4thステージ23:自分の力で
外には強敵……普通に戦っても倒せる保証はない……しかし、真偽の分からないような道具があれば倒せるかもしれない……。究極の選択を迫られているのかもしれない……と、あたしは起源泉を眺めながら自問自答を繰り返していた。まあ、いざとなったら翔琉ちゃんがいつもみたいに華麗にギリギリにチートで圧勝するに決まっているが、一人の少年に過剰に期待を寄せて、重荷を背負わせて、無謀なことに挑戦させようとしていると考えたとき、あたしはあたしが情けなくなった。
というか、あたしを始めとしてディルやライたちも翔琉ちゃんにこのところ頼りっぱなしだ。あたしたちの本分は【この世界の秩序を守ること】。魔法を十全に持ち合わせているはずの、8人の大魔導士、3人の太古の魔導士、真実の神……なのに。異世界からやって来た少年が、それを上回る力を持っていたからって理由でなにかと役目を押し付けてしまっていた。本来ならば彼は、あたしたちに関係がない存在だ。なにせ、異世界から来た異人であるのだし……普通なら無視して素通りしてくれてもいいくらいの存在だ。なのに、親切心……いや、あの子は優しすぎるから自分の気持ちを圧し殺して、ただ一心に元の世界への帰還を願って物語を進めていっているのだろう。なればこそ、そのしがらみに捕らわれた彼をいい加減解放しなければならないのではないか?
「そうよ……そうだよね……」
「翔琉ちゃんだって、元いた世界へいずれ帰ることになる……その後の世界を守るのはあたしたちなんだ……」
「翔琉ちゃんが居なくても、世界を守っていけるって改めて証明しないと、翔琉ちゃんだって気が気でないじゃない……」
「今あたしに出きることは、あの化物を打ち破ること」
「倒してしまわなければならない……例え始まりの神のように死ぬことになっても……」
「もう……あたし以外はこの世界には居ないんだ……」
「よし! いっちょやりますか!」
自問自答の時間は終わりを告げる……。これから始まるのは未来を切り開く物語……。世界を守るため、なんて台詞よりかは一人の大人として少年の未来を明るくしてやりたいと願う、というような母性あふれる台詞をあたしはここで述べたいと思う。真偽がもし、偽であっても……もうめげない……もう逃げない……。これで最期になろうとも後悔はないさ。
あたしは、前を見て歩いたのだから……。




