Lastステージ34:拝啓、友へ……
もう会えない友へ……。
お前は今、なにをしているんじゃ。
お前は今、なにを思うておるんじゃ。
天野翔琉は、お前のお陰で助かったーーーじゃが、お前が目の前で消滅したことで、別荘の一室に引きこもってしまった。
ろくに飯も食わず、ろくに眠りもせず……ただただ泣いておる。
声が涸れようと、水分が無くなろうと……延々と、えんえんと泣いておる。
泣いて泣いて泣いておる。
もう、儂らにはどうすることもできぬようじゃ。
ジンライの甘えや、ライの幼児化、リュウの呼び掛けにも翔琉は反応することさえもしなくなった。
もはや【無】だ。
そんな翔琉を救うべく、躍動し、蠢くのが儂らじゃ。
オールドア復活まで残り数日ーーー翔琉を安全に帰らせるために、儂ーーーホルブと、8人の大魔導士の一人であり、最終兵器とされた男ーーーボルは動き始めた。
天野翔琉が絶望し、嘆いている間ーーー儂たちは【時空図書館】へとやってきていた。
そこで、天野翔琉があの日見てしまった光景を、儂たちも改めて見させてもらった。
確かに……あんなものを見てしまって、言われてしまって、心が折れない方がおかしいのかもしれない。
あんな、残酷で唐突な死に方など、到底受け入れることなどできるまいて……。
儂でも嫌じゃし。
「……おい、ホルブ」
少しやつれたように見えるボルはゆらりゆらりと、儂の元へと歩み寄る。
相当、精神的に堪えているようじゃのう。
「俺たちは、どこに向かっているんだ?」
そう辺りを指差す。
辺りは、溶岩の流れる海と、豪雪の草原。
ここが何処なのかといえば、世界の狭間にある【神界】とでも言っておくかのう。
まあ、儂らには馴染みのある【伏神殿】のある場所とはまた違う場所じゃ。
伏神殿ーーーそれは、世界を監視するためにつくられた神の世界。今では、【真実の神】として転生させられた元英雄である男が、世界を安全に安定にするために監視している場所となっている。
神を守る守護隊以外には、神に認められた者のみが本来ならば行き来できるその異世界。
かつて、全てを食らう獣の侵入によって、大きな損失を受けたその空間は、今ではもうすっかり元通りとなっている。
その【伏神殿】のはるか上空には、更に更に【神界】と呼ばれる異空間へと繋がる扉があったのだった。
初めは空間の揺らぎから始まり、今では目視できるほどにその扉は完全に見えるようになった。
伏神殿で見つけた書物によれば、神界はその名の通り【神が住まう世界】。
始まりの神ファーストも、本来ならばそこに住んでいるはずだったが「神の始祖」で在るがゆえに神界が滅ぼされたとしてもファーストさえ生きていれば全員が復活できるという事で、ファーストは神界から隔離されてしまう。
ファーストはノクターンと出会ったのはそんなときだったとも言っていた。
つまらなかったから、天地創造などなどを行ったとか。
とんでもねぇ話なんじゃがな……。
そんでな?
そこにいるってことは、何かしら目的があるんじゃよ。儂らには。
まあ、もうほとんど察せられると思うのじゃがーーーここらではっきりと提示しておくのも悪くはないな。
という事で、今回の目的はな……ずばり【麒麟】を斬る事じゃ。
いやいや、殺しはせぬよ。
だが、魂は分割させてもらう。
この、真聖絶光剣でな。
ご存知この剣には、魂を分離する力が備わっている。
その性質を用いれば、例え神と言えど、抗えぬことは先の戦で承知済みである。
故に、この剣は今回におけるキーアイテムであるのだ。
「さてさてさてっと、長い解説も終えたことじゃし、麒麟の元へと向かうかのう」
「ん?ホルブ。麒麟の居場所を知っているのか?」
ボルは、目を輝かせながら儂に問う。
もちろん儂は満面の笑みで答える。
「勿論」
麒麟と言えば、あそこしかないじゃろうな。




