Lastステージ19:貫くその剣
すさまじい雷撃が、白虎殿に放たれる。
正確には、俺めがけて……。
魔法を使う暇なく、俺は雷撃に撃たれる……。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ‼」
バチバチと、辺りが放電を起こすなか、俺は雷撃を受けて苦しんでいた。
よくこんな状況で死なずにウケ続けられているの不思議だったけど、俺は次第に血まみれになっていったことは確かだった。
滴り落ちる俺の血を見て、鮫のように獰猛に喜ぶボル……。
そんな顔しないでくれよ……。
「あは♪あはははははは♪翔琉かわいい♪そんな風に苦しむ翔琉かわいい♪」
「ボル‼お前、翔琉になんてことを……」
「来るな!」
俺は瀕死ながらも、必死に声を絞り出す。
誰も死なせない、誰にも手は出させないぞ……。
ボルを兵器で終わらせてたまるか……俺はボルに何度も助けて貰ったんだ。
困ったときは、ボルに何度も何度も助けて貰った。
心を支えてくれていたんだ。
俺は恩返しがしたいと思っていた。いつものように、当たり前のように助けてくれたボルに。
そんなボルを絶対に助けるんだ。
「究極神魔法……」
「させねぇって!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
雷撃は激しさを増す……魔法耐性のある俺ですらこのレベルなのだから、他の人物たちでは到底耐えられないだったろう。
俺でよかった……他のみんなが苦しまないのだから。
「ボル‼やめ……て……」
「やめないよ……翔琉……親友だからこそワガママさせてもらうよ。翔琉……このまま雷撃を受け続けるとどうなるか……分かるかい?」
「……神経が……俺の身体を……動かす機能が死ぬんだろ?人間は、電気信号で制御されてるようなものだから……このままだと……確実に……」
「ああ……翔琉は物言わぬ、人間の人形として俺に可愛がられるんだぜ?喜べよ翔琉♪」
「閃光矛【防御……」
「させねーよ!」
ボルの放った雷撃は、俺の腕についていた閃光矛を弾き飛ばした。
くそ……意識が……。
「あはははははは♪翔琉……最強であるはずのお前ですら、最終兵器としての俺には勝てないようだな」
ボルはゆっくりと俺の元へと近づき……そして、雷撃を喰らっている俺をひょいと持ち上げる。
ボル自身には、雷撃は当たらない……俺が苦しむ様を、正に間近で持ち上げて見ているのだ。
「翔琉……翔琉……翔琉……お前の苦しむ姿が、すごく……」
「……お前誰だ?」
と、俺はボルに言う。
ボルは高笑いをしているが、俺の髪を引っ張りあげ、顔を近づけて言う。
「俺は最終兵器Blood Lifeだ!1度言ったことは覚えとけ、ボゲェ」
「最終兵器Blood Lifeねぇ……んじゃあ、Blood Life……これだけは言わせてもらうよ……」
「ほう……この、状況でまだなにか言えるとは……さすがは、翔琉だな……いいよ、言ってごらんよ」
「……真聖絶光剣」
ザクッ……。
そう音が鳴ると、真聖絶光剣はボルを貫いたのだった。
その瞬間、ボルは俺を投げ落とし、激しい雷撃は止み終える……そして、ボルは悲鳴にならない叫び声を上げる。
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼」
次の瞬間、黒い煙がボルの身体から抜け落ちる。
そして、真聖絶光剣は、監獄状態へと移行して、黒い煙を捕らえ、叫び声が終わったボルは、その場に倒れ落ちるのだった。
ギリギリのところで俺はボルを、抱き抱える形で、地面への直接な強打を回避させた。
ボルはすやすやと眠っている……まるで、悪夢から解放されたような安らかな寝顔だ。
「翔琉くん‼治療終わったわよ‼」
そう言ってミコトは、無事に生き返った二人を連れて、俺の元へとやって来た。
監獄状態の真聖絶光剣は未だに、黒い煙を捕らえ、空中をふわふわと漂っていた。
「ふぅ……首を切り落とされて生きているのは、これで何度目やら……」
「仕方ないだろアスラ……それが、俺たちの役目なんだから……」
そう、談笑しようとした二人の顔を俺はおもいっきり叩いた。
「冗談じゃないね……そんな役目に狼牙を巻き込むな!」
そう一喝すると、辺りはシーンと静かになってしまうのだったーーー。




