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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第2章~罪深き妹は兄を思う~
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4thステージ15:天野蘚琉の物語⑤

"ある日の事だった。私は狼牙を研究所の外に散歩へと連れていっていると、蝶々を見つけた。 狼牙と私はそれを追いかけて、裏にある山の方に来ていた。今まで気がつかなかったのだが、とても綺麗なお花畑が広がっていた。


「うわーい!お花!お花!」


と、狼牙は花の中を駆け抜けている。いや、女子みたいだな……本当に。


「お姉ちゃん!お花綺麗だね!」


ニコニコっと、狼牙は笑みをこぼしている。本当に可愛らしい男の子だ。なんていうか、本当に子供ができたように……母性本能を擽られるような行動を取ってくる。


「狼牙! あんまり、遠くに行っちゃだめだよ!」

「はーい!」


そういって、狼牙はお花畑を走り回っている。蝶々や他の虫を追いかけたりして遊んでいるようだった。私は、花畑の近くに座って空を眺めていた。なんというか、とても心地よくて清々しいといえるほどのいい天気だった。


「久々にいい天気だな……ふぁぁぁ……眠くなってくるな……」


ゴロン、とその場に寝転んで私は雲を眺めている。このまま寝てしまいそうなくらい穏やかな風、穏やかな気温だった。

次第にまぶたが重くなってきて、それがまもなく閉じかけた瞬間だった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 蘚琉お姉ちゃん!」


と、狼牙の叫び声が聞こえた。私は上体を勢いよく起こして、周りを見渡すが狼牙の姿がなかった。


「狼牙! 狼牙! どこにいるの!」


私は血相を変えて、辺りを探し回った。花畑、近くの森林……だが狼牙の姿が見当たらない。


「狼牙……狼牙! どこなの! 狼牙!」


必死に探したんだけど、狼牙は見当たらなかった。まさか、誘拐された?


「狼牙……ぐすっ……狼牙ぁぁぁ……ぐすっ……どこぉぉ?」


泣きながら、私は考えられそうな場所を探したが、残念ながら狼牙は見つからなかったんだ。そして、その場にうずくまって泣いていた。私が目を離したからこうなったんだ。

子供から目を離してはいけないと、散々テレビや雑誌や本やらで学んだのに……。


「……ちゃ……ん……」


!!

今かすかだが、声がした。どこからだ?


「……ね……ちゃん……」

「狼牙ぁぁぁ!! どこ!?」

「蘚琉お姉ちゃん! 助けて!」


声が聞こえた方を見ると、やはり花があるだけだった。だが、その声のする場所に近づくと、小さな穴が開いていた。子供一人分くらいすっぽりと入るほどの。


「狼牙! そこにいるの?」


そう穴に向かって言うと、狼牙の声が帰ってきた。


「お姉ちゃん! おいらはここだよ! 助けて!」

「待ってて! 今、何か掴まるもの持ってくるから!」


とは言ったものの……何かないだろうか。

そうだ!と、私は着ていた白衣を脱いでビリビリっと破いた。そして、よくドラマなんかで病院とかから抜け出す人みたいに、布を結んで簡易型のお手製のロープを作った。

それを穴の方に吊るす。


「狼牙! これに掴まりなさい!」


というと、ぐっとロープに重さがかかる。それをゆっくりと引き上げると、狼牙がロープにぶらんとぶら下がっている。


「お姉ちゃん……」


と、申し訳なさそうな顔をしている狼牙だったが、私は泣きながら彼を抱き抱えた。


「あーん……ごめんね、ごめんね狼牙! 怖かったでしょ? ごめんね、ごめんね……私がもっとしっかりしていないとダメなのに……ごめんね……ごめんね……」

「お姉ちゃん……ごめんね……ごめんなさい……おいら……おいら……」

「無事でよかった! 本当に! もう……心配したんだからね……でもよかった無事で……よかった……っ!」


ふと手を見ると、血まみれだった。どうやら、ロープを引っ張ったときに皮が剥がれてしまっていたようだ。今更ながら痛い。


「ん? お姉ちゃん、怪我したの?」

「うん、そうみたい……こんなの唾でもつけとけば治るんじゃないかな」

「んじゃあ、ペロリ」

「っ! ん? あれ? 痛みが……あれ?」


手を見たら、血まみれだった手が綺麗になっていた。怪我も無くなっていた。どういうことだ?


「おいらね、怪我したときに舐めたらすぐに治っちゃうんだ! お姉ちゃん、これでもう大丈夫だよ♪」


そうか、狼牙は不老不死のメカニズムに近い細胞の持ち主……だから、彼の唾液も似たような性質を持っていてもおかしくはない。つまり、私の手は狼牙の細胞が作用して治癒したってことか?という風に感心していると、花畑の奥の方に人影が見えた。

あれは……夜弥さん?

なんでここに?

まるでこれじゃあ、私と狼牙を監視してるようじゃないか。"

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