Lastステージ27:風城に舞う
さてさて……っと、とりあえず我が城である風城へと来てみたものの、さてさて本当にどうしようかな。
いや、決していつものようにふざけているわけではなくて、モノホンで、まじでどうしようかということなのだよ。
鳥族王族の発見というのは、割りと難しいことである。というのは、彼らが固定された場所でじっとしていないということが大きい。
渡り鳥のように、ある時期ある時期によって、すむ場所を移住しているのだ。
そんな彼らの寝床とされている場所は、数多く存在するため、滅多に会うことができない。
唯一、それらを理解しているのが鳥族の者たちだけだったりする。だが、彼らは先程のように王族の事について尋ねると、大勢で攻撃してくる。
これはまあ、鳥族王族が彼らの血に訴えかけたからかも知れないな。
本能的に、危機をさっちしたから、遠隔で攻撃してきたーーーそんなところかな。
という感じで納得しておかないと、話は進まないだろうからね。
「鳥族王族……ピトフーイ女王か……」
俺は昔、彼女に出会ったことがあったんだ。
1度だけ……。
「……天野翔琉死亡まで残り42時間と18分28秒……。それまでに彼女を見つけなければな……」
俺は風城より出ようと、玉座から降りて、すたすたと正面入り口に向かう。
だが、突如としてその歩みは止まる。
なぜならば、風に違和感があったからだ。
風城を覆い隠している風の結界……この結界の風がおかしい。
「……誰か攻撃している?」
風城の風は魔法攻撃さえも弾くことができる。だが、翔琉とかみたいな強大な魔法攻撃や、能力には対応していない。
だが、翔琉レベルの強大な魔法を使えるとなると、限られてくる。
世界魔法連合トップクラスの力を持つ大魔導士以上の者たち。かつてのブラッドたちの教団の暗黒賢者以上の者たち。世界に少なく存在している各部族の王族たち……。
王族?
「まさか?」
と、言ったところで、風の結界はぶち壊されてしまった。そして、そこに舞い降りたのは、紛れもなくこの世でもっとも美しく、この世でもっとも気高い力を持つ鳥族王族……ピトフーイだった。
美しい装飾品などは一切つけずとも、その美しき羽と美しき容姿によってもはや芸術とまで言えるほどのレベルの姿だ。
ただ、もう少し服には気を使ってほしいな。
布巻いてあるだけだから、はだけたら一発ですっぽんぽんだぜ。
まあ、それはそれでいいけどな!
「お久しぶりですね、トルネ……私が必要だと聞いたもので、文字通り飛んで来ましたわ」
ギャグですか?
いや、そんなことはどうでもいい。
「ピトフーイ女王陛下……いや、昔みたいにこう呼ぼう。ピトちゃん」
「その名で呼ぶなよ……今、二人きりじゃないんだし……」
「ふぁ?」
ううう……確かに。
ピトフーイの後ろに、ずらっと鳥族王族親衛隊のみなさんが……っと、あれ?
あと、小さな子供も?
「おい、ピトちゃん……その子供は?」
「ん?いや、私の子供だけど?」
「……ふぁ!?いつのまにお前母親になってたんだよ!」
驚きの展開すぎて、思わず声が裏返ってしまった。そっか、あのピトちゃんが母親にねぇ……。
「じゃあ、改めて……ピトフーイ女王陛下……。あなたにお願いがあるんです……俺の仲間の仲間である、天野翔琉を……異世界から来た最高峰の魔導士をーーーあなたの、不死鳥魔法で助けてもらえないでしょうか?」
「いや、むり……」
「そこをなんとか……って、おい!発言が軽すぎるぞ!」
軽いのりで断るのやめてほしい。
一応、命がかかっているのだから。
「私が下界の……ましてや、異世界の少年を助けることは、鳥族としての掟を破ることに他なりませぬ……故に、他を当たることね……ってのをいいに来たかったのよ」
「相変わらず、掟掟の掟女だな……だから、昔ほっぺにキスしたら激怒したんだな……」
「それをみんなの前でいうんじゃないよ!この野郎!」
おっと、これは秘密だったのか。
残念だけど、親衛隊も子供もポカンとした様子だぜ。
「トルネ……あんたってやつは、昔からそうよね……人の事を散々茶化して、恥をかかせて……あの時だって……いや、もういいわ……ムカつくから、あんたを一発殴らせろ」
「おー、怖い怖い。鳥族王族の女王陛下ともあろう御方が、幼馴染みの俺の顔を殴るとは……花魁どもでさえも、そんなことは日常茶飯事……んじゃ、変わらねーのな。はぁ……モテる男は辛いぜ……いつも女の子に愛の鞭で調教されなきゃ行けねーなんて……やだやだ……」
「だから、発言が卑猥だっての!」
ぶんっと、ピトフーイの羽が広げられると、その突風で風城内の壁に軽くヒビが入った。
風城ということで、風属性に耐久性を持たせた構造にしてあるとはいえ……さすがに、鳥族王族となると威力が高いようだな。
「親衛隊の皆……我が子を頼みますよ。私は、直々にこの男に手を下します……風の大魔導士トルネ……覚悟されよ……」
ピトフーイの魔力がひっきりなしに上がっていくのが、肌でわかるほどに感じる……。
鳥族王族の女王直々に手を下してくれるだなんて……まったく、昔と変わらずかわいい子ちゃんなんだからな。
「ピトフーイ女王陛下……では、相手をしましょう……全力でな」
俺は頭についた王冠を取り外して、玉座の上にのせる。さあ、ピトフーイ……久しく行っていなかったから、始めるとしよう。
真剣勝負というのをな。




