Lastステージ22:怨念の力
ベルクーサス……その虎について、俺はまだ詳しくない。
何故ならば、今日出会ったからだ。出会って、告白されて、戦って、弟子になった。
それだけだ。
だから、彼が人間を恨んでいる側の虎だとは知らなかった。
そして、今回の黒幕だということも……。
「いやぁ……計画通り……最終兵器を手に入れることができて、嬉しい限りだぜ……」
高笑いをする、傲慢な虎ーーーベルクーサスは、余裕の笑みだった。
なにせ、最終兵器となったのだから……力はほぼ前とは違うほどに増大している。
「ベルクーサス……何故だ?」
「何故だ?知らねーよボゲェ!てか、いつまで師匠面してんだぁ?お前はもう、殺されることが決定した人間の一人の癖に……」
もう、ベルクーサスは以前の面影が無いほどに、禍々しく黒い存在へと変貌していた。言葉使いまでもが、荒々しい上に、凶暴である。
「ディル……ボル達を連れて、空間の外へ……俺は、ここでやつを食い止める」
「!また、一人でなんでも背負い込もうとして……もう、いい加減に……」
「頼む……ディル。俺はあいつの心を理解してやりたいんだ……だから、戦うんじゃなくて、説得するんだ……頼む……一対一で話させてくれ……」
ディルは、そんな俺の覚悟を決めた顔を見た瞬間に、目付きが変わった。
そして、黙って全員を空間の外へと転移させ、自身も外へと避難するのだった。
「さあて、これで俺とお前以外、誰もいなくなったわけだ……ベルクーサス……何故、こんな事をしたんだ?」
「こんな事をしたんだ?だと?ふざけんじゃねーよ!てめぇら人間のせいで、俺たちが……俺たちがどんな思いで生きてきた事も知らねーで!人間のせいで俺の妹は死んだんだ……奴隷だった頃に……遊びで首を切り落とされて、死んだんだ……それがなんだ?今さらになって、偉そうに偉そうに偉そうに‼」
黒い毛並みに相まって、黒いオーラがベルクーサスの周囲を包み込む……。そして、ベルクーサスは狂気のままに、俺に向かって襲いかかるのだった。
まずは、確実に殺すために頭蓋骨を粉砕しようと、オーラを纏った強烈な打撃を食らわせようとしてくるが、俺はとっさに光属性の盾を展開して、難なくそれを防ぐ。
だが、ベルクーサスのもう攻撃は止まらない。
「オラァァァァァァ!」
と、強烈な打撃が繰り出され、俺の盾は木っ端微塵になる。
だが、光属性の力は直ぐ様、ベルクーサスの邪悪なオーラを取り囲み、浄化しようとする。
怨念……即ち、邪な力であることに変わらない。
強い浄化の力を持つ光属性ならば……。
「甘いな!人間!オェェェェェェェェエエエエエエエエエ‼」
口の中から、吐き出されたその剣によって、光属性は絶ち切られてしまった……。
というか、あの剣ってもしかして。
「真聖絶光剣‼」
光で満ちていた剣は、もはやどす黒い剣へと変化してしまっていた。
それはなにを意味するかーーー人間を恨むベルクーサスの手元に、強力な武器が増えてしまったという話なのだ。
「閃光矛‼」
と、俺が腕に呼び掛けるが、なにも反応がない。
あ、忘れてたーーーそういえばさっき、ボルに吹き飛ばされてたんだっけ?
あ、やべぇ……。




