Lastステージ45:解放へ
始まりの神ファーストによって、神の管理者セカンドは文字通り神罰を与えられた。
絶対的恐怖、絶対的力……それは、トラウマを植え付けると同時に、上下間系をハッキリとさせた。
仏の顔も三度まで、という言葉があるが、果たしてファーストの場合は三度目はあるのだろうか。
俺は絶対にないと思う。
あんな圧倒的で威圧的な彼女を見てしまった以上はな。
「さて、セカンド。翔琉くんの仲間である麒麟……もとい、トルネくんを返してあげなさい」
「は、はい……分かりました……」
「はぁ?分かりました?」
「いいえ……承知いたしました……」
「うむ、よろしい……」
言葉でさえも、ファーストの意に沿わなければ、セカンドは再び彼女によって神罰をされてしまう。
始まりの神ファースト……恐るべし。
「汝の誓約を解きたまえ……捕縛解除」
眠りについていた麒麟は、みるみる光を帯びていって、やがて人間の形へと姿を変化させる。
紛れもなく、あの姿はトルネだ。
「トルネ……良かった……」
「……あれ?俺は何を……」
トルネはボロボロの姿の俺を見て、俺が何をしに来たのかをおおよそ理解したようだった。
天野翔琉という男のやることを、彼は幾数回その目で見てきた。故に転生した自身を解放するために、この神界にやって来た……その答えにたどり着くのは直ぐだった。
「まーた、無茶しやがったな翔琉」
「仲間のためだからそりゃ……」
「ふん。本当に、お節介だな……まあでも、ありがとう。どうやら、俺は麒麟の転生から解放されたようだしな」
そうトルネが自身の上を指差すと、トルネの真上の空では、太陽のように輝く1体の獣が姿を現していた。
神々(こうごう)しく光々(こうごう)しい……あれが、麒麟。
「汝、我の復活に協力し感謝する……永らく失っていた肉体にこうして返る事ができた……」
そうトルネに言う麒麟に対して、トルネは照れ臭そうにこう言った。
「いえ、俺はなにもしてませんよ。麒麟……」
麒麟とトルネ……彼等には、セカンドに捕らわれている間になにか友情が目覚めていたような……そんな雰囲気が醸し出されていた。
「さて、ではトルネよ……我はなにぶん暇じゃ……どうじゃろうか?再び、お主に宿り、共に生きてもよいかの?」
「……‼もちろんですよ♪」
「お待ちください!」
そう声を荒げるのは、神の管理者セカンドだった。
「麒麟殿。あなたは、全ての世界であなた以外もう生き残りのいない絶滅危惧種……そう易々と、許可はあげられませぬ。これだけは、管理者としての役目として許すわけにはいきませぬ」
「案ずるな、2管理者よ……我は、既にこの世界に新たな我を産み落としている……」
「え?」
「ほら……そこじゃ……」
そう言って麒麟は地上へと降り立つと、近くの岩の塊を砕く。すると、そこから麒麟そっくりの小さな赤ちゃんが出てきた。
「我、麒麟と全く同じである個体じゃ。セカンドよ……これで、満足か?」
「は、はい……」
「大事に育ててやってくれ……頼んだぞ」
「……承知……いたしました」
神の管理者セカンドの満足がいった事によって、麒麟はトルネと共に生きれる事になった。
別々の魂、別々の心を宿し、同じ肉体の中で……。
俺の中にもアマデウスやレネンがいる。
ホルブとボルもこの後、無事に救出する事ができた。
神の管理者セカンドは、神界を神獣の楽園にすると約束し、今後一切、施設内であんな酷い拘束をしなくなったらしい。
始まりの神ファースト、悪魔神ヨルヤ、元邪神アマギは、再び冥界へと戻っていった。
俺たちも無事、全員が神界から戻ってくる事ができた。
戻ってきた俺たちは直ぐにトルネの帰還を祝った。
泣いて、笑って、喜んだ……こうして、麒麟トルネを求める冒険は幕を下ろしたのだった。
そして、俺のこの世界での冒険も……。




