4thステージ30:天野蘚琉の真実①
天野蘚琉……その者の物語は以前語られていた……が、彼女自身の口から出た序章に過ぎなかった……パラノイアと呼ばれた天野狼牙……なぜ彼が天野蘚琉を幽閉していたのか……なぜ天野翔琉を殺そうとしているのか……それらを開示して、物語は最終章へと繋がることが出来るだろう。では語ろう……パラノイアの目的と、天野蘚琉の本性を……邪悪に満ちた愚かな獣使いの物語を。
不老不死となってしまった天野蘚琉……だが、ここから彼女は変わった。以前は明るく楽しい性格だった彼女は、悪意と欲望を持ち合わせたそんな屑みたいな女になっていく……。
「それは違うっていってんだろ!使えねぇ屑が!」
そういって、彼女は携帯電話を壁に投げつけて、持っていた試験管を地面に叩きつけて割った。液体が床にびっちょりとこぼれて、ガラス片は辺り一面に飛び散ったのだった。
「あー、むしゃくしゃするなぁ……私は早く人間に戻りたいだけなのに……」
「……蘚琉お姉ちゃん?」
そういって、狼牙は実験室へと静かに入ってくる。普段なら彼女は穏やかで優しい対応なのだが……。
「狼牙!ここには入るなって言ったでしょ!出てきなさい!」
そうしかりつけて、実験室から追い出した。そして、その後に彼女の兄……天野翔琉が入室してきた。
「蘚琉……狼牙にあんましひどいこというなよ……お前の事を心配して……」
「うるさいうるさい!黙れ無能!お前の親友のせいで私は人間じゃなくなったんだぞ!落ち着いていられるかよ!お兄ちゃんなんかだいっきらい!」
そう、ヒステリックになった彼女は実験室のテーブルにのっていた器具を全て床に落としてぶっ壊したのだった。
 




