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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第2章‐暗黒魔法教団‐
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1stステージ22:歩み寄る兄弟

 友達―――困った時に支えてくれる、頼もしい人物。

 俺はボルにとって、そんな頼もしい人物になりえるだろうか?

 彼の重い過去を真摯に知った俺の取った行動―――それは、正しい判断だったのだろうか?

 いいや、正しいかどうかなんて、俺が決める事ではない。

 今後の俺たちの行動で、正しさ―――を示すべきなのだ。



 ―――あれから、ボルは眠りについた。

 泣き疲れてしまったようだ。

 あの後、1時間以上は泣いたままだった。

 そりゃあ、疲れてしまうだろう。

 今は俺の膝の上で、すやすやと眠っている。

 まるで、子猫のようだ。


「やれやれ、仕方がない奴だな」


 ボルの頭を撫でながら、俺は朝焼けの海を眺めている。

 オレンジ色に輝き、波の音が聞こえ、とても心地よい。

 だが、その音を遮るような音が後ろでしたような気がした。


「誰だ‼」


 そういって、後ろを振り向くと、そこにはライが立っていた。


「どうしたんだ?ライ。 急に後ろに立って――――おっと!」


 急な事で驚いてしまったのだが、どうやらライは俺に抱き付いたらしい。

 モフモフとした肌触りのいい毛並みが、首筋にあたっていて、少しこちょばしかった。

 ライは俺の耳元で、そっと言った。


「俺……あのあと、ずっとここにいたんだ。 雷の魔法:稲妻隠いなずまがくしによって、姿を透明にして――――そして、翔琉と同様に心眼鏡を使って、ボルの本当の過去や考えを見させてもらった――――まさか、義理の父が殺人犯だったなんて……そして、ボルはその事をずっと黙っていて、俺や母を守っていてくれていたんだな……」

「そっか……ボルがもし、正直に話していたら、今頃ライと、ライの母親は、その義父に殺されていたかもしれないよね――――」

「ああ……結局、嫌っていたボルが、俺たちを守っていてくれただなんて――――皮肉だよな」

「そんな事は思わないよ。 勘違いして、一生分かり合えないままより、皮肉と言われても、真実を知ることが出来たんだ――――ポジティブに捉えようよ。 いつものライらしくさ」

「翔琉――――それでこそ俺の運命の人だ!」


 そういってライはギュッと力を込めている。

 俺は、ライに笑ってほしくて、安心してほしくて―――――ただただ、彼の頭を撫でてあげたのだった。

 その後、目覚めたボルは、俺の勧めもあって、ライと話をする事になった。

 と言うか、目覚めた直後に、俺の仲介のもとで、お互いにどう思っているのか、どう考えて行動しているのか――――それを、余すことなく互いに話し合いをした。

 何度か、ひやひやした部分もあったものの、どうにか2人は、長く深くできた溝を、少しは埋めることが出来たと思う。

 やはり、理解しあうためには、話し合いの場を設けるのが1番である。

 俺も――――俺も、自分の意見を素直に言ったからこそ、先生が協力してくれたんだよな。

 夢と、努力を――熱心に語ったからこそ、話し合ったからこそ、認めてくれたのだ。

 ああ、早く元の世界に帰らなきゃな―――と、思う俺なのであった。



 すっかり、太陽が空へと登ったころ、ディル達が起きてきた。

 起きてきて早々、彼女たちは驚いていた。

 昨日まで、あんなにも危険だった暗黒賢者が、こんなにも大人しくて、穏やかな性格に、変化していたからだ。

 そして、あんなにも不仲で、殺し合いまでに発展していた兄弟が、仲良さげに会話しているのを目の当たりにした。

 俺はみんなの顔がおかしくて、ついつい笑ってしまった。

 だって、みんなポカンとしていたんだもの。

 彼女たちは俺に詰め寄り


「「どうやって、ボルを変えたの?」」


 と聞いてきたのだが、俺は普通にこう言い放った。


「友達になっただけだよ―――」


 何故かみんなは笑っていた。

 そして、ディルはこう言った。


「――――世界中が、翔琉みたいな考えだったら、戦争とか無くなるかもね」


 確かに、世界中の全員が友達だったら、戦争なんか起きないかもしれないな。

 喧嘩は起きるかもしれないけど―――それでも、命が無くなってしまう戦争よりは、幾分かマシであろう。

 悪いと思えば、謝ればいいことだし。

 もしも、困ってしまった時や、不安になってしまった時は、友達を頼ること―――そして、自分が間違っていると気が付いた時には素直に謝るのが一番いいと思う。

 そうじゃないと、きっとすれ違いになったり、互いに互いが信用できなくなって、喧嘩をしてしまって、一生の溝を作ってしまう場合もあるのだから――――

 今回は、その例だったのだと思う。

 長い間、深い溝が出来ていた、兄弟の物語――――

 ほんの歩み寄り、語り合いによって、案外その溝は埋まるのかもしれない。

 そのためには、真剣に相手に向き合ってみることが大切で、時に向き合うべき予定調和なのであると思う。

 こうなることは運命だった―――なんて、押しつげがましい言葉を使うくらいならば、せめてこういってほしいものだ。

 運命は変えられる、ほんの少しの歩み寄りによって―――――

 あ!そういえば俺はホルブに一言謝らなければならないことがあった。

 不用意とはいえ。

 不覚とはいえ。

 ホルブ――――心眼鏡、壊しちゃってごめんなさい。

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