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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ラストストーリー編:第2章~朱雀の巻~
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Lastステージ29:人形vs毒鳥

天野翔琉に変身しているドッペルゲンガー。

神魔法さえも使えてしまうほどのコピーには驚きだが、それは同時に【人間】という部分まで司ってしまうのだろう。

人間とは、弱々しい生き物だ。

雨には負ける、風にも負ける……そして、毒にも負ける。

つまり、現在のドッペルゲンガーにとって、ピトフーイ以上に質が悪くて、相性の悪い相手はいないだろう。

天野翔琉が例え超のつくほどの魔法の使い手だろうが、先程のように彼女の毒羽に襲われれば、隙が生まれてしまうだろう。

その隙が、戦闘では命取りとなる。


「さあて、天野翔琉の偽物くん……目障りだから、消えて‼」


ピトフーイがそう言うと、自らの羽毛が数枚抜け落ちて、ドッペルゲンガーを襲う。

さながら弾丸のような毒のついた羽を、ドッペルゲンガーはひらりとかわすが、後ろの壁に羽が刺さり、その場所はドロッと溶けてしまう。

毒素の強さが、先程より上がってる。


「ドッペル‼逃げろ!」

「逃げる?俺が?いやいや、大丈夫大丈夫。あの程度の毒なら、所詮、混酸レベルだから問題ないって」


混酸って、翔琉から聞いたことあるけど、割りとヤバイやつじゃなかったっけ?

いや、もう今見ただけでも、あのピトフーイの毒はヤバイ事にかわりない。


「ドッペル、接近戦は危険だ!絶対にピトちゃんの皮膚には触れるなよ!」

「分かってるよ!」


ドッペルゲンガーは、全身を覆う光をさらに強める。さながら、光の鎧とでも言うべきなのだろうか。

薄く膜を張るように、ドッペルゲンガーの周りを光が守っている。

なるほど。

毒を寄せ付けないための、防御策というわけか。


「偽物くん、その程度で天野翔琉だなんて、生易しいというか、雑魚さ加減がいい加減目立ってるわね……いいわ、殺してあげる。お前も、トルネも……鳥族王族女王陛下の代行(・・)として」


代行……すなわち、代わりというわけだ。

今のピトフーイの発言は、確実に彼女自身が女王でないことを認めてしまったようなものだ。

すなわち、偽物であることを認めた……そう捉えるのが正しい。


毒鳥魔法(ポイズンバードマジック):死鳥(しちょう)


おぞましい毒気が、辺りを支配するーーーそして、ピトフーイの背後から毒の煙で出来た一羽の大きな鳥が、ドッペルゲンガー目掛けて飛び、その煙で包み込む。

ゲホゲホと、ドッペルゲンガーは苦しそうにしているが、すぐに光属性の浄化の光が毒気を取り除く。

その光景に、にやっとしながらピトフーイは見ていたのを俺は見逃さなかった。

きっと、彼女にはまだなにか隠していることがあるに違いないーーーそれも、殺すための秘策が。


「毒鳥魔法:滅鳥(めっちょう)


再びピトフーイの背後から毒の煙に包まれた大きな鳥が現れ、ドッペルゲンガーを包み込む。

先程のようにドッペルゲンガーは、光属性の浄化で打ち払おうとするが、どうしたことだろうか。

光が突如消える。


「どういうことだ?ゲホゲホ……」


むせ苦しむドッペルゲンガーに、ピトフーイはゆっくり近づく。

そして、彼の髪を引っ張りあげて、高笑いしている。


「残念だったね偽物くん……滅鳥は、対象となる属性を侵す猛毒の鳥ーーー侵された属性は、使えなくなるのよーーーまあ、今この場だけだけど……でも、毒使いの私相手に、毒を浄化できる光属性が無ければ、無駄というもの……」

「……毒が……ガハッ……」


血をボタボタと口からこぼし始めたドッペルゲンガー。

そのこぼれ落ちる血を数滴、指で受けとめ自身の唇に口紅のように塗ったピトフーイは、ドッペルゲンガーにキスをした。

剥き出しの猛毒の皮膚がある、彼女自身の唇で、ドッペルゲンガーの唇を奪う。

だが、この場合失われるのはそれ以上に、彼の命だろう。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……お?」


俺の叫びが終わる前に、俺はドッペルゲンガーの姿が変化していることに気がつく。

そして、ピトフーイはそのままキスを続けていたが、いっこうに死なないドッペルゲンガーが何をしているかを気づくには至っていない。

なぜなら、ドッペルゲンガーは今、元の姿に戻っているのだ。

人形姿に戻っているーーーということは、人間ではないことなのだ。

つまり、ピトフーイの皮膚からによる毒は今のドッペルゲンガーには効かないのだ。

そして、ドッペルゲンガーは彼女の頭に触れる。

手のひらから光がピトフーイを貫くと、彼女は白目を向いてその場に倒れる。


「ドッペル!」

「ん?殺しちゃいないよ。単に、記憶を停止させただけだよ。心を持つ生物は記憶を止めたり消したりすると、気を失ってしまうものなのさーーー俺は記憶を操る人形……人殺しは禁じられてるからな。ディル師匠の言いつけだし……守らねーと、お仕置きが怖いからな」


ガタガタとドッペルゲンガーは震えていた。

そんなにディルのお仕置きって怖かったのか。

今度受けてみたいな……なんて。


「さてさて……んじゃあ、朱雀殿……そろそろ正体を明かしてもらいましょう……」


と、ドッペルゲンガーは再び翔琉に変身して、倒れたピトフーイを通り越して、鳥族王族親衛隊……さえも通り越して、その後ろにいたピトフーイの子供の手をとる。


「その子供が朱雀?」


信じられないな。

とてもじゃないけど、そんな風には見えない。

そんなくそガキが?


「お初にお目にかかります、朱雀陛下……今は転生してから数年後のお姿ってことですかね?」

「なぜそのことを?」


朱雀と呼ばれたその子供は、驚いていた。

転生?

いったいなんのこといってるんだ?


「朱雀陛下……今、この姿の男は【虎族の怨念】によって、身を苦しめ、床に伏せております……この男は、異世界からの来訪者……あなた方を生み出した始まりの神と悪魔神に認められた男……どうか、助けていただけないでしょうか?」

「……なぜ、転生のことを知っている……なぜ……私が朱雀だということも……否、なぜそこまで天野翔琉という男は知ってるくせに、その怨念を受け入れたのだ?」

「そりゃあ、翔琉は【お人好し】ってやつだからだ。他者のために力を使い、他者のために知識を深めた……だからこそ、みんな翔琉が好きなんだ。いや、好きになるんだ……だから、人間に嫌いのあなたでも初めて好きになる人間になるのではないかと、思いますよ……」


全く、俺が理解できないままに話しは続いていくのだった。

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