Lastステージ37:少年よ、籠の外へ歩め
ホルブとボルが神界へ行ってから、数時間経った。
神界では、すでに1ヶ月ほど時間が経っていることだろう。
こちらとあちらとでは、時間の流れが違うらしいのだ。
……。
となると、やはり……。
「なにか起こったってことになるんだろうな……」
と、俺こと天野翔琉はそう思ってしまう。
部屋の隅で、泣きじゃくって、丁度鼻水を拭いていたときに、不意に思い出した。
2人が神界へと出掛ける前に、彼らは俺のところへと寄っていった。
そして、俺にこういった。
『数時間で戻らなかったら、トラブルが起こったってことで、ディルでも誰でもいいから助けによこしてくれ』
そう彼らは言うと、泣きじゃくってた俺を後にし、旅立っていった。
失った仲間である【風の大魔導士トルネ】を救うために……。
麒麟に転生してしまったトルネ……彼は今、神界と呼ばれる場所にいるらしい。
神界とは、文字通り神様が住まう世界のことだ。
始まりの神ファーストと、悪魔神ヨルヤ=ノクターンによって生まれた理と世界ーーーさらには、彼らから分身として産み出された幾数にも及ぶ神……無闇に他世界への干渉を避けてきたファーストによって、世界へと干渉できる事ができるのは、実子であるレネンとアマギのみで、他の神には世界へと干渉するには、特別な許可が必要になったという。
まあ、世界へと干渉できる神は、その後乱心し、何度も何度も世界をねじ曲げてしまっていたので、何とも言いがたいとも言えるがな。
そんな何人もーーー否、何神も干渉しなかった他世界から、今回はそんな干渉があったのだった。
神獣である【麒麟】の転生。
神界にある麒麟本体の元へ、転生した魂は宿ると始まりの神ファーストは語っていた。
だから、麒麟に転生してしまったトルネは、神となって、神界へと逝ったのだ。
そんな場所に、2人は赴いた。
そんな場所に行った2人は先程のような言葉を残していった。
結論から言おう。
ふざけるな。
誰でもいいから助けをよこしてくれだぁ。
冗談じゃない。
この言葉で目が覚めた。
いつまでベソベソクヨクヨしてるんだよ、俺。前に進まなきゃ行けないし、前に進もうとしなきゃダメだろ。
トルネが麒麟で、転生して、転生直前に悪口言われた位で……。
くそ。
「……行くか」
俺は、引きこもっていた部屋から飛び出した。
そして、家から出ると、目の前には、いつもの仲間たちがいた。
ディルや、ライ……大魔導士のみんなや、太古魔法の使い手のみんな。
みんないたんだ。
ここに足りないのは3人だけ……。
ボル、ホルブ……そして、トルネだ。
「みんなごめん。もう、俺……」
「「その先は言わなくていいよ」」
みんなの回答は同じだった。
言葉は後でいい……今は、彼らを助けに行く方が大切だ。
そう言われたような気がした。
「よし、じゃあ行こう。神界へ……仲間を助けるために」
これが俺がこの世界での最後の闘いとなることになった。
オールドア復旧による元の世界への帰還まで数日……。
不老不死の薬の開発は、先の戦での経験から封印しなければならないとして、俺は帰って何をすればいいのだろうか。
何に夢中になるのだろうか。
俺はなにがしたいんだろうか……。




