Lastステージ30:悪の朱雀へ
ドッペルゲンガーと朱雀の会話は続いていた。
「まったく、天野翔琉という人間には驚かされるねーーーっていうか、鳥族王族ですら知り得ぬその転生の情報をどこで知ったのやら」
「いやいや、翔琉は全世界の事象を1度目撃しているからね。数億数兆以上にもおよぶ数々の知識を、天野翔琉という人間は1度目撃しているーーーだからこそ、俺は翔琉に化けている間は翔琉の知識を使役できる……だから、今何をすべきかも、分かる。その気になれば世界さえも支配できたり終わらせたりもできるけど……ディルが怖いから、そんなことできないな♪あはっ♪」
サラッと怖いこというな、ドッペルゲンガー。
いやまあ、翔琉が本気出したら世界征服とか、世界滅亡も出来るんだろうけどーーーいや、出来ることに対して、今はゾッとするべきなのか。
ゾッ。
「……分かった。その人間……天野翔琉とやらを治してやろう。不死鳥魔法で、完全回復させてやる」
「……ありがとうございます、朱雀殿」
なんだ、こんなにあっさりと……。
「なーんて、嘘だよん♪」
と、間の抜けたような声とは裏腹に、凶悪な真っ赤な炎がドッペルゲンガーを包み込む。
ドッペルゲンガーは、叫び声さえもあげる間もなく、塵となっていく……。
「させるか!」
と、俺は炎を風で吹き飛ばす。
危ない危ない……ドッペルゲンガーが、ごみくずとなってしまうところだった。
って、ん?
「炎が消えない!?」
「ト……ルネ……」
「ドッペルゲンガー‼」
絞り出すように俺の名を言ったドッペルゲンガーだったが、やはり……塵となっていく。
「なんなんだよ、これ!」
「うふふ♪なにって、これが不死鳥魔法だよ。死と再生を司るこの魔法……聖なる炎で焼かれるのは、罪のある者のみ……罪なき者には、再生を与えるーーー故に、そこの人形は焼かれているのだ」
「ドッペル‼絶対滅亡操作を使うんだ!」
「そうか……絶対滅亡操作‼」
絶対滅亡操作ーーー魔法を消し去る魔法。
つまり、魔法を拒否する魔法なのだ。
通常ならば、魔法が消えるはずなのだが……炎は消えない!?
「無駄だよーーー神魔法程度じゃあ、各々の神獣の扱う固有魔法は破れないよーだ♪」
ゴゴゴッと炎の勢いは増していく。
ドッペルゲンガーの身体は、どんどん塵となって消えていく。
塵となって、塵となって、塵となってーーー。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」
その瞬間?だったのかな。
俺の叫びに呼応するように、炎は消え、ドッペルゲンガーは身体が消滅するのは収まった。
そして、その光景に朱雀は驚いていた。
「……‼バカな!不死鳥魔法が、消されただと?」
「え……なにが起こったんだ?」
俺にも朱雀にも、その場にいた人物の中で、一人を除いて誰も知り得なかった。
天野翔琉の知識を有する、ドッペルゲンガーを除いて……。
「そりゃあ、当然だろう……そこの風の大魔導士トルネもまた……とある者の生まれ変わりなのだからな……」
ドッペルゲンガーはそう言う。
まるで、知っていたようにーーーまるで、当然のように語る。
「朱雀殿……もしかしたら、お前のせいでとんでもない者を目覚めさせてしまったのかもしれないぞーーー」
「はっ。何をよまい言を……神獣である青龍、玄武、白虎の生まれ変わりは、とうに知れておる。故に、神獣はもう……」
「いいやーーーまだいるだろ?青龍、玄武、白虎……そして朱雀の上をいる、神獣の上がな……」
神獣の上?
いったいなんなんだ?
翔琉……お前は何を知っているんだ?
俺の……何を知っているんだ。




