Lastステージ35:神獣管理
儂たちは、麒麟と出くわすために、ある場所へと訪れておった。
間違いなく、ここに麒麟はおるじゃろう。
動物園。
麒麟がいるところは、ここ以外にないじゃろ。
神界に動物園はあるのか、と聞かれれば……「ある」と答えるしかない。
神獣を扱う動物園……否、神獣園とでも言うべきだろうか。
全ての頂点に立つ神であるファーストーーーその始まりの神である彼女が、かつて付き従えていた5体の獣たち……。
それらは、今絶滅危惧種とされている。
というのも、かつて彼らは多くの生物を産み出した。
産み出して産み出して産み出した。
各種族の祖たる彼らは、多くの力を使いすぎた。その結果、彼らはその彼らの眷族からでさえも、やがて繁殖の力を失わせてきた。
そんなこんなで、現在全ての神獣は完全な管理下に置かれているーーーと、情報屋アニオンが始まりの神ファーストから聞き出した神界の裏情報だとそうらしいのじゃ。
ったく、始まりの神ファーストから聞き出すだなんて、アニオンも伊達に自称で「全てを知る女」なんて言わないわけだ。
さて、そんな神獣を管理している神獣園ーーーここに、恐らく麒麟……もとい、トルネがいるはずじゃ。
トルネにあって何をするのか……それより、トルネは記憶があるのかどうか……そこが肝じゃの。
そもそも、転生と言うのは、新たに生まれ変わる事を意する意味合い……儂も、トルネに言われるまでーーー否、今でさえも玄武であった頃の記憶などない。
白虎の生まれ変わりライ、青龍の生まれ変わりリュウ……彼らにさえも、記憶などないものじゃ。
唯一、転生後にも記憶を引き継げる不死鳥【朱雀】だけは例外じゃがな。あやつにとって、死とは終わることのない人生の変化点と言うだけであって、実際には同じ生物として生まれ落ちるのじゃからな。
麒麟ーーー神獣の中で最も強く最も高位種であるこの生物は、果たしてどうなのだろうか。
そんな事は、会ってみてからのお楽しみということじゃろうな。
いやいや、そんな呑気な事も言ってはおられぬか。
「ホルブ‼」
「‼」
ボルの叫び声とともに、視覚に入ってきたのは巨大な隕石だった。
その隕石が儂らに向かって降ってくる。
流石は神界……なんでもありじゃな。
神界は神には優しいが、それ以外の者には過酷な試練を与えるとされる世界ーーーと、ファーストが語っていたそうだ。
儂らの構成メンバーは、玄武の生まれ変わりと虎族最終兵器ーーーすなわち、神ではない。
当然である。
そのため、儂らに対して神界は外界へ排除しようと、過酷な状況を生み出し続けておるのじゃ。
全く、恐ろしいシステムじゃわい。
だが、まあーーー神界の過酷は、全て魔法による攻撃じゃ。
それならば、儂らも当然のように魔法で対応すればいいだけなのだろう。
「ボル、空間魔法を‼」
「ん?!あ!そうか!空間魔法‼」
ちょっと間の抜けたボルの空間魔法によって、隕石は次元の狭間へと飛ばされた。
まったく、危なっかしいのう。
「ふう……まだつかねぇのかな?」
「はてのう……ファーストの話では、隕石が降ってくる場所の近くじゃといっておったから、そろそろなはずじゃが……」
「隕石が降ってくる場所の近くって……」
「あ、ほらほらーーー多分あれじゃ」
「おい……」
「うん。あれじゃな……多分……」
「おい……おいおい。俺疲れてるのかな?」
「何をいっておるんじゃ……ほら、いくぞ……」
「行きたくねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ボルがこんな感じで駄々をこねているのには、あの目の前に広がる要塞のような動物園を見てしまったからだろう。
侵入者殺す、と明確に書かれ、辺り一面には何かの腐った死体と骨が転がるあの動物園の風景をーーー。




