Lastステージ16:最終兵器【Blood Life】
"あるところに、一組のカップルがいました。
その出会いは偶然だったのか……必然だったのか……片方は虎族の英雄、片方は虎族の王族の正統後継者……つまりはお姫様でした。
二人は熱烈までな恋仲になり、やがて結ばれました。
そして、お姫様のお腹には新しい命が宿りました。
二人は、大喜びしました。
しかしながら、その命は生まれ落ちることはありませんでした。
お姫様のお腹の赤ちゃんは、生き絶えてしまったのです。
更に、お姫様は子供を産むことが出来なくなる身体になってしまいました……。
悲鳴に似た悲しみのなかで、お姫様はある禁忌を犯そうとしました。
それは、虎族の古くからの儀式による【血之誓】……生命を作り出すという、神の領域を侵す禁忌を。
だが、虎族の一族にはそんな魔法が存在していた。
しかしながら、それは絶対に同種族……つまりは、虎族同士での使用することを禁止していた。
それがなんなのか……なぜ、それは禁止されていたのか。このとき、この英雄も姫様も知りはしなかった。
長年の歴史というものが、その禁止されている理由を忘れさせてしまったのだろう。
だからこそ、彼らはその禁忌を犯してしまう。
普通ならば強力な雷の魔法を必要とするこの魔法ーーーだが、姫様は、雷の力最高峰の一族の王族でした。
つまりは、この魔法は成功するのでした。
「やった……私の子供が……私の子供が……」
そう言って姫様は生まれたばかりの子供を抱き抱えようとしました。しかしながら、それは叶いませんでした。
何故ならば、姫様の腕は子供に噛み千切られていたからです。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
と、叫んだ姫様の声はやがて途絶えました。
生まれたばかりの子供は、自身の母親と呼ぶべき女の首もとを噛み千切っていたからでしょう。
そして、姫様は死に絶えました。
生まれたばかりの子供には、父親が残っていました。
子供は、父親を殺すことに決めました。
理由?
単純に、殺したかったからです。
肉親を肉塊に変えて、それをゴミみたいに扱いたいと、残忍な性格の子供は思ったのでした。
子供は、油断していた父親を殺すことに成功しました。
父親の背後から、首を切り落としました。
溢れでてくる血の噴水に心踊らせながら、子供は次第に身体が成長していきました。
何故、虎族同士で血之誓をしてはいけないのか……それは、生まれ落ちる子供が残忍で残酷で残虐で無邪気な、邪悪な虎が生まれてしまうからです。
虎族の祖先である白虎……彼には、双虎の兄がいました。
彼は人間を恨み、人間を憎み、人間を疎みながら、人間に殺されました。
その怨念が、虎族の血には流れています。
怨念は1つだけならば、問題ありませんが、2つ以上集まると、次第に強力な力を発揮します。
故に、虎族と虎族での血之誓は厳禁なのだ。
怨念が生み出す、怨念の子供……。
血に飢えた、血によって生み出される虎族の魔法生物にして、魔法兵器……。
それが、Blood Life。
それが、ボルの正体……。
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