1stステージ2:魔法との出会い
RPG好きです。
ポケモンだったら、ストーリークリアだけなら、購入日で毎回終わらせてます。
ただし……と彼女の話は続いた。
「塔の内部にある、複雑な仕掛けの攻略と強力な魔獣を倒さなきゃいけないけどね。階層は上がるたびに魔獣の強さが変わるって言うシステムなんだよ」
「魔獣……そんな……そんなやつ倒せないぞ……」
愕然としていた。
魔獣を倒すとか、仕掛けを攻略するとか、まるでRPGみたいだなーーーだけどまあ、こういう展開は若干予想できてはいた。
こんな異世界に来て、おいそれと簡単に帰れるとは思っていなかったけど、しかし、実際にそういわれるときついなーーー。
仕掛けはともかく、魔獣って……どうすれば倒せるんだ?
「現代兵器で言うところの、拳銃とかロケットランチャーとか使って倒すのかな?」
すると、ディルはふふっと笑って。
「いやいや、そんな物に頼らなくても、世界で生き抜くには、魔法を覚えればいいんだよ」
「確かにそれは簡単すぎる答えなのかもしれないが―――ん?魔法ってもしかして……あの非科学的な……あの魔法ですか?いやいやまさかそんなわけが……‼」
と喋っている最中、ディルは手から炎を出したのだ。紛れもなく、熱くて、光を放つ、正真正銘の炎を――――。
ディルから炎が出た。
この言い方では、いささか語弊が生まれそうではあるが、それが現実的な事実である。
より正確に言うのならば、ディルの手のひらから炎が出た。
「これが基礎的な魔法である、炎の魔法:陰だよ」
なるほど‼
それが魔法か♪
しかも基本の魔法らしいな♪
ならさっそく、俺も魔法を―――――。
「いきなり、できるか‼‼‼」
ついノリツッコミになってしまった。
だが、この言葉に尽きるだろう。
いきなり基礎魔法だよって見せられても、そんな天才じゃあるまいし、できるわけがないって―――――なんて普段は絶対言わないと思うんだけど、どうもこの世界に来てから、ネガティブ思考になってしまっているな。
いけないいけない……。
魔法を覚えないと元の世界に変えるための場所【オールドア】にはたどり着けない事だし。
数々の仕掛けや魔獣を攻略するためには、絶対に魔法を覚える必要があるわけだ。
仕方がないーーーこの世界では俺のこれまで学んだ知識は役に立たなさそうだし、俺の世界での一般常識も通じなさそうだな……。
この世界で生き延びるには、この世界の業に従うべきだなーーーと思い俺は潔くディルに魔法を教わることにした。
そして、ディルに頭を下げ。
「やり方とコツを教えてください。」
と言う。
そういうとディルは
「私先生になった気分だよ」と言って、すっかり気分を良くして、丁寧に教えてくれた。
何でも、魔法を使うには色々な種類・方法があるらしい―――。
1つ目がさっきやったような魔法、この魔法をこの世界では”自然魔法”というらしい。
一般的に普及しているのがこの魔法で、外部から力をもらって発動するらしい。
2つ目が一般的に道具を用いて発動させる魔法で”道具魔法”と言うらしい。
特定の場所でしか使用できないため、応用は中々聞かないらしい。
3つ目が太古の昔に封印された”太古魔法”。
習得できる者は少ないため、魔法使いの中でも数人しか使えないらしい。
4つ目が戦争に用いられる事が多い”消滅魔法”。対象物の破壊に特化した魔法らしい。
この魔法を用いればどんなものでも破壊できるらしいが命を削る魔法らしい。
5つ目は神話の魔法で”神魔法”。神と同等の能力を得る魔法。
この世界では、神話のみで語り継がれ、過去誰も使えなかったとされている。
「ふう、こんなものかな……」
と説明が終わった。
魔法にも、いくつか種類があるのか。
しかし、5つ目の神魔法って、名前に”神”ってついているから、すさまじい威力を持った魔法なんだな――――と思った。
いや、なんでも神ってつけたら凄そうだと思ってしまわないだろうか?
神ゲー……神BGM……神センスetc。
すっかり先生気分のディルは自信満々な顔をして、魔法を発動させるために必要なコツを更に説明し始めた。
「――――以上が、魔法を使う際のコツで、エネルギーを一点に集めるイメージを持つことが大事だよ。ということで……」
と続けて言い、俺の方を向く。
そして、俺の額に人差し指を当てながら
「今抑えているところに、エネルギーを集中させるイメージで、やってみて」
と言い、ディルは俺に期待の目を向けている。
何を期待しているのだろう?
俺は初心者だよ?
しかも、違う世界からやってきた異世界の人間なんだし、何よりさっきまで魔法の存在を疑っていた人物だぜ。
こんな簡単にいくものか―――――と、思いかけていた。
でも、せっかく教えてくれているのだから、期待に応えるように、頑張らなきゃな。
目の前の女の子を喜ばせることは、男としての本分であるしーーー。
俺は目を閉じて精神を集中する……エネルギーを……一点に……集める……。
すると、全身が光に包まれ、背に美しい羽根が生えた。
炎をイメージしていたら、いつの間にか不死鳥を連想してしまった。
不死鳥……死の間際に、自らを火へ投じて、再び灰の中より新たな生命として誕生する空想上の動物。
この世界にはいるのかな?
炎をイメージしていたけど、まさか不死鳥に連想が行ってしまうとは――――我ながら想像力豊かだなと思ってしまった。
でも、これって魔法としてどうなのだろうか?
全身が、金色の光に包まれて、背中から美しい羽根が生えてしまっている。
本当に鳥みたい――――と思って、ディルの方を振り返ってみると、ディルは唖然としながら立ち尽くしていた。
口をポカーンと開けて、目は見ひらき、明らかに動揺している感じに見えたのであった。
「どうしたんだディル。この魔法はやっぱり失敗だよな?ディルが最初にやっていた、炎の魔法じゃなくて、全く異なるもんな。これじゃあ、鳥だもんね、ははっ―――――」
と笑いながら済まそうとしている俺なのだが、ディルはあまりの衝撃で言葉を発することが出来ず、ただただ首を横に振っている。
ようやく声を出せたとしても
「これは……いや、そんなはずは……でも、いややっぱり……」
とぶつぶつ言って、明らかに動揺している様子であった。
そして、ようやくハッと我に返り、徐々に下の方に向いていた顔をディルはがばっとあげ
「この魔法は……炎の魔法:陰じゃない……!」
そうディルは空に響く程の大声で言う。
あまりにも突然の事であったので、俺は驚いてしまった。
俺だけではなく、近くにいた小鳥たちや、蝶ですらディルの声に驚いて飛び去ってしまったほどだ。
呼吸が乱れていて、明らかに焦っている様子であった。
「じゃあ、この魔法はなんなんだ?」
と俺はディルに不思議そうな顔をして聞く。
すると、ディルは呼吸を荒くしながら噛みそうになるくらいの早口で言う。
「おそらく……文献にあった、”光を隷属させる魔法”で神魔法:光天神だ……。この魔法の特徴として、光属性の魔法すべてが使えるようになるらしい……いや、それにしても……いきなり神魔法使えるとか君はいったい何者なんだ?―――――」