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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ラストストーリー編:最終章~真終の巻~
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Lastステージ50:悲劇第二楽章

龍族……そして、エンたちには申し訳ないことをしてしまった。彼らの仲間を何人かみすみす殺させてしまい、彼らの大切な婚姻の儀を中止させてしまいーーー更には、彼らの聖地さえも、地図の上から消滅させてしまったほどだ。

どうにか後で修復させるようにはするけど……。

彼らには思い出として残ってしまうのだよな。


「でもこれで、【なにか】は倒せたはず……」


俺は先程の爆発の跡地に探査魔法で調べたが、やつの反応は出なかった。

どうやら、倒せたようだな。


「ミコト……仇は取ったぞ」


水の支配者ミコト……俺は彼女の死体を埋葬しに、癒しの泉へと向かった。

古城で、シーツの下に顔の無い死体が転がっている。

血が乾いたようで、彼女の首もとに貼り付いていたが、瘡蓋を剥がすような不快な音を立てて、シーツを剥がし、彼女を始まりの塔の近くにある神の眠る墓と呼ばれたピラミッドが浮かぶ場所【創始神墓地】……そのピラミッド内部に安置されたクリスタルの中に、俺は彼女を眠らせた。


「……」


俺は彼女にかけてやる言葉が浮かばなかった。

強いて言うなら、彼女に向かって言うべきなのは謝罪の言葉かもしれない。

守れなくて、ごめん……と。

その後、俺は雨の中、仲間たちを探しに向かう。

と言っても、ディルがいたってことは、あそこしかないだろう……神さえも侵入出来ない不可侵の時空図書館だ。

全員を脱出させ、更に一番安全な場所へ行くのならば、そこが一番いい。


「……あれ?時空図書館の通行証が……」


いつも懐にいれていた通行証が無くなっている。

あれ?

……あ、そうだ。ファーストに貸してたんだった。


「返して貰わないとな」


時空図書館へ向かうために冥界へと一度向かうとしよう。始まりの神ファーストにも、この状況を報告しとかなきゃいけないしな。



始まりの塔の地下にある、冥界へと繋がる扉。

いつもなら、そこにゴリマッチョな悪魔が2体立っているものなのだが、あれ?今日に限っていないな。


「……通って大丈夫なんだよな?」


と、疑問を言いつつも、俺は扉をくぐる。

いつものように。

いつも通りに。


「……冥界も、今日は雨か……」


降り注ぐ冷たい雨の中、俺は冥界へと降り立った。

だが、俺は夢だと思いたかった。

ここは実は冥界じゃなかったっていうオチがいいとさえ思ってしまった。

こんなにも残酷な悪魔の首なし死体が、ずらっと落ちているこの世界を……俺の知る冥界だとは思いたくなかったからだ。


「嘘だろ……」


悪夢はまだ終わっていなかったんだ……。

冥界の悪魔たちの実力は、地上よりも圧倒的に上だ。

特に今の冥界は、最強過ぎるほどの者たちが君臨している程にだ。

言わずも知れた、始まりの神ファースト。

悪魔神にして、冥界の王ヨルヤ=ノクターン。

元邪神にして、全知全能を司る神アマギ。

そして、冥界の悪魔の精鋭たち……。

例え俺でも、始まりの神ファーストには勝てる気がしない。そんな神や悪魔が滞在するこの世界が、今となっては悲惨で酷い光景になっている。

赤色、紫色、緑色の液体が至るところで、飛び散り、散乱し……内臓などがぶちまけられ、身体を引き裂かれた首のない死体が至るところに転がっている。


「……十戒社の方に微弱な生命反応多数……そして、上空で強い生命反応が2つ……とりあえず、十戒社へ向かうか」


神魔法:光天神状態で、俺は光速で十戒社へと向かう。

生き残りがいるなら、しかも弱っているなら、俺が治す。

目の前で助けられる命なら、俺が助けるんだ。

それに、上空での戦闘はどうやら、ファーストだし……時期に、けりがつく。

不死身にして、不老の彼女なら、もしも食べられても直ぐに再生できるしな。



十戒社内は、酷く破壊の跡があった。

そして、いつくもの悪魔の死体が転がっていて、その最奥部の広間には、怪我悪魔や、ヨルヤ、そしてアマギの姿も見えた。


「ノクヤ!アマギ!」


俺の声に気づいた二人は、半泣きになりながら、俺の所に駆け寄ってきた。


「翔琉……お前、元の世界に帰ったんじゃ……?」

「あー、うん。今日帰る予定だったんだけど、ちょっと地上でトラブルがあって……それで、ファーストに貸していた時空図書館へ入るための通行証が必要だからこの冥界に来たんだけど……何があったんだ?」

「……オワリノハジマリダって喋る化物が襲ってきたんだ……」


やはり……。

【なにか】だ。


「それで、そいつは?」

「今上空で、ファーストと戦っている。参戦したかったんだけど……どうやら、ファーストが本気でぶちギレてるから、手出しするとこっちまで危険になるんだ」

「なるほど……アマギは、あの【なにか】について、知らないのか?一応、全知全能を吟っていた神だったのだから」

「……まあ、おおよそ検討はついているけどね……」

「へぇ、それは?」

「恐らくあいつは……‼」


その瞬間、ファーストが十戒社に勢いよく降ってきた。

十戒社は、まるでクレーターのような跡に早変わりしてしまったのだが、広間には俺がとっさに【絶対神域】を展開していたので、唯一無傷で残っていた。


「ファースト‼」


と、ヨルヤが駆け寄るが、その瞬間……上空から飛来した【なにか】に食われた。

だが、流石はファーストと同系列の力を持つヨルヤ……直ぐに身体は再生した。

そして、ヨルヤは【なにか】を蹴り飛ばした。

クレーターを越え、近くの山にまで向かって【なにか】は吹っ飛んでいった。

その間にヨルヤは、ファーストを治癒させた。


「おいおい。大丈夫か?ファースト?」

「あんの化物……強すぎ……私が作った生命じゃないわね……」

「お前が作った生命じゃない?ってことは……」

「……‼ヨルヤ‼危ない‼」


ドンっと、ファーストはヨルヤを押し出したファーストは、山を崩し、真っ直ぐに突き進んできた【なにか】に、足一本を残して食われた。

ファーストを捕食した直後、【なにか】の御腹は異常なまでの膨張を見せた。

恐らく、ファーストがなにか強力な一撃を放ったと言うことだろう。

しかしながら、直ぐ様【なにか】のお腹はおぞましい消化音が聞こえ、膨張していたお腹も元通りになっていた。

そして、ファーストの残っていた足を食べようとした瞬間、そこからファーストが再生して、やつの顔を思いきり蹴り飛ばした。

グギッと、首がおれたような音と共に、【なにか】はその場に崩れ落ちた。


「やったか?」


と、アマギは眺めていたが、しかし直ぐにそれは偽証だと言う事に気がついたアマギは、ファーストから離れるようにと大声で叫ぼうとした。

だが、その声が発せられる前に、始まりの神ファーストは【なにか】によって、全身を余すことなく、食べ残しもなく……綺麗に食べられてしまった。

ボリボリと、彼女の骨を砕く噛み音と、彼女の血が【なにか】の口からよだれと共にこぼれ落ちていく。

ポタポタと、したたかに……。


「ファーストぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


ヨルヤの虚しい叫びが、豪雨の中、冥界にこだましていた。

始まりの神ファーストの敗北……。

それの意味することは……圧倒的な強者による殺戮と言う名の食事はまだまだ続くと言うことだった。

悪夢は、まだまだ終わらない……。

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