4thステージ32:天野蘚琉の真実③
天野翔琉が南極大陸に行ってから、もうすぐ期限の1週間になろうとしていた頃ーーー天野蘚琉と狼牙は、日向ぼっこをしていた。
と言うのも、翔琉が旅立ってから狼牙は蘚琉に名一杯甘えた。その効果もあってか、天野蘚琉の病みは次第に落ち着いていった。俗に言う、【アニマルセラピー】みたいなものだ。この場合は【狼牙セラピー】と言うのか。まあ、天野蘚琉にとっては自分の子供のように可愛がっている子供に甘えられてしまったら、母性本能が働き考えも緩和するわけだ。
すーすー、と寝息を立てて野原で眠りについている蘚琉は、狼牙にとってはお姫様みたいなものだろう。
「蘚琉可愛いな……にゃは♪」
そういって、狼牙は蘚琉のほっぺをぷにぷにして遊んでいる。蘚琉はくすぐったいのか、ふふっと笑いながら眠っている。至って普通の女の子にしか見えないのに……彼女は不老不死の化物なのだ。
「蘚琉……おいらが、蘚琉のことを守ってやるからな……」
「あら?それは嬉しいことを言ってくれるわね、仔犬ちゃん……」
そういって、ガバッと唐突に起き上がった天野蘚琉……。だが、狼牙は分かっていた。この彼女は【天野蘚琉】では無いことを……。直ぐ様に距離を取った狼牙は、天野蘚琉ではない【彼女】に「誰だ!」といい放つ。すると、天野蘚琉とは言えない彼女の口は開いた。
「私の名前は天野蘚琉よ……まあ、天野蘚琉の裏人格なんだけけどねーーー」
「裏人格だと?」
「天野蘚琉という女の本性とも言うべきかしら?母性本能溢れるのが表人格で、魔王のような情熱が溢れるのが裏人格……」
「それが、どうして急に……」
「あら?知らなかったの?蘚琉はね、不老不死の化物にされてから病んでたでしょ?その病みは闇となって、私を誕生させた……そして、表人格が眠っている間に私は現れる……だから、あなたたちと距離を取っていたみたいだけどね」
「そうだったのか……蘚琉……」
「まあ、私はあなたに忠告しに来たんだけどね」
「忠告?」
「天野蘚琉の表人格は、もうすぐ終わるーーー」
「終わる!?それってどういうことだ!?」
「その言葉の通り……天野蘚琉の表と裏は入れ換えられる……もうすぐ、天野蘚琉の表人格は闇に落ち、裏人格は光に換わる……正確には、変えられてしまうわけだけど……」
「誰がそんなことを……」
「それは、表人格の……うっ!」
そういって、ばたりと裏人格の天野蘚琉は倒れた。そして、目覚めたのは表人格……狼牙の知る、天野蘚琉その人である。
「??どうしたの?そんなこれから戦いますよみたいなポーズとっちゃって?」
「え?あ……いや、何でもないよ……」
このとき、運命は動き出す。それも、最悪の方向へと指針を向けて……兄は死に絶え、獣は闇に溺れ、そして女は邪心を抱く……。




