4thステージ25:The first GOD returns
「あなたが、始まりの神なのですか?」
あたしは、結晶の中で眠る神とおぼしき者に声をかける。が、しかしながら返事はない。ただの屍のようだ。なんて、RPGとかでは表現されるんだって、前に翔琉が言ってたっけ?
「……だめね……返事がない……やはり、始まりの神は昔に死んで、魂はすでに転生してるのか……」
未だに眠る女……だが、その胸に光る鍵状のネックレス……あれが、【幻想詩】だろうか。悠久の時を越えても、今だ美しく輝き続けているその道具を、果たしてあたしはどうやってとればいいのかな?
さすがに墓地を荒らすような真似をしたくはないけど……最終的にとれなかった場合は、荒らすよ。
世界の命運がかかってるんだし!
「まずは、魔法で試してみますか……」
水の魔法:透過交換。相手の持っているものと同じ重量の物を交換する魔法。いってしまえば、アイテムトレードだ。普通ならばこれで済むのだが、どうやらこの結晶は魔法を封じる力が込められているようで、この水晶内まであたしの力は及ばないようだ。
「ふむむむ……予想はしていたけど、やはりだめか……」
さてどうしようか?さすがに、墓石を壊すようなとんでもない罰当たりなことをしたくはないけど……ないけど……いや、やらないよ。
さすがにそこは常識あるから、やらないよ。
「神様に頼るという考えは間違っていたのか……」
ここは何でも逆転になってしまう世界のようだし……思考までネガティブになってきたよ……。
……?
……逆転?
「それだ!今までの事象から逆転すればいいんだ!」
つまり、神に願うのではなく……神を無下にする。道具を求めるのではなく、道具を献上する。否定は肯定に……却下は決定に……全てが相反するこの世界ならば……。あたしは、再び神の眠りし水晶に呼び掛けた。
「神様……お願いしません……【幻想詩】をあたしに渡さないでください。よろしくお願いしません……あと、寝ててください。絶対に起きないでください……」
そんな投げやりで、嫌な台詞を言うと、ことは全て逆転した。
始まりの神は目覚め、結晶は砕け、【幻想詩】をあたしに向かって投げつけた。
「もう!眠ってたのに!起こしやがって!」
そういって、彼女は怒りでぷんぷんなようだった。
「んで?あんたが、天野翔琉?」
「いいえ……あたしはリュウっていいます……って!なんで翔琉のこと知ってるんですか!?」
「そりゃあ、当然でしょ?主人公なんだから……」
「主人公?」
何をいっているんだこの人は……いや、この神は。
「まあ、さておいて……現代の世にはパラノイアが蘇ってしまったらしいね……私の心臓を抉って食べた獣……いまだにぽっかりと穴が開いてしまってて気味が悪いんだよね」
確かに……胸に穴が開いている。あれは、パラノイアのせいだったのか……。
「というか、なんでその状態で生きていられるんですか!?」
「ん?神様ってのは、あくまでも肉体は器だから、魂というか意思が宿っていれば、死なないものなのよ……」
「へぇ……そういうものなんですね……」
あたしのそんな意見に神様は無視して、徐に外へと歩いていった。そんな後ろを追いかけて、せっせかとあたしも向かう。
「うふふふ」と笑いながら、墓場で遊んでいる神様が目の前にいて正直いってカオスである。
「ひっさびさぁのぉ♪外は気持ち、ヨイヨイ♪」
とまあ、超音痴な歌を歌い始めやがった。全くこの神はなにがしたいのか、分からねー。




