1stステージ33:墓標
「ありがとうございます・・なんとお礼を申し上げればよいものか・・」
そう言うのはロールの町の町長ジャクである。
鳥族の長でもあるらしいので、こんなことになる前は、さぞ美しい羽根を持っていたのだろう―――
だが今は、見事にもがれて頭がハゲタカみたいになっている。
恐ろしいな、暗黒魔法教団。
「ジャクさん久々ね」
「おお、ディル様―――」
そういって、ディルとジャクはハぐしあう。
どうやら、知り合いだったようだ。
そして、ディルがジャクさんの頭を見て、必死に笑いをこらえている。
止めてやれよ。
不本意でやられたんだからさ。
「ディル様―――ご無事で何よりでございます」
「それは、こっちの台詞よ。 私たちが来る前に、いったい何が起こったの?」
そうディルが聞くと、ジャクはこの町で起こった出来事を話してくれた。
周りの鳥族は、その光景を思い出したくないため、そそくさと自宅へと戻って行った。
他の鳥族が、家に入ったのを確認してから、ジャクは語る。
ここで何があったのかを―――
「今から2時間前―――あの男が来ました。 暗黒魔法教団教祖ブラッド=ブラック……正直、目を疑いました。 あの男―――ブラッドが生きているだなんて……。 数年前に、処刑されて死んだはずだと聞いておりましたので―――町の皆はすぐに逃げようとしました。 しかし、風城から現れたトルネ様の風属性の壁にに阻まれてしまい―――そして全員が捕まってしまったのです。 私はトルネ様に聞きました。 ”なぜこのようなことをするのか……”と。 するとトルネ様は何も言わずに、神殿へ行ってしまわれてしまいました。 恐らく、風城へ戻られたのかと―――そのあとブラッドは言いました。 ”トルネは暗黒魔法教団に落ちた”と―――それを聞いた瞬間、私たちはトルネ様は洗脳されてしまわれたのだと、理解しました。 そのあと、ブラッドと入れ替わるように暗黒賢者ガイルが現れました。 そして、ガイルは”今からここに、大魔導士どもがやってくる―――お前たちにはメッセンジャーになってもらうぜ”、そういって、私どもに洗脳魔法をかけようとしたのですが―――
突然、”いいや―――やっぱり、お前らの血が見たくなった……”そういって、儀式といい、いたぶり、羽根をもぎ、そしてあの場所へと磔にしたのです。 その後あの文字を書かれ、そのショックで全員気を失っていたのです――――”
話す手を震えさせながら、彼は最後まで語ってくれた。
「ブラッド―――」
そう言ってディルは空を見上げる。
上空には、風城と、太陽が2つあるだけだ。
ジャクは、そんなディルに、しがみつき、涙ながらに懇願した。
「どうかお願いです―――トルネ様を、お救い下さい。 そして――――我が息子、ガイルの目を覚まさせてやってください……」
そう―――ジャクの息子は、暗黒賢者ガイルなのであった。
ディルは、彼に心強く言った。
「分かりました、必ず―――」
真剣に、彼の目を見て。
俺たちは心に誓うように、神殿へと向かうのであった―――
そして神殿前に到着した。
風城へと通じる、古風な面持ちの神殿―――俺たちは神殿へと入っていくのであった。
神殿内部1階―――その空間が物語っているのは、この神殿の役割そのものと言える。
何故なら、ここにあったのはおびただしいほどの石碑―――そして石碑には名前が掘ってある。
このことから言えるのは、ここが墓場であるということだ。
その中で、奥の階段近くにある大きな石碑―――ここにはこう書いてあった。
”偉大な魔導士ディン、ここに眠る・・”
ディン・・つまりはディルの父親である。
ディルの父親は死んでいたのだ。
だから、ディルはここについて詳しく語らなかったのだろう・・
「さあ、行きましょ・・」
いつも明るいディルが暗かった。
この場所がそうさせているからなのか?
何か思い出したくない記憶があるのか―――
早くここから移動しよう。
辛気臭い場所は、好みじゃないんだ―――
2階に来た。
中央に魔方陣らしきものが書かれた、ものがある以外は何もない場所であった。
「あそこが、風城へ行くためのエレベーターよ!」
そういって、ヒョウが魔方陣に向かい走る。
そして、魔方陣を作動させるために何か呪文を唱えている。
すると、どうやら魔方陣が発動したようで、陣は光りはじめた。
「いけるわ!」
そういってヒョウが手招きをする。
リュウがみんなを引っ張っていく。
いよいよ、風城へと行くのだ。
「じゃあ、行くわよ!」
そういって、魔方陣が輝き俺たちは風城へワープしたのだった――――




