4thステージ34:天野蘚琉の真実⑤
「できた……」
斬神夜弥によって、不老不死を解除する薬【DEVIL】が完成した。彼の理論、計算……そして、天野翔琉監修&監視の元、その薬は誕生した。名前からして、いかにも恐ろしい薬であるのは間違いないが、天野蘚琉にとっては喉から手が出るほど欲しいものだった。彼女の不老不死を解除するため……そして、副作用の精神を蝕む侵食を防ぐために、彼女は出来たと同時に、その薬を自身に投与した。
夜弥によって完成したワクチンーーーそれを彼女は、なんの見境もなく自分にすぐさま注射した。なんの実験もせず、なんにも考えずにーーー。
「……‼まて、なぜ投与した‼」
夜弥は、珍しく怒鳴り声を上げた。その声に天野蘚琉はギョッとした様子で、注射器を地面に落とした。その瞬間、彼女の中に眠っていたもう一人の彼女が目を覚ました。
「あはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
高笑いを上げたもう一人の天野蘚琉は、ゆっくりと夜弥の方を向いた。突然の事で、何が起こったのかをすぐに把握できたのは、もう一人の彼女を知るものーーーつまりは、狼牙だけだった。
「まったく……余計なことしてくれちゃったわね……斬神夜弥……」
「お前は、誰だ!?」
「天野蘚琉……の、裏人格といえばいいかしらねーーー」
「裏人格?これも、副作用の効果か……」
「んー、まあそうね。お前が投与した不老不死の試作薬の副作用で生まれた天野蘚琉の善の感情ってやつよ」
「いや、こういう場合は悪とかそう言うのが目覚めるのだけど……え?善の感情!?」
「そうよ、狼牙には言ったけど……表人格は闇に落ち、裏人格は光に換わる……この意味は、天野蘚琉の表人格が悪に目覚めることを意味する。だから、気を付けて……私はもうすぐ表人格に消される運命……だからこそ、あなたたちに忠告する。次に目覚めた天野蘚琉は悪そのもの……彼女は全世界で危険な存在になる……だから、今のうちに……うぐぅ……」
と、話の途中で天野蘚琉の裏人格は苦しみ始めた。その苦しみ方は尋常ではなく、何かに次第に侵食され殺されているような……そんな苦しみ方だった。
「みんな……逃げて……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
天野蘚琉の裏人格の遺言通り、狼牙は翔琉と夜弥を連れて、涙ながらなに逃走を開始した。必死になって、彼らを連れて、研究所を抜け出そうとしたが、出口に到達しかけた時にその扉は重く閉ざされた。
【緊急事態発生、緊急事態発生……システムに異常をきたしたため、全設備閉鎖……全設備閉鎖……】
という、アナウンスと不気味なアラーム音が鳴り響きこの研究施設は脱出不可能な檻になってしまった。そして、コツコツと地下から階段を上がる音がなり、ゆらりゆらりと現れたのは天野蘚琉だった。
そして、彼女は狼牙たちを見てにこりと笑い。
「お前たちを殺してやる……」
そういって拳銃を彼らに向けるのだったーーー。




