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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:最終章‐扉が開くとき‐
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1stステージ37:トルネは軽い

 温泉の近くに、天然水の水のみ場があった。

 そこで手を使って汲んできた水を、ボルの口元に注いだ。

 ゴクッと、飲んでくれたのが、量が足りなかった。

 俺は何度も何度も往復した。

 水を汲んでは、ボルの口へと注ぎ、水を汲んでは、ボルの口へと注ぎ―――それらを繰り返していると、のぼせていたボルはすっかりよくなった。

 よかった……

 急に立とうとした彼を押さえ、脱衣場にあった手拭いを、水のみ場の水で充分に洗ってから、水を染み込ませ、それをボルの額に俺は乗せた。

 染み込んだ水は、ボルの熱を吸い取り、蒸発していく。

 水が身体の表面で蒸発することによって、体内の熱を奪い取ってくれる。

 のぼせる原因は、水分不足と、熱によるものであるので、充分に水を与えて、熱を奪い取れば、治ると思い行動したが―――どうやら、それが成功したようだ。


「すまねえな、翔琉。 ついつい、話をボーっと聞いていたら、熱が弱いという事を忘れてしまっていたぜ―――」

「まあまあ、確かにトルネの話は、ついつい聞き入ってしまうほど面白かったもんな」

「ああ―――俺も、あんな神話を聞くのなんて、久しぶりだったから、ついついな―――」

「え? ボルは知ってたの? あの神話」

「ああ―――と言うか、この世界にいる者は、全員知っている話だからな。 一種の、おとぎ話みたいなんだけどな―――実話の」

「実話のおとぎ話って―――それ、もはや歴史的な事件じゃないかよ!」


 思わずツッコミを入れてしまった。

 なんだよ、実話のおとぎ話って―――いや、ありえるのか?

 そもそも、おとぎ話って、だいたい魔法が絡んでいるもんな。

 シンデレラの、馬車やガラスの靴だったり。

 白雪姫の、魔法の鏡や毒リンゴだったり。

 人魚姫の、人間に変わるのも魔法だし。

 結果として、俺の世界にも、よくよく考えてみれば、魔法が蔓延っている物語があるのだな。



「お帰りなさい、あなた」

「おかえり、翔琉ちゃん!」


 と、温泉から帰ってきた俺に、リュウとヒョウが勢いよく飛びついてきた―――のだが、偶然(必然)的に、トルネが目の前を横切ってしまったので、結果として彼女たちは、変態トルネに抱き付く形になってしまった。

 トルネは嬉しそうな顔をしながら、彼女たちの胸が、自分の手に触れる感覚を楽しみ


「おほ―――やっぱり、リュウの方が、ヒョウより実っていますな―――うんうん、何とも言えないこの肌触り……まさしく、ギャー―――――‼」


 そして、リュウ達に外まで連れていかれて、星になったとさ♪

 まあ、なんにせよ、結果として助かったのか?

 俺は。

 トルネはお星さまになっちゃったけどな。

 自業自得だな。


「あれ?翔琉 2人は?」


 ディルが奥の部屋から出てきた。

 どうやら、料理を作っていたらしくて、フライ返しを手にして出てきた。

 置いて来いよ。


「―――リュウとヒョウは外だよ。 お星さまでも、作りに行ったのかな……」

「お星さま?―――ああ、またトルネが何かしたのかな?」


 すげえ。

 この流れで、誰が星になったのを分かるのか!


「きっと、2人の胸でも、揉んだのかし―――キャッ!」


 キャッ?

 あの、ディルがキャッて言ったか?

 と思った瞬間、目の前に白い光景が広がった。

 これは―――ディルの、ワンピースの布?

 という事は、あの正面にある白いT-バックって、もしかしてディルの―――


「下着‼‼‼‼‼‼‼‼」


 ついつい、叫んでしまった。

 だって、女子のパンツが目の前に、目の前に、目の前に―――


「あ、翔琉も見たんだな。 じゃあ、俺と同罪な♪」


 と、ディルのワンピースを、スカート捲りのように持ち上げて、ニヤニヤしている、星になった王様―――トルネがいた。

 もう、宇宙旅行から帰ってきたのか?


「―――ト~ル~ネ~!」


 ディルは、ワンピースの下を急いで下げて、トルネの頭を鷲掴みにして、そのまま外へ行ってしまった。

 外からは、この世の物とは思いたくないほど、身の毛のよだつ叫び声と、何かぐちゃぐちゃ、と不気味な音が聞こえてきた。

 そして、外へつながる階段から降りてきた3人の女性の顔には、真っ赤な液体がついていた。

 ぽたぽたと、液体をこぼしながら彼女たちは声を揃えて言った。


「「「外で、大きな虫がいたから、3人で戦ってたら、虫の体液が付いちゃったみたい♪」」」


 何故声を揃える!

 余計、怖さが増してしまうわ!

 トルネは―――虫の息なのかもな、彼女たちの話を聞く限り―――


 ディルの下着を見てしまった。

 でも、どうやら御咎めなしの、温情を受けたためなのか、俺には何の被害もなかった。

 セーフ。

 残念ながら、トルネはアウトだったみたいだけどね―――外に出たら、辺りは血の池と化していた。

 源泉の近くの地面に、身をボロボロにして、突き刺さっているトルネを見つけたので、ボルと協力して引き抜いた。

 そして、回復魔法をかけて、瀕死の重傷だった王様を、俺は助けた。

 普通、こういう場合はお礼を言われるものなのだが―――


「おう翔琉、褒めて遣わすぞ。 俺にひれ伏せ!」


 と言ったので、無言で帰ることにした。


「なあなあ、翔琉―――今日、一緒に寝ようぜ」

「そうだな、ボル。 寝るか」


 そんな感じで、仲良くボルの手をつないで帰っていると、すごく怖い顔をしたリュウとヒョウとディルが、エンの家の入口から出てくるのが見えたので、急いで近場の岩陰に隠れた。

 そして、3人はへらへら笑っているトルネの元へと駆け寄ってきて、再び彼をぼこりはじめた。

 ごめん、トルネ―――もう今日は、助けない☆

 エンの家にある、客人用の寝室へと向かうと、そこにはすでにライが尻尾をフリフリとして、目を輝かせながら待っていた。


「翔琉―――♪」


 そう言ってライが飛びついてきた。

 この場合、ライは幼児化する前だったので、あのごつい姿で抱き付いてきたので、俺はそのまま押しつぶされてしまった。

 そして、そこから記憶が無くなったのだった―――目が覚めた時には、両腕はボルとライが、枕代わりに使っていた。

 普段なら、ここで外にでも出て、深夜パートに突入するのだが、外からはまたあの断末魔のような叫び声と、不気味な音が聞こえている。

 もう、忘れよう―――そう思い、俺はそのまま眠りについた。

 ―――次の日俺たちは、鎖国国家に行くため、太古の魔導士フルートの力を借りるべく、夢幻峡谷へと向かうのであった―――

 ちなみに、トルネは朝起きたらピンピンしていたよ。

 あの後、リュウが我に返って、回復させたんだって。

 良かったね、トルネ―――虫の息にならなくて。

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