Lastステージ15:白虎殿⑥
周りは圧倒的な力を目にしていた。
コロシアムでの力の差……そして、ここにいる全ての者の力の効かない強者。
「……さて、アスラさん。残念ながら、ここまでのようだね?大人しく狼牙を返して貰えるかな?」
「……ならぬ。それは出来ぬ……【あれ】が活動を停止させぬ限り……天野狼牙くんの力が必要なのだ」
この時、俺はもう少し【あれ】というのに興味を持つべきだったのかもしれない。
【あれ】の正体……そして、アスラの目的。
それらを繋げて考えれば、これらを紡ぎわあせてれば……。
今こうして、彼女は死なずにすんだだろう……。
「がはっ……」
そう言って、真っ白で美しい虎アスラは、俺の目の前で突然として吐血した。
正確には、ある人物にお腹を貫かれた。
槍のような爪……それが、深々と彼女のお腹を突き抜けていた。
「まったく……このババアは、相変わらずワケわかんないこと言ってるからにして……死ねよ……」
「お前を倒すまでは、死ねぬよ……虎族最大最悪の魔法兵器め……」
「いやだな……俺にはちゃんと名前があるんだから、そう読んでよ……血之誓の文字から名付けてくれた名を……【B】l【O】od 【L】ifeで、ボルってさ……あはっ♪」
そう言ってボルは、アスラの首をはねた。
ずばっと……なんのためらいもなく……なんの躊躇もなく……。
「あはっ♪あはっ♪あはっ♪血の雨だ♪」
ボルはアスラの首から噴水のように流れ落ちる血を浴びながら、喜んでいた。
その光景は、俺に圧倒的なトラウマを植え付けた。
親友が、母親の首をはねて、首から飛び出たその血を浴びながら喜んでいた……。
誰もが、何も話すことができないぐらい……それは、圧倒的な光景だった。
「ア、アスラぁぁぁぁぁ‼」
インドラの悲痛な叫びが、こだましたかと思えば、インドラの身体の骨はボキボキッと折られていた。
一瞬のことで、彼も気がつかなかったが、すぐに痛みは襲ってきた。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
「あはっ♪ざまあみろ、殺虎鬼め♪」
にこにこと、父親と呼ぶべき存在をなぶるボルを、俺は止めにかかる。
後ろから、ぎゅっと……彼の大きな身体に抱きつく。
そして、腕や身体をどうにか拘束できないかと、頑張っている。
「ボル、止めて……」
「翔琉♪止めないでよ♪今すごく久々に封印されてた力が、外れて数十年ぶりにお外に出られてるんだからさ……♪」
「……ボル?数十年ぶりに?何をいって……」
「うるさい♪」
そう言って、ボルは俺を蹴飛ばした。
押さえつけていた身体をうまく捻って、俺の体勢を崩して、空中に投げ出されたところを、タイミングよく蹴り飛ばしたんだ。
だが、寸前のところで【閃光矛】が発動して、自動的に防御してくれたが……。
強い衝撃が、俺を広間の支柱へとぶつけるのだった。
「痛ぅ……ボル……」
「翔琉ぅ♪ホームラン♪でも、やっぱり翔琉は可愛いね♪だから、ジンライ共々生かしておいてあげる♪でも、その他は要らないから消えて♪」
パチンっと、ボルが指を鳴らすと俺とジンライ、そして俺の知人以外の足元には闇の空間が現れて、彼らをあっという間に飲み込んでしまった。
「さあてと……改めまして、自己紹介するね♪俺の名前はボル……いや、Blood Lifeと呼ばれるべきなのかな?ジンライと同じく、古の虎族の儀式によって生み出された、作られた命ーーーそれと、同時に虎族の最大にして最悪の兵器なんだぜ♪よろしく☆」




