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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第2章~罪深き妹は兄を思う~
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4thステージ17:天野蘚琉の物語⑦

"そして、天野翔琉は目覚めた。目覚めたと言う表現より蘇ってきたと言う表現の方が正しいかもしれない。しかしながら、とにかく兄は目覚めた。

ゴホッゴホッ……っと、液体から出た彼は自身の体内に残っていた液体を吐き出し、それが落ち着くと辺りをキョロキョロと見回した。


「……ここはどこだ?」


それが彼の第一声だった。私は兄のもとに駆け寄り、毛布を彼に掛けた。彼は私の姿を見て目を丸くしていた。


「え……蘚琉? って、だいぶ雰囲気違うけど……なんか、所々成長してるな……」

「お兄ちゃん……良かった……良かったよぉぉぉぉぉぉ!!」


ぎゅっと、そのまま私は兄に抱きつき大声を上げて泣いた。兄が死から蘇った……それだけで、こんなにもこんなにも嬉しいだなんて。


「よしよし……」


っと、お兄ちゃんは私の頭を撫でた。ああ、そうだ。よく、悲しいことがあって泣いたときってお兄ちゃん……いつでもこうやって慰めてくれたんだっけ。懐かしいな……。


「さてさて、蘚琉。 今というか、何が起こっていたのか教えてくれないか? 今現状的に把握できるものがなにもなくてさ……」


とお兄ちゃんは頬を掻きながらいった。

ん?っと、私の後ろにいる狼牙に気がついてにこりと笑って。


「大丈夫だから、こっちにおいでよ」


といった。狼牙は恐る恐る近づいて行った。


「始めまして、僕の名前は天野翔琉。 こっちのお姉ちゃんのお兄ちゃんだよ。 君の名前は?」


と、笑顔で聞く兄に対して、狼牙はかなり警戒した様子で。


「お、お、おいらの名前は天野狼牙。 蘚琉お姉ちゃんに世話してもらってるんだい!」

「そうか……じゃあ、今まで蘚琉を守っていてくれたんだね。 ありがとう」

「‼ 礼を言われることをした覚えは無いけどね、へへっ」


そして兄は狼牙の頭を撫でた。狼牙は嬉しそうに頬を赤めて、にこりと笑っている。すごいなお兄ちゃん。もう子供の心を掴むなんて。そういえば、お兄ちゃん子供好きだもんな。じゃあ、後で教えてあげようかな。また新しい弟が一人出来たって。お母さんが言ってたけど、名前は確か天野翼(あまのつばさ)だったかな。


「む?」


っと、私の更に後ろで最後のマシュマロを食べている夜弥さんを見つけたお兄ちゃんの表情が変わった。


「夜弥……?」

「よう、翔琉。 久々。 元気そうじゃん」

「おお!夜弥じゃん、久々!」


と、身体にバスタオルを巻くかのように毛布を巻き付けながらお兄ちゃんは夜弥さんの方へと歩み寄っていった。


「まったくお前が死んでから暇で暇で仕方がなかったぜ」

「死んだ? 俺死んでたのか?」

「ああ。 交通事故で……2年か3年前位だったかな」

「いや、そこはちゃんと覚えとけよ。 あれ?じゃあ、なんで俺は生きてここにいるんだ?」

「お前の自慢の妹がお前を生き返らせたいって言ってたから、俺が手伝ってやったんだ」

「手伝ってやったって……手伝うだけでそんな蘇生技術作れるものなのかよ……」

「まあ……俺の頭脳があればな……あと、お前の妹にもイタズラしといたぜ」

「え! お前……妹を襲ったの?」

「違げーよ。 なぜそうなる。 頭の中相変わらず変態かよお前……まあ、あれだ。 薬を投与させてもらった」

「え!媚薬?」

「あー!!!」


っと、髪をくしゃくしゃっとかいて夜弥さんは再び会話を戻した。


「お前の妹に実験した。 もう、お前の妹は人間じゃなくなったんだよ……不老不死の生物になったの! もういい? オッケー?」

「不老不死の生物って、蘚琉が? まさか……」


っと、兄が言った瞬間夜弥さんは私に向かって拳銃を向け心臓めがけて弾丸を放った。私にその弾丸は見事に当たり、私は口から血を流し、胸からも血が飛び出てその場に倒れた。


「お姉ちゃん‼ お姉ちゃん……目を開けて……お姉ちゃん……」


っと、狼牙は私に寄り添っている。そして、兄もハッとなって急いで私の方に駆け寄る。


「蘚琉? 蘚琉‼ しっかりしてくれ! 蘚琉!」


ポロポロと二人の目から涙が出るなか、私は目覚めた。確かに傷口はふさがってしまっている。激しい痛みは身体を襲ったが、もうしない。


「お兄ちゃん……狼牙……」


っと、私は言った。狼牙は泣きながら私に抱きついているが、兄は夜弥さんの胸ぐらを掴みにいった。


「お前! もしも、不老不死じゃなかったら今ので蘚琉が死んでたんだぞ! そうなったらお前……責任とれるのか!?」

「いやー、だってもしも死んだらお前みたいに生き返らせればいいじゃん。 ドラゴンボールだって、途中まで2度死んだら蘇らないみたいな設定だったけど、後半で何回でもに変更になったじゃん? それとおんなじだろ?」

「お前……昔から命を粗末にする考えだったのは知っていたが、ここまでなのかよ……」

「やめろよ翔琉……そんな悪魔でも見る目で俺を見るな……俺は人間だぜ?否、これが人間だ」


そういって高笑いをして部屋から出ていく夜弥さんは、もう2度とこの場所には戻ってこなかった。唐突に行方をくらませた。彼がどこに行ったのかは未だに私にもわからない。でも、これだけは言える。あの人は今でもどこかで生きている……そして、人間らしく悪魔みたいな策略を張り巡らせているのだろう……今考えれば、狼牙がパラノイアとなったのもあの人の策略だったのかもしれない。

そのパラノイアとなる策略を私たちはこの段階では気づくことができなかった……だからこそ現状が生み出されているのだろうな……"



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