野翔琉君」
そういうと、暗黒賢者のマントを脱ぐ。その中身は、高校生くらいの見た目の男だった。
腕には金属製のリングを10個ほどつけている。
こいつ……やべえ……(色んな意味で)
「僕の名前は、ヴィル。 暗黒賢者の1人――――そして、この本部を現在任されている男だ」
「任されている? おい、貴様――――ブラッドはどこにいる?」
「ああ、ブラッドですか? 洗脳済みの、地の大魔導士グランと暗黒賢者ガイルとともに、オールドアのある塔へと向かいましたよ」
あっさりとディルの質問に回答したと思えば、何ともまあ。
予想外。
この場所には、目的の人物たちが誰もいない。
つまりは、無駄足だったのだ。
「―――なんでも、異世界から現れた神域魔導士を逃さないように、オールドアを破壊するとか言ってましたかね」
「なんだと?」
嘘だろ?
それ壊されたら、俺は元の世界へは戻れねーんだぞ‼
「――――まあ、嘘なんですけどね」
嘘なのかよ‼
「いやいや、オールドアなんて便利なものを壊すほど、うちの教団の教祖は馬鹿じゃないですよ……たぶん」
「じゃあ、何しに行ったんだよ」
「ああ、それは簡単ですよ。 神域魔導士は必ず、オールドアの前に現れるから、そこで待っていれば、合えると思ったからじゃないんですかね?」
憶測かよ―――
まあ、とにかく地の大魔導士と教祖がオールドアのある塔にいることが分かっただけでも、充分か。
「しかし、貴様は何故そのことを我らに教えるのじゃ?」
そう、ホルブが尋ねると、ヴィルが答える。
「ええ、それはですね――――ここであなた達には僕の相手をしてもらうためですかね」
そういうと、俺たちに光が襲い掛かってきた。
光の雨―――光の槍――――光の弾……
「この魔法は―――」
「ええそうです。 光属性の魔法ですよ」
俺が驚く間もなく、ヴィルは無表情で答える。
「あなたの魔法は”光を隷属させる”神魔法ですが、果たしてどうでしょうか? 僕の魔法を隷属させることができますかね……」
そういって、光の雨が降る。
「神魔法:光天神!」
そういって、俺は光天神を発動させた。
そして、振りそそぐ光に向かって、手をかざす。
次の瞬間―――光は消えた。
「光天神は、光属性の力を引き出すことが出来る魔法―――だけど、同時に光を消す事さえもできる。 故に、光を操り隷属させる――――それが、神魔法光天神だ」
「ははは。 なるほど、それが神魔法かい――――楽しめそうだ」
いまだに無表情で、ヴィルは攻撃をしてくる。
しかしながら、他にも魔導士がいることを忘れてもらっては困る。
「甘いわね」
そういって、ディルはヴィルの動きを止める。
ヴィルの時間を止めたようだ。
「食らえ!」
ボルは空間を変異させ、ヴィルを拘束する。
「今じゃのう―――」
そういって、ルーンを封じた魔法にてヴィルを封印した――――かに見えたが、しかしながら、ホルブが封印したのは光で作った分身だった。
そして、ヴィルがいたと思われる方向じゃない逆の位置からヴィルは現れた。
まるで蜃気楼のようだった。




