Lastステージ23:絶体絶命へと進む
ザクッ……っと、ベルクーサスの唾液が付着した剣は、生々しく俺に突き刺さった。
ガード出来なかった……というか、ガードしても無意味だった。何故ならば、この剣は、真聖絶光剣……分離させる事に特化した剣だ。
俺がガードしたところで、監獄状態とか他の形態で攻撃されるならば、対して変わらない。
今問題なのは、何を分離したのかということだ。
「翔琉ぅぅぅぅぅぅ‼お前の力‼切り裂け!」
ズバッと、切り裂かれた俺ーーーいや、俺たち。
俺は切られてしまった。
いや、身体に異常はないんだ。
むしろ、無傷でピンピンしている。
今異常があるとすれば、魂だ。
俺の魂は引き裂かれた。
つまり、融合していた神々とのリンクも……。
「うわ!」
「ぎゃぁ!」
と、いいながらアマデウスとレネンは俺の身体から飛び出た。そして、真聖絶光剣・監獄状態に収容されてしまうのだった。
「しまった!アマデウス!レネン!」
俺が手を伸ばして助けようとするが、ベルクーサスによって地面に押し倒されてしまう。
「えへへ……翔琉様……捕まえた♪」
「くそ!離せ!」
「やーだ‼」
ガブッ……と、ベルクーサスは俺の肩に噛みつく。
痛い……という感覚より先に現れたのは、何かに貫かれた感触だった。
その貫かれた傷口にベルクーサスの唾液が触れて、初めて俺は痛いという感覚に襲われた。
「ぁぁぁあああ‼痛い!痛い!痛い!痛い!」
「あははは……翔琉様、そんなに喘がないでよ。興奮しちゃうじゃん……」
「っ‼……くそ、魔法が使えない……」
「そりゃそうでしょうね。真聖絶光剣で分離したのは、あなたの魔法の力……つまり、あの神々と魔法の力を分離させてもらったからな……今、お前が魔法を使うことは不可能なんだよ」
不可能……この言葉を聞くと、毎回思ってしまう。
本当に不可能なんて事が世の中にあるのかと……。
まあ、それは俺の能力の力のお陰で、大抵の不可能は可能にしてきたんだけどな。
「不可能を可能にする能力【勇敢】、発動……」
俺のこの言葉通り、能力によって魔法の力や切り離され、隔離されたアマデウスたちは俺の魂の中へと戻る……はずだった。
本来通り能力が発動されていれば……。
「え?あれ?」
どうしたことだろうか。
能力を使っているのにも関わらず、全くといってなにも起こらない。
いや、本当に能力は発動されているのか?
「無駄だよ、師匠♪あなたのことは前もって、既に調査済みだったから、その厄介な不可能を可能にする能力とやらは、封じさせて貰ったからね♪」
そんな、バカな……。
能力を封じるだなんて、魔法でもあるわけでもあるまいし……あ、そうだった。
この世界って、魔法の世界じゃん。
「翔琉師匠♪さあて、あなたは無防備だね♪」
そう言って、じりじりと詰め寄ってくるベルクーサス。その指先には鋭い爪がある。
剣よりも鋭いかもしれないその爪に引き裂かれたら、魔法も使えず、能力も使えない……そんな今の普通すぎる普通の人間である俺は確実に死ぬだろう。
きっと、心臓でも貫かれた、血をドバドバ流して、白目を向いて、鼻水が垂れて、だらしない顔をして、無様で間抜けな顔で死ぬだろう。
「翔琉師匠♪選ばせてあげるよ♪俺の言いなりになって、新たな兵器として生き延びて世に君臨するか……ここで無様で哀れで悲惨な死を遂げるか……さあ、どっち!?」
ベルクーサスはにこにこと笑っている。
どのみちどの答えによっても、ベルクーサスが圧倒的に有利になるだけだ。
俺にはなんのメリットもない。というか、全てがデメリットだ。
生き延びても、兵器として操られる……死ねばなにもない。
どうする俺ーーー否、どうやって切り抜ける俺。




