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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第2章‐暗黒魔法教団‐
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1stステージ18:ホルブの仕返し

 俺が目を覚ます頃には、ホルブはリュウによって回復してもらっていたようで、全快の様子であった。

 闇の大魔導士ホルブ――――ローブに身を包んだ、古風な雰囲気のおじさんである。


「お、翔琉君が目を覚ましたようだよ」


 エンがそういうと、リュウとライが、猛スピードでこちらに来た―――しかし、勢い余ったせいか、2人とも転んでしまい、俺の一歩手前で思い切り転んでいる。

 慌てすぎだろ――――

 ディルが、ゆっくりとこちらに歩いてきて、俺の顔を見るなり


「バカ!」


 と言って、平手打ちを食らわせた。

 俺には、何故叩かれたのか分からなかった。

 みんなを助けたのだから、普通褒めるか、感謝を言われていいものなのだが――――と思っていると、エンがこっそりとそのわけを教えてくれた。

 ひそひそと、耳打ちをして。

 神魔法を使用したリスク――――それを考えずに行動したことが原因らしい。

 神魔法を使用したリスク、と言うか現状的に考えれば、使用後に俺が気を失ってしまう―――という事があげられる。

 ディルが言いたかったのは、もしボルに攻撃が決まらずに、そのまま気を失ってしまったら、囚われの身になって、洗脳されてしまうのではないか、と言うリスクを度外視した行動が気に入らなかったらしい。

 更に言えば、俺が神魔法を使う直前に、ディルとリュウは、黒い球体内から脱出できる魔法を使おうとしていたらしく、云わば俺は余計な事をしてしまったらしい。

 しかしながら、結果として助けることが叶ったわけなのだから、お礼くらい言ってほしいものだ――――


 未だ不機嫌なディルをよそに、俺は闇の大魔導士ホルブに、ここに来たわけと、そして俺の身の内と、オールドアについて説明をするのであった―――


「――――と言う訳なのですが、どうでしょうか? お力を貸してほしいんです」


 お願いします、と俺は深々と頭を下げた。


「――――いいじゃろう。 儂の力で良ければ、いくらでも主に貸そうではないか。 命の恩人だしな」


 闇の大魔導士ホルブが仲間になった。

 俺は脳内で、あの有名なBGMを再生していた―――



 いっぽう、ボルは、俺の放った魔法によって、いまだに気を失ったままである。

 一応、見張りと言うことで、不機嫌なディルと、やれやれと言わんばかりにしているエンがそばにはいる。

 ディルは、アイコンタクトではあるが、俺に向かって”さっきは感情的になって叩いてごめん”と言ってきている。

 じゃあ、不機嫌そうにしている顔やめろよ―――と言うか、そういうのは口で言え!



「――――さて、主らにはまだ話さなければならないことがある」


 まずは、これを見てくれ、とホルブは懐から水晶を取り出す。

 その水晶から、天井に向かって光が放たれたと思ったら、突然青年の絵が浮かび上がった。

 さながら、映画館のスクリーンに映し出されている映像のように、色鮮やかに、はっきりと映し出された。

 髪の毛は茶色で、整った容姿に、きりっとした眉毛が特徴的な、黒い装束をまとった青年―――

 そして、その青年の姿が映し出された瞬間――――場の空気が、一気に重苦しくなった。

 いったい、あの青年は何者だろうか?

 その疑問は、ホルブの発した言葉によって、すぐに解決することになった――――


「どうやら、暗黒魔法教団教祖のブラッドは生きていたらしい――――」



 今から5年前にあった魔大戦。

 魔大戦と言うのは、言ってしまうと、魔法を用いた戦争である。

 魔法による殺し合い―――夥しい人が、この戦争で亡くなったと聞く。

 その際に、戦争の首謀者にして、暗躍した組織があった。

 その名前は、暗黒魔法教団。

 この組織に属していた人間は数知れず、教祖のカリスマ性にひかれた、当時の多くの人間や獣人は、この教団に魅入っていたらしい――――

 当時の連合の中にもメンバーがいたそうで、政治にも深く深く根付いていた。

 この手際は、用意周到な上に、計算つくされていたので、恐ろしい組織だった、と言えるだろう。

 教祖のブラッド=ブラックは、当時16歳と言う若さで、太古魔法を操ったとされる天才で、かつて連合の魔導士だったらしい。

 しかし、彼は、その連合を足かけとして、世界に混沌と恐怖を与えて、自身の教団に多くの生物を、自身の教団へと引き入れる算段だったらしい――――

 しかし、彼の計画は、3人の太古の魔導士、そして7人の大魔導士によって阻止されてしまう。

 ブラッドは、魔大戦が終わった後も抵抗を見せたが、やがて捕まり、即座に公開処刑となった。

 この世界的に、有名な出来事だったらしい―――そして暗黒賢者も処刑されて、めでたしめでたし―――――のはずだった。

 しかしながら、誤算が生じてしまった。

 処刑場にも奴らの仲間はいたらしく、そのためブラッドや暗黒賢者たちには、影武者を立てられてしまったのだ。

 つまりは偽物の処刑を、本物と勘違いして、刑を執行したのだ。

 偽りの真実―――人々に与えられたのは、ひと時の安らぎにすぎなかった。

 ―――処刑執行後、教祖ブラッドは地下へと行き、組織は再び混沌を呼ぶため力を蓄えたのだという。

 そして今、力がたまり、再び世を混沌へと導くために、組織は復活した。

 その前に、あの戦争において、自身たちを苦しめた大魔導士たちを、封印または洗脳して、邪魔者を排除する目的があったらしい。

 封印が成功すれば、戦力を削れるし、洗脳すれば、ブラッドたちにとっては戦力増強である。

 どう転んでも、ブラッドたちに徳しかない―――そんな計画。

 そして、ホルブの話によると、ここにいる大魔導士以外は全員洗脳されてしまったらしい。

 どうやらブラッドは、戦力増強を選んだようである。

 俺たちの到着があともう少し遅れていたら、ホルブも洗脳されていた、らしい――――。



「お主が、オールドアの封印を望む以上、他の大魔導士たちの洗脳を解く必要がある。 そしてそのためには……」

「暗黒賢者と教祖ブラッド=ブラックを倒すしかない……」

「その通りじゃ」


 何というか、とんでもないことに巻き込まれてしまったようだ。

 元の世界へと変えるためには、世界を救う必要がある、らしい――――

 そんな事はヒーローに頼んでほしいものだ。

 1人の中学生が、世界の命運を握るとか――――そういうのは、ライトノベルの世界だけにしてほしい。

 でもヒーローとか、少し憧れてしまう中学1年生なのであった。


「それなら、早速行動しよう。 えっと、ホルブさんは、他の魔導士の行方を知っているのですか?」

「呼び捨てで良い。 ふむ、儂が知るのは、氷の大魔導士ヒョウの居場所くらいかのう? ここに捕まる前に、どうにか情報だけは入手しておいたからのう―――ヒョウは現在、アイスキャッスルにおる」

「氷の城――――ここから200km、ってとこね」


 とディルは言った。

 ようやく機嫌を戻したようで、いつもの表情に戻っている。


「じゃあ、行こう!」


 と俺は行こうとすると、リュウが”ちょっと待った!”、と言う。


「その前に、あいつどうするの?」


 と磔にしていてすっかり忘れていたボルを指さした。

 いまだにボルは気を失ったままである。


「確かに、このままここに置いていくのは危険だけど―――連行していくのも、難しいし――――」


 と不安そうにディルは言う。


「じゃあ……完全に封印するか?」


 とライが暗い表情で言う。

 あまり気乗りしていない様子。


「いやいや、いっそのこと殺すか―――元々、処刑される予定だったんだからさ」


 とエンは冷静に言った。

 確かにそうかもしれないが――――

 リュウはエンに詰め寄り


「医者の前で軽々しく、”殺す”とか言ってほしくないわ――――」


 と怒りながら言った。

 そうだな―――


「俺も殺すのには反対だ。 いくら処刑される予定だったから、と言ってここで命を奪うのは、暗黒魔法教団の行っていることと、なんら変わりがないんじゃないかな?」


 俺がリュウの意見に賛成すると、ライも


「翔琉がそういうなら……俺も――――」


 と渋々ではあるが承諾してくれた。


「じゃあ、賛成多数で殺すのはやめにするけど……どうする?」


 とディルは言う。

 すると、ホルブは


「じゃったら、我に任せよ。 あやつには磔にされた恨み―――いやいや、罰を与えることにしよう。 それで許してやってはくれんか?」


 と言った。

 仕返しする気、満々じゃねえかよ……


「罰? それって、どんな?」

「安心せい、ディル。 奴には屈辱を味わってもらう。 奴自身が、最も嫌っている姿になってもらって、生き地獄を味わってもらう――――そして、同時にあやつの力を極限まで封印する。 そうすれば、儂らに危害を加えることも出来ないじゃろう」


 まあ、任せるわ―――とディルがボルに言う。

 そしてホルブは、罰を与える魔法を唱える―――


「闇の魔法:罰封ふうりき!」


 そういって、黒い光がボルを包み込む。

 するとボルの姿がロリライよりさらに小さくなった、3歳児くらいの小さな虎獣人に姿を変化させたのだった――――

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