Lastステージ48:粗食阻止
ミコト……水の大魔導士リュウの師匠にして、世界最高峰の治癒魔導士。
そして、始まりの神ファーストとかつて戦い、数日にわたる激闘を繰り広げることのできた水の支配者。
そんな彼女は、こんなにも簡単に、無惨に殺されてしまった。
勿論蘇生は試みた。
アマデウスとレネンの助力、究極神魔法の発動、【勇敢】の能力の使用……だが、現実はなにも変えられなかった。
元水の支配者ミコト、死亡。
 
「ちくしょう……なにもできないなんて……」
俺はとりあえず、彼女の死体に近くにあった白いシーツを被せた。
そのシーツを取るときに、彼女の死体を動かしたんだが、その時俺はあるものを発見した。
それは、血文字で書かれたメッセージ。
ダイイングメッセージだった。
「……ミコト……お前……」
そこに書いてあったのは、【なにか】が次に向かう場所である、ある場所へのことだった。
次に【なにか】が向かう場所……それは、炎の龍族が支配する火山地帯ーーー地獄炎瑠だった。
 
「だとしたら……いけない!エンが……ファイが……危ない!」
ごめん、ミコト……。
あとでちゃんと埋葬するから、待っていてくれ。
俺は古城を出て、急いで地獄炎瑠へと向かったのだった。
よりによって今日とは……。
俺が帰るこの日……龍族では、あるイベントが執り行われる事になっている。
それは、龍族の長と龍族の王族の婚姻の儀……即ち、結婚式だ。
この婚姻の儀には、龍族他、精霊族、鳥族……そして、虎族が来ることになっている。
そして、大魔導士たちもーーー。
「やばい!みんなが!」
俺は泉から急いで飛び立つ。
急がなければ、みんな食い殺される。
そもそも、あの【なにか】はなんなんだ。あんなものは、世界の知識を全て見た俺でも、あんなものは覚えがない。
幾数億、幾兆にも及ぶ事象、出来事の中でもあんなものの登場は一度たりとも無かったはずだ。
「ーーー到着したら、また……遠距離からでうまく行くか、分からないけど……やらないよりましか……」
俺は神魔法で遥か上空まで雲を突き破って上り、俺は地獄炎瑠に向かって絶対神域を発動し、展開する。
究極神魔法状態での絶対神域ーーー頼む……俺が着くまで【なにか】を止めておいてくれ。
もう、誰も死なないでくれ。
地獄炎瑠到着ーーーそして、どうにか間に合った。
「いた……【なにか】だ」
目視でハッキリと見えている。
溶岩の海をも気にせず、溶岩の滝をも気にしない【なにか】は、俺が展開している絶対神域で足止めを食らっていた。
何度も何度も血にまみれた拳を、結界に向かって降り下ろしているが、破れずにいた。
「おい、そこの【なにか】‼」
と、俺が声を荒げると【なにか】は俺の方を向いてニヤリと笑った。
不気味な笑みを浮かべた直後、【なにか】は俺に向かって特攻してきた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
「化物め……究極神魔法:天照大御神‼」
雨雲と火山地帯の特徴である厚い雲を打ち払い、全方位から光が【なにか】に向かって降り注ぐ。
光の雨……というよりかは、光の槍をやつにはお見舞いしてやった。
【昇華】によって、更に浄化の力を強めてあるから、もしも悪魔系の魔物ならばーーー光属性の力には逆らえないはず。
「やったか?」
爆煙ならぬ、爆光が晴れると、そこには無傷の【なにか】がいた。
嬉しそうに、笑顔で俺の方を見ていた。
「そんな……」
「オマエハ食ウリストニイナイ。ダカラオマエハ食ワヌ」
「‼お前、喋れるのか?」
「喋レルゾ。フハヒヒヒヒヒ」
不気味な笑い方をするやつだな。
「何故、みんなを……」
「……トニカク邪魔ヲスルナ」
そう言って、【なにか】は、地獄炎瑠に向かって突撃していった。
先程破れなかったのに、今更なにを……。
パキッパキッ……。
まるでガラスが割れるような音が……。
「おいおい……勘弁してくれよ……」
絶対神域が……破られた‼
 




