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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第2章~罪深き妹は兄を思う~
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4thステージ16:天野蘚琉の物語⑥

"そして、いよいよ兄が目覚める日がやってきた。

長い長い道のりだったが、ようやく報われるときがやって来たのだった。


「この人誰なの?」


と、狼牙は液体の入った容器越しに兄を指差し尋ねる。私はにこりと笑って。


「この人は天野翔琉……私のお兄さんよ」


といった。狼牙は、へぇ~っと容器に顔を押し付けて眺めている。さて、あと数分で兄が目覚めるはずだ。


「じゃあ、狼牙。 今からお兄ちゃんが起きてくるから、仲良くしてね♪」

「うん! おいら、仲良くするよ!」


ゴボゴボっと、兄の入っている容器の中の液体は気泡をまとい始める。これで、酸素をゆっくりと注入して外の空気になれさせなければならない。人間の皮膚というのは、とてもデリケートにできていて、しばらく空気に触れていないと、過剰なまでの拒否反応を示す場合があるらしいのだ。なのでこうやって、液体中の酸素濃度を少し高めるのだ。勿論過剰摂取はかえって毒なので、精々通常より本の少しだけ高くするだけだ。


「……!」


今、兄の目がピクリと動いた。先程まで死体だった身体に兄の生気が蘇ってきたということか。あともう少しだ……あともう少しで……。


「翔琉はもうすぐ目覚めるみたいだね……」


そういって、マシュマロを食べながら夜弥さんは唐突に現れた。前のときはペロペロキャンディーで、今回はマシュマロって……甘党なんだよな夜弥さん。お兄ちゃんと一緒で。


「あ、夜弥さん。 どうもです」

「んん? なんかよそよそしいね。 あれかな? ここ最近君たちをつけ回して監視していたことによっぽどご立腹なのかな?」

「まあ、普通の人じゃなくてもそこは腹立つと思うけど……てか、なんでそんなことするんですか? 私生活まで干渉され、鑑賞されると困るんですけど」

「ああ、ごめんごめん。 狼牙と仲良くイチャイチャしながらすごしてたもんな。 そりゃあ、俺が色々見てたら不快になるわな。 例えば狼牙と一緒に風呂に入って身体洗ったり洗われたり、例えば一緒にご飯作って食べたり食べさせられたり、例えば一緒に布団で寝て、何気に狼牙は所長の胸元に顔を押し付けて抱きつきながら寝たり……etc」

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!! 見すぎ! ストーカーのレベル越えてるって言うか! だから、なんでそんなことしてるのよ!」


もふもふっとマシュマロを頬張りながら彼は答えた。


「そりゃあ、実験してたからね」


と……あっさりと。すんなりと。悪びれることなく、彼はあっさりと言ったのだった。


「実験? だから、狼牙にはなにもしないでって……」

「誰が天野狼牙に実験してるっていった?」

「え?」


ドクンドクン、と私自身の心臓の音が波打つ音が聞こえる気がする。というか、頬からの汗や、手の震えが止まらない。だって、今の発言で可能性として残っているのはもはや1つしかないのだから。


「まさか……」

「そうだよ、所長。 俺が実験してたのは君だよ。 天野蘚琉………」

「……いつから? いつから、私を実験してたの?!」


そう私は彼に感情のままに怒鳴り付ける。近くにいた狼牙は、あまりの怒りの形相に脅えてしまってブルブルと震えている。

しかしそんな中でも夜弥さんは淡々と語る。


「君が前に地下の実験室に来たときかな……その時に実は白衣にとある薬品をこっそりかけておいたんだ……試作段階の不老不死の薬……あとは君に怪我でもしてもらって、その傷口が白衣に触れるだけで薬の投与は完了するって計画だった……」

「それってまさか!」


そういえば、最近怪我をした。もう傷口はないけど、1度だけ今月は怪我をしていた。狼牙を助け出すときに、手のひらの皮が剥がれて血まみれになっていた。しかも、その手で白衣を握っていた。つまりはあの時、薬の投与が完了していた。


「言っておくけど、天野狼牙の唾液には傷口を治す成分は含まれていない……それは、すでに解析済みだ……つまり、あの時君の傷が治ったのは君自身の治癒スキルなんだよ……所長……」


このとき、私は悟った。夜弥さんの目的は、天野翔琉復活のと同時に、兄を実験台に何かをしようとしているのだと。

その代償として、私は不老不死にさせられてしまった。悪魔のような男の策略によって……。


"

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