1stステージ27:異名
夕暮れ時になった。
あのチェスの後は、砂遊びをしていた。
始めにやった、某倒しではなく、砂の城を作っていた。
イメージ的に、ディズニーランドのシンデレラ城をイメージしながら作っていた。
砂でポールを作って、城の周りに配置しといて、立ち入り禁止の雰囲気をついでに作ってみた。
ディルが夕食だという事で、彼女が呼びに来るまで、熱中して行っていた。
その結果、城どころか、ディズニーランド自体を砂の模型として作ってしまった。
我ながら恐るべきスキルだ――――
「ほらほら、早くしないと、ご飯冷めちゃうわよ」
と言ったところで、俺はライとボルを連れて、別荘内へと入っていく。
砂のディズニーランド……風とか、波とかで崩れないよな?
別荘に入るなりいきなり御馳走が目の前に見えた。
見た目で言えば、満漢全席が目の前に広がっているのに等しい光景である。
美しい中に、気品あふれる――――そんな、料理達が俺を迎えてくれた。
既に、全員が席に座っている状態であった。
俺やライ達は、急いで手を洗いに台所に行き、砂を洗い流した。
そして、席に座るのと同時に、みんな食べ始めた。
いただきます、と言う命に感謝の念を送る言葉を送って――――
もぐもぐもぐ――――
「すげえな。 これヒョウが作ったのか?」
「はいそうですわ。 お口に合いましたか?」
「はい、すごく美味しいですよ♪」
そう俺が言うと、ヒョウは頬を赤めて、嬉しそうにしている。
まあ、料理が褒められるとうれしいだろうな。
もぐもぐもぐ――――
「ところで、翔琉―――」
と巨大な肉を頬張りながら、ディルは言った。
「なんだ?」
俺はいったん、食べるのを止めてディルの方を向く。
ディルは、食べるのを止めないで、そのまま話を続ける。
「あのひゃ―――ルーンと、戦った時に―――もぐもぐ―――神魔法、見られちゃったの?」
「あー、その事。 うん? 見てないんじゃないかな―――あははは」
「でも、神魔法使ったわよね?――――もぐもぐ」
「まあ、使ったけど―――」
「―――城の内部で使ったなら、問題ありませんわよ、ディル」
とヒョウは言った。
食べかけていた、杏仁豆腐のようなものをテーブルに置いて、彼女は言った。
「あの城は、外界へと通じる通信系の魔法は、一切遮断できる特殊な氷で出来ているんだよ。 でも、一度通信系の魔法で見られたんなら、30分以上たたないと、外に出ちゃダメなんだけどね。 じゃないと、魔法自体を外に連れ出すのと同じだから、通信は遮断できない事になってるんだよね」
ギクッ
「うううううん。 そそそそそうだよね。 だだだだ大丈夫だよね」
動揺していた。
声が震えた。
「おやおや、翔琉どうしたのかな? 何をそんなに焦っているのかな? まさか―――」
ディルの目が怖い。
ディルの目が怖い。
ディルの目が怖い。
「――――まさか、外に出たんじゃないでしょうね?」
終わった―――。
「はい―――出ました」
ガタッと椅子の引きずる音が聞こえて、ビクッとなってしまった。
「ふーん……まあ、仕方ないか。 ピンチだったんでしょ?」
温情を受けられたようである。
助かった―――
「じゃあ、相手にはバレてるって事にしておきましょうか、チッ」
露骨に舌打ちするの止めてよ、ディル―――
この後の食事は、終始俺はビクビクしながら食べていた。
そのためか、味がよくわからなくなってしまった。
恐怖が味さえも、支配してしまったのだ――――
食事が終わった。
味は確かにおいしかった(途中までは)。
俺の残した分はライとボルがきれいに食べてくれた。
少しヒョウには悪いことをしてしまった――――ごめんね。
俺はソファーに座り、近くにいたディル恐る恐るとあることを聞いた。
「ディル――――あのさ、魔法の属性について教えてほしいことがあるんだが……」
「――――ふう、もう怒ってないから大丈夫よ。 そんなにびくびくしなくても」
「う、うん。 あのさ、光属性の攻撃魔法を使えるのってさ、そんなに珍しいことなの?」
「あー、それね。 そうね――――それは、説明してなかったし、あなたの”異名”も教えてあげなきゃね」
新しい単語が出てきたぞ。
「異名? なんだそれ?」
「うーんと、そうね――――まずは、あなたの使える魔法が、どれだけ珍しいのかを説明するしかないわね――――」
ちょっと、長くなるわよ―――と説明を始めた。
「光属性を扱えるものは数多くいるが、それは防御系魔法における点でおいて――――と言うことなんだよね。 光属性の回復系魔法となると、一気に使えるものの人数は減り、攻撃系魔法になると、ごく少数の人数になっちゃうんだよね。 さらに言えば、光属性を扱えるという事は、全ての属性を扱える器を持っている、という事なのよ。 光属性は、全属性の中で一番扱いにくい属性なのだから、まあ当然と言えば当然なんだけどね。 そして、魔導士たちにはそれぞれ、ランクに応じた”異名”を与えられるのよ、まあ称号と言っても過言ではないのだけどね。 例えば、1つの属性しか扱えないものは、一点魔導士と呼ばれるし、複数の属性を扱えるものだと、合成魔導士、そして全ての属性を扱える魔導士を、帝王魔導士と呼ばれるのよ。 私を含めた3人の太古の魔導士や、7人の大魔導士、そして暗黒魔法教団の暗黒賢者以上の魔導士だと、みんなこの帝王魔導士にあたるわね。 そして―――」
そして?
「―――そして、翔琉のように、神魔法を扱えるものは、帝王魔導士の上の、神域魔導士と呼ばれる”異名”を与えられるの」
「神域魔導士―――それが、俺の異名か……」
カッコいいな。
顔が少しにやけてしまいそうだ。
というか、にやけている。
「翔琉、笑い顔気持ち悪いわよ。 大丈夫?」
失礼な事をいう女だな!
カッコいい名前に憧れるいたいけな少年の顔を気持ち悪いだなんて―――まだ、怒ってんのかな?ディル。




