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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第3章‐進化するべき時‐
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1stステージ24:残虐な女王

 ルーンはじっと睨んでいる。

 赤々しく輝く瞳を、こちらに見せながら――――

 俺は動けなかった。

 何か得体のしれないものに、見られている感覚だった。

 まるで蛇に睨まれている蛙のように――――俺はピクリとも動けなかった。


「翔琉!」


 足にしがみついていたボルは、持てる力の限り、俺の足をゆすった。

 そのおかげで俺は我に返り、防御の魔法を展開した。

 と言うか、俺は壁を作りたかった。

 あの、盾の向こう側で、いまだにじっと睨んでいる彼女から―――少しでも、遠く離れたかった。

 それを見たルーンは、にやりと笑い


「やはり、あの子は、光属性の魔法を―――これは、いい手土産が出来そうだ」


 と言った。

 その隙をついて、ライは一気に畳みかけるように攻撃をした。


「雷の魔法:雷即撃らいこう!」


 ライからは雷の弾丸が、ルーンに向かう。

 しかし、ルーンは落ち着いていた。


「この程度――――あたしの相手にもならないわね」


 そういって、懐から巨大な扇子をだし攻撃を反射させるのだ。

 その攻撃が、ライとホルブにあたりかけた瞬間、俺が張った盾が2人を覆った。

 どうにか間に合った。


「よかった……間に合って」

「おう、翔琉助かったぜ、後でお礼に肉球モミモミさせてやるよ」

「いや、ボルの触るからいいや―――」

「ええ! そんな触ってくださいよ、翔琉さん。 いい触り心地してますぜ」

「何故さん付け? そして、なんでそんなに必死なんだよ! まあ、いいや。 んじゃあ、後でな」


 コホン、とホルブが咳払いをする。

 そうだそうだ、まだ戦闘中だった。


「あの扇子は反鏡之扇うつしおうぎじゃな」

「反鏡之扇?なんだ?それは」

「反鏡之扇っていうのは、かつて神が世界を生成した時に創り出した20個の宝具の1つで、闇と光属性以外をすべて反射してしまう魔法道具なのじゃ」

「つまり、あの道具に対抗するには、翔琉かディルかホルブしか攻撃できないな――まあ、ボルも魔法を使えれば、別なんだろうけど」


 とライがぼそりと言った。


「しかし、他のみんなは光属性か闇属性の魔法は使えないのか? 大魔導士なんだし、その位できてもよさそうな気がするぞ」

「儂らが使える攻撃魔法は、最も得意とする属性に限られている。 それ以外は、所詮は初級か中級レベルの属性の魔法しかできんのじゃよ。 何より、あの扇子を打ち破るには、上級以上の魔法攻撃が必要じゃ。 現状、あの扇子に通じる攻撃系の魔法の使い手は、闇の大魔導士の儂と、そこの元暗黒賢者ボル、光属性の時魔法と闇属性の空間魔法を操るディル――――そして、翔琉の4人だけなのじゃ」

「そうか―――じゃあ、俺の魔法で一気に―――」

「それはやめておいた方がいい」


 そういったのは、ボルだった。


「あの女の前で、光属性の魔法は使うな!」

「何を言っているんだ! 使わなきゃ勝てないじゃないか!」


 するとボルは声を小さくし、俺に言う。


「光属性の魔法と、神魔法は使うなと言う意味だ」

「それってどういうこと?」

「ルーンは、見た情報を教団に送る魔法を持っていて、さっき目が光っていたのが発動したということだ。 今使うと、残りの暗黒賢者にはもちろん、教団にばれてしまう。 その結果、教団は翔琉を手に入れようと躍起になってお前を狙うぞ! 伝説の神魔法の力欲しさに、俺を利用した時と同じようにな――――それに教団の教祖は、現在強い力を求めている。 そのため、役に立てそうな人員は奪ってでも補給していく。 教祖の強力な洗脳魔法は一瞬で操り人形にしてしまう。 だからこそ、翔琉が教団の手に渡るということは――――」

「翔琉の持つ魔法が、奴らの手に渡るのと同意――――」

「その通りだ。 あと、奴らは光属性の魔導士を求めている。 貴重な光属性の魔導士は、戦力になるからな――――だから、光属性の攻撃魔法は使うな!翔琉!」

「―――そうじゃな、ここは儂と、そこの元暗黒賢者でやろうかのう」

「ホルブ――――という事は、ボルの?」

「ああ……封印を解く」


 と言って、ボルにホルブは触れると、ボルは幼児の体系から元のライと同様の姿へと戻った。


「これは―――」

「お主の封印を解いたのじゃ。 これでお主は戦うことができるじゃろう」

「いいのか?」

「何がじゃ?」

「俺は暗黒賢者で、あんたたちの敵だったんだぞ?」

「じゃが、今やおぬしは教団から用済みとされ、殺されかけている――――つまりは、おぬしにとって奴らは敵じゃろ?敵の敵は味方じゃ」

「……」

「それにのう……お主は以前我を洗脳しようとしたときのおぬしではもはやなかろう? おぬしの心は今満たされている――――そして、翔琉の友達になったんじゃろ?」

「俺は――――翔琉の友達だ……」

「今、翔琉は魔法を使えない状態じゃ。 お主は友達が困っている状況で、助けないほど軽薄な男では無かろう?今こそ、お主は友を守る時ではないのか? お主を信じてくれる友を――――」


 静かに目を開け、ボルは言った。

 自身の決意を――――そして、思いを。


「俺は翔琉と友達になった―――翔琉に助けられた―――ならば今、俺がすることは、その翔琉に対して俺ができることをして、助けてやる―――それが友達、だもんな!」

「その粋じゃ! じゃあ、行くぞ!」

「おう!」


 今、ここにかつて敵同士だった男たちの共闘が始まりを迎えたのだった―――――



「は!闇属性の魔法が使えるからって、あたしに勝てると思わないでよね」


 そういってルーンは周囲の氷を操り、ホルブとボルに攻撃してきた。

 おそらく、氷の城の外装より、氷を操ってここまでの氷を操っているのだろう。

 氷の槍が2人を襲い掛かるがボルが魔法を使い、難なくかわす。


「やりおるのう、ボル。」

「伊達に暗黒賢者になったわけじゃないしな」

「そんな程度で、かわした程度になるなんて甘いわね!」


 とルーンの攻撃はさらに激しくなる。

 氷の槍と闇の波動、そして反鏡之扇からの斬撃が2人に襲い掛かる。


「やれやれ、我にとっては止まって見えるぞ―――」


 ホルブは黒い液体をだし、全ての攻撃を消した。


「ほう―――それが噂に聞く、闇の大魔導士ホルブの使う闇属性の魔法、吸収魔法ドレインマジックか」

「よく知っておるのう。 じゃったら、もっと警戒せんといかんぞ?――――」

「しまった!」


 ルーンの足に黒い液体が付着していた。

 次の瞬間、その液体は爆発した。


「吸収魔法は、相手の吸収したエネルギーを変換して別のものに変えるものじゃ。 今のは、先ほどの攻撃の分を爆発に変えたということじゃのう――――」


 爆発の煙からルーンが飛び出てきた、服は破けて、かなりの深手をおったようだった。


「はあ……はあ……とっさに、付着部分を破り捨てて助かったけど……衝撃はそのまま食らってしまったわ……はあ……はあ……」

「しぶといのう、流石は暗黒賢者じゃのう」

「あははは――――なめられたものね……でもね、あんたたち2人はもはや相手じゃないわ」

「戯言じゃのう――――今楽にしてやる……!」

「なんだこれは!」


 ホルブとボルは動きが止まっている。

 しかも空中で。

 そんな事が可能なのか?


「あんたたち2人には動きを封じ込める魔法を放っておいたの。 さっきの爆発の時にね――――」


 2人は動けない、あがくが全然動けないようだ。


「さっきの分を返すわね!」


 そういってルーンは大量の斬撃を繰り出す。


「我の魔法を忘れたのか?こんなもの……!!」


 ホルブの魔法は発動しなかった。

 そして、斬撃は容赦なく2人を攻撃する。

 2人からは、血が床に向かって、ぽたぽたと流れ落ちる。

 苦痛にゆがんだ2人の顔を見て、残虐な女王は笑みを浮かべていた――――


「待ってろ2人共! 今回復させる!」


 といい、回復魔法を発動させるのだが――――全くと言っていいほど、何も起きなかった。

 何故だ?


「そこの光属性の魔導士―――翔琉って言ったわね。 そんな事をしても無駄よ。 彼らは現在、身体を封印されている――――つまり、あなたの魔法は彼ら自身の傷を癒すという事は、現在できないのよ。 残念ね。 せっかく、頑張って発動しても、無意味だなんて」

「そんな――――」


 再び、ルーンの攻撃が始まる。

 さっきより激しく。

 そして鋭く―――

 俺は光の盾を球状に変換させて2人を覆う。

 だが、膜が薄すぎるようで、巨大な斬撃は貫通してしまう。


「くそお! 負けるか!」


 俺は全神経を集中させ、球状を2重にする。

 これで、なんとかなるはず・・


「翔琉くん―――あなた、光属性の魔導士のようね、やっぱり。 本当は死体にでも、してやろうかと思っていたんだけど――――やっぱり、あたしのいう事を何でも聞くペットにでもしてあげようかしら、ふふふっ」


 そういって、ルーンは怪しい笑みを浮かべ、ゆっくり近づいてくる。


「翔琉逃げろ!」

「そうじゃ!逃げるのじゃ! ライ! 翔琉を連れて逃げるのじゃ!」


 2人は大声で叫ぶ。

 それが不快に思ったのかルーンは2人の方を向く。

 そして


「うるさいわね――――もう、死んでいいわよ」


 そういって指を鳴らすと、2人が冷気によって徐々に氷漬けにされていく。


「ぐああああ!!!!」

「うう……!!」


 2人は悲鳴を上げる。

 否、苦痛を叫ぶ。


「やめろ!」


 と俺はルーンに向かって言う。

 ルーンは笑っている。

 2人の悲鳴と苦しむ姿を見て―――

 ライは俺を連れて逃げようとした。

 しかし、俺は動かなかった。

 逃げなかった。

 2人の悲鳴を聞いた、その瞬間、俺の頭は真っ白になった――――

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