Lastステージ10:白虎殿①
白虎殿内部ーーーそれは、外見にも負けない程の豪華絢爛な造りとなっている。
そして、内部にいるものたちも、それに負けずとも劣らぬほどのVIP揃いなのは言うまでもないと思う。
というか、VIP以外ーーー招待されたもの以外の侵入を許さぬ場所なのだがな。
「さてと……えっと、インドラはどこにいるんだか……」
とまあ、探す必要もないだろう。
この会場の主催者がそもそもの今回の目的の人物ーーーインドラなのだから。
自ずと、全員がいる場所に現れるはずだ。
天野狼牙が封じられたカードを持って……。
「狼牙、待ってろよーーー」
俺たちは中へと進んでいくーーーそして、大広間の前へとたどり着くと、大広間の入り口の前に立っていたガードマンが、親切に扉を開けてくれた。
そして何故か名刺のようなものをくれたんだけどーーー。
なになにーーー連絡先と名前……。
これは、後で連絡してくれってことなのか?
「くそぉ!こんなもの!」
と、ライは俺から名刺を奪い取って、ビリビリに破く。
いやまあ、そこまでしなくてもーーー。
「ほら、行くぞ‼か……イミナ」
ふんふんと鼻息を荒くして、ライは俺の手を掴んで、大広間の中へと進むのだった。
中では華やかなパーティーが催されていた。
豪華絢爛な音楽を奏でるオーケストラ、そしてその近くで歌を歌う歌手。
食事や飲み物に至るまで、なにもかもが豪華だった。
そして、来ていたゲストたちもーーー。
虎族貴族から、龍族の重臣、精霊族王家、猫族の伝説の戦士、世界魔法連合と連携している商業関係の社長、有名な富豪から、有名な戦士まで、選り取りみどりだ。
その中には、知った顔が何人かいた。
例えば、鳥族長のジャクさん。
例えば、精霊族王家親衛隊のみなさん。
例えば、世界最高峰の治療魔導士ミコト。
例えば、風城の主トルネ……。
トルネ!?
「おい、ディル……トルネがいるよ」
と、俺はこっそりとディルに、耳打ちする。
ディルは、イラッとした顔でトルネを睨んでいた。
というのも、トルネは最近連合の会議にでらないほどの用事があると言って、よく休みがちだったのだ。
そしてなにより、狼牙が誘拐されていた時に、ディルが大魔導士以上の全員にその情報を通達した際に、唯一その連絡がつかなかった人物でもある。
故にディルは、非常に怒っている。
「あいつ……世界を復興させる会議をサボってると思ったら、こんなとこで遊んでやがったのかよ……まじぶっ殺す……」
ディルさんから、ぶっ殺すをいただきました。
って、こりゃあ、まずい。
「ディル、今暴れたら狼牙が救えなくなるーーーだから、今はこらえて」
「嫌よ……あいつの皮膚を全部剥がしてやるんだから」
「怖いこと言わないで……ええい、こうなったら‼」
と、俺はディルの後ろからガシッと抱きついた。
「‼ちょ!ちょ!何してるのよ‼」
「ディルが動かないように、暴れないように抑えてるんだよ」
「……もう、仕方ないな……でも、この拘束外れたら直ぐに向かっちゃうからね」
「分かったよーーー」
このまま抱き締めてればいいんだろ?
それで、暴走しないんならしてやるよ。
でもなんだろ?
ディルの心臓の音が直に聞こえてくるような感じだな。
ディルって、心臓の鼓動早いんだな。
ものすごく、音が響くぜ。
「ディル、動くなーーー」
「ひゃん……」
ん?
なんだ、この卑猥な声は。
「……か……イミナ。耳元で話さないで……息が当たって、こちょばしいの……」
「あ、あ……ごめ……」
「ひゃん……ん……」
なんだこのシチュエーション‼
中学生には刺激が強すぎるほどにエロい。
「俺もやるやる」
と、ライが俺の後ろからディルと俺をガシッと掴んだ。
そして、俺の耳元ではライの舌舐めずりの音が聞こえるんだがーーー。
「翔琉……このまま茂みに……」
と、言いかけたところで、ちょうどオーケストラの音が終わり、辺りが暗くなった。
これからなにか始まるようだ。
司会とおぼしき人物がいる場所と、幕の降りたステージにだけ照明が当たっている。
「レディース‼エーンドゥ、ジェントルメェーン」
そんなキレッキレの司会の挨拶が大広間に響く。
「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます‼それでは、主催者【インドラ】様のご登場です!」
そう司会者が言うと、オーケストラの豪華なドラミングと共に、幕が上がる。
そして、そこに立っているのは、虎族の王ーーーインドラだった。
白い虎模様のかっこいい服と、マントを羽織る、キリッとした虎だった。
「あれがーーーインドラ……」
ジンライから聞いていた老獪なイメージとは全く異なっていた。
全くジンライときたら、説明ベタなんだから……ん?
「どうした?ジンライ……それに、ライとボルも……」
「……翔琉、気がつかねぇか?」
「え?」
「この魔力の質……」
「??……‼」
俺は彼らに言われて気がつく。
確かに、あれはインドラなのだろう。
だけど、あの肉体からは、2種類の魔力を感じる。
1種類目は、恐らくインドラのもの。
もう1種類のはーーー。
「狼牙……」
どうやら、あの肉体ーーーインドラと狼牙が融合したようだ。
俺は前に、似たような現象があったことを覚えている。
かつて、狼牙がパラノイアと呼ばれていたときーーー取り込んだ天野蘚琉と、同化していたあの状態。
恐らく能力である【捕食】の力が使われているのだ。
狼牙救出作戦は、これにより失敗だ。
狼牙とインドラを切り離すーーーそれが、次なる目的だ。




