表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第3章‐進化するべき時‐
24/349

1stステージ23:氷の女王

 海辺の別荘を出発して、俺たちは氷の城に向かう。

 道中は険しい道のりであった―――と言うのが、本来正しい感想なのだろうが、残念ながら(?)俺たちはさほど苦労をしていなかった。

 それはディルの空間移動魔法によって、一瞬のうちに到着したからである。

 例えるならば、ビルの最上階まで本来は階段で上らないと行けないとしたときに、エレベーターを使って楽をした、と言った感じであろうか。

 氷の城――――その名の通り、氷で出来た居城だった。

 ヨーロッパにありそうな外観―――そうだな、例えるならば、ドイツにあるノイシュヴァンシュタイン城みたいな外見と言えば分かるだろうか?

 かの有名な、ネズミが支配する夢の国の、とある城のモデルになった城である。

 そんな幻想的であり、美しい城であると言われているものと、ほぼ同様な形をしている。

 そして――――そんな城への入口は、氷の壁に覆われていた。

 入場料でも払わなければ、入れてもらえないのだろうか?


「この場所に間違いないのう―――氷の城。 ヒョウはこの中におる……リュウ、すまんが生命探知を――――」

「――――うん、確かにヒョウの反応があるわね。 そして、この邪な気配は――暗黒賢者のものね」


 リュウがそういうと、徐にエンは壁の前に立ち、手を触れる―――すると、壁が溶けた。

 辺りに、蒸気が立ち込める。

 氷が溶けている証拠である。


「こんな壁程度―――うちに、溶かせないわけがない!」


 仕上げだ―――と言って、最後の氷を溶かし切った。

 道は今、開けた―――


「じゃあ、行きましょう!」


 と、ディルが先陣切って進む。

 相変わらずせっかちだな――――

 氷の大魔導士ヒョウと暗黒賢者――――いる場所は、王の間である。

 俺たちはまっすぐその場所へ向かったのであった。

 しかし、不思議な事に、暗黒魔法教団の団員?と言うのか、暗黒賢者の部下と言うのか?そういうやからは、1人もいなかった。

 何かおかしい―――だって、普通はそういうのが構えているのではないか?

 下っ端や雑魚キャラと呼ばれてしまう、RPGのキャラクターでさえ、城の中には多く配置しているはずなのだが。

 それすらいない。

 罠すらない。

 しかし、その理由は王の間に着いたら分かった。

 王の間の正面―――そこには、夥しいほどの黒い装束を着た人物が、氷漬けにされていた。

 凍結されていた。

 つまりは、氷の魔法で封印されていた。


「この魔法は、ヒョウの―――」


 とリュウは言う。

 そして俺たちは、王の間へと入る。

 氷の大魔導士ヒョウ―――いよいよ、ご対面である。



「ようこそ、我が城へ――――」


 王の間、玉座に座る女性はそう言った。

 チャイナドレスと和服を合わせたような格好、少し露出した肌は白く、髪は藍色―――そして、碧い瞳をした彼女。

 そう、これがヒョウである。


「――――そして、ワタクシは―――――ワタクシは―――――」


 そういうと、ガクッと顔が下を向いてしまった。

 その直後、後ろからフードをした女性が姿を現す。


「流石は、強力な大魔導士――――この状態でも、一時的に声を出せるなんて凄いわよね。 あなた達にも、果たして同じような事が出来るのかしら?試してみるのも、面白いかもね」

「お前は!」


 そういってボルは驚いていた。

 そんなボルを発見した彼女は笑いながら


「あらあら、ボル。 どうしたの?その姿。 まさか、やられちゃったの? 可哀想に。 んじゃあ、もう使えないから殺してあげるわよ」

「何だと?」

「あら?そんな怖い顔しても、ダメよ。 ブラッド様のいいつけだもの。 『ボルの催眠術が解けてしまったら、用済みだから消しても構わない』ってね」

「……」

「あはははは―――いい顔ね。 そう、その顔が見たかったの。 他人が絶望した瞬間のか―――お?」


 ボルは笑っていた。

 大きく、部屋中に響き渡るほど――――彼は絶望などしていない。

 むしろ、何かが振り切れたような、すっきりとした顔をしていた。


「翔琉の言うとおりだったな。 いやー正直、迷っていたんだ。 翔琉が本当に信用できるか―――でも、これではっきりした。 もう、悩まないし、迷わない。 吹っ切れた。 ありがとうと言わせてもらおう。 暗黒賢者が1人、ルーンよ」


 チッ、と舌打ちをして彼女―――ルーンはフードを脱いだ。

 ややぽっちゃりとした、ツインテールの女子が現れた。

 こいつ―――ツインテールだと?

 ――――全く似合ってない!

 ルーンは、俺を指さす。


「あなたが、翔琉って言うのね。 余計な事をボルに吹き込んだみたいだし―――あなた、恐らくここで一番危険そうね。 強い光の力を感じるわ――――んじゃ、さようなら」


 その瞬間、地面が白く光った。

 悪寒が走った。

 しかし、俺の身体は動かなかった。

 何故ならば、氷塊の中に閉じ込められていたからだ。


「しまった! 翔琉!」


 ディルが氷の塊へと近づこうとした。

 しかし、その行く手をヒョウが立ちふさがった。


「……」


 彼女は無言のまま、ディルに向かって巨大な氷柱を投げつける。

 エンが即座に、その氷を溶かした。

 水蒸気が辺りに、立ち込めた。


「ディル! 今のうちに翔琉の魔法を解いてくれ! リュウはうちと、この眠り姫を叩き起こすぞ」

「ヒョウ―――操られているとはいえ、翔琉ちゃんになんてことを――――」


 リュウの強力な水流が、ヒョウを壁へと追いやり、そのまま彼女ごと壁の向こうに飛ばした。

 凄い、威力だ。


「待ちなさい、ヒョウ!」


 鬼気迫る表情で、リュウは壁にあいた穴から、吹き飛んでいたヒョウを追いかける。


「おお、恋する女性は強いな―――」


 と呟いて、エンもヒョウを追う。




「やれやれ、連れていかれちゃったか。 まあ、危険そうな少年は封印したのだから、良しとしましょうか。 ふふふっ――――でも、これであたしも戦えるのね」


 怪しく笑いながら、ルーンは俺が封じられている氷の塊へと歩み寄ってくる。

 それを防ぐのは、雷の大魔導士ライ、そして闇の大魔導士ホルブである。


「翔琉の元には行かせないぜ、ルーン」

「お主の相手は、儂たちが勤めよう」


 そして、激しい戦闘が始まったのだった――――



 雷の槍に、闇の剣――――それらが、縦横無尽に飛び交う中、ディルはボルと共に、俺が封じられてしまっている氷の塊の前にいた。

 ボルはひっかいて、氷を壊そうとするが、砕けない。


「そんな事をしても、この氷はびくともしないわ」

「―――分かっているけどさ、なんかしねえと落ち着かねえんだよ」

「気持ちは察してあげるわ。 でも、ここは私に任せて」

「でも、氷ならば、エンに溶かしてもらえばよかったんじゃないか?」

「―――普通の氷なら、そう簡単に行くんだけどね、なにせ封印魔法の達人であるヒョウがかけた魔法、普通の炎や熱じゃ、溶けないのよ」

「なるほどな」

「そこで私の出番! 時空間魔法の使い手である、私のね」

「んで、どうするんだ?」

「この氷を、魔法がかけられる前まで、遡らせる。 そして、氷の塊が発生する直前まで戻して、翔琉を急いで引っ張り出す――――そうすれば……」

「翔琉を救えるって事だな?」

「ええ、そういう事。 チャンスは1度、氷が溶けた瞬間にボル――――あなたは、翔琉に思い切り体当たりをして、彼を弾き飛ばして」

「おう、翔琉を救えるなら、喜んでいいぜ」

「じゃあ、行くわよ――――‼」


 ディルが、氷の塊に手をかざした瞬間、氷は消えた。


「―――あれ? ここは――――」


 意識がはっきりした瞬間に、横から何かに衝突された。

 そして俺は、弾き飛ばされる。

 起き上がると、俺の上にボルが乗っていた。


「良かった、助けられた!」


 そういって身を寄せるボル。

 そして、氷の塊の近くでホッとしたような顔をしてみているディル。

 俺は―――何をしていたんだろうか?


「んじゃあ、翔琉。 ここはよろしくね、私はリュウ達の援護に行くから」


 そういって、ディルはいつの間にか壁にあいていた穴の中へと駆けていく。

 行く前にこの状況、説明してから行けよ―――



 概ねの事情は、俺の上でホッとしているボルから、だいたい聞くことが出来た。

 どうやら俺は、氷の中に閉じ込められていたらしい。

 不覚―――


「暗黒賢者ルーンの魔法は、太古魔法の1つである傀儡魔法パペットマジックで、相手を洗脳して操り人形にする魔法―――人以外でも、無生物まで操れる魔法なんだ」


 とボルは言っていた。

 傀儡魔法―――洗脳系の闇属性の魔法。

 洗脳洗脳って、あの教団は洗脳大好きか!

 ルーンは、城の壁を操り、ライとホルブの攻撃を躱す。

 雷と闇の攻撃――――

 まるで、雷雲のような組み合わせである。

 一方こちらに、巨大な氷の結晶が襲い掛かる。

 刃物のごとく切れ味抜群の雪の結晶は、空を裂いて俺たちに容赦なく襲い掛かる。

 俺は瞬間的にに光の盾を作った。

 氷は、盾の前に砕け散った。


「ふう―――これで、安心……‼」


 そう思ったのも束の間、結晶は分裂し全方位から攻撃してきたのだ。

 ならばと思い、盾を薄く延ばしドーム状にした。

 このことにより、全方位からの攻撃を防ぐことができる。


「あの魔法……そして、あの属性はまさか……」


 そういって、暗黒賢者のルーンの瞳は、怪しく輝くのであった――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ