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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第2章~罪深き妹は兄を思う~
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4thステージ14:天野蘚琉の物語④

"狼牙は、みるみる成長した。3日ほどでその成長はおさまり、小学生くらいの身長になった。

この頃の狼牙は無邪気で、幼稚だった。よく研究所の壁なんかに落書きをしたり、実験機具にいたずらしたり、走り回ったりとそれこそ無垢な子供のようだった。


「蘚琉お姉ちゃん♪ 遊んで♪」


と、私のところによく来るのが日課だった。夜弥さんは、兄の覚醒まで他の研究をすると言って、しばらく地下の実験室に籠ってしまった。まあ、何かあれば警報がなる仕掛けなので問題はないが……最近姿を見ていないのは気になるな……。

あとでお茶でも持っていくかな。


「ねえ、ねえ! お姉ちゃん! 遊んで、遊んで♪」

「分かった!分かったから! そんなに、袖を引っ張らないで!」

「お姉ちゃん!愛してるぜ♪」

「はいはい、いつものように告白してくれてありがとうね」


何故か知らないが、必ず狼牙は毎日のように【愛してるぜ】という言葉を私に言うのだが、この時の私には理解していなかった。今思えば、あの時から現パラノイアは私に対して特別な感情を抱いていたのかもしれない。


「じゃあ、今日は何して遊んで欲しいのかな?」

「うーんと!うーんと!じゃあ、おままごとしたい!」

「おままごとって、女の子がやるイメージあるんだけど……まあ、いいか。 そんじゃ、私がお母さんかな?」

「うーんと、お姉ちゃんはおいらの奥さん!おいらは、夫やる!」

「うん、分かった。 じゃあ、始めましょうね」


正直言って兄が蘇る間、私にはやることがなかった。というか、目的を達成してしまっている今、次に何をするかというのが考えられていなかった。だから、こうして暇をもて余しているのだ。夜弥さんには、どうやらこの後の目標もあったようで、それを達成するために日々頑張っているそうだ。でも、夜弥さんのやることってなんなのか……それは、私にも教えてくれない秘密だそうだ。いったい何をしているのかしら?


「おい、蘚琉! 飯はまだか!」

「あ……はいはい、あなた。 今すぐ!」


亭主関白に完全になりきっている小学生くらいの男の子なんて、そうそう見れるものじゃない。だが、現実に目の前にいる。妙に演技とかになると、気合いが入るんだよな狼牙は。


「はい、あなた……できましたよ」

「うむ! いつもうまい飯をありがとうな!」

「あなたこそ、いつも私を支えてくれてありがとう」

「蘚琉……」


と、狼牙は私のほっぺにキスをする。まったく、どこで覚えたのやら……。


「ありがとう」

「え? やり返すんじゃないの! おいらにもチューして! チューして!」

「はいはい」


私は狼牙の額に軽くキスをする。狼牙は顔を赤めて、えへへっと喜んでいる。純情な男の子だな。


「えへへ……蘚琉お姉ちゃんにキスして貰った♪」


こんな感じでおままごとを進めていき、ようやく終わったのは午後3時近くだった。


「あら! そろそろ、おやつの時間ね。 狼牙は今日は何が食べたい?」

「おやつ! おいら蘚琉の作ってくれるものならなんでも食べる!」

「あらあら、嬉しいこといってくれて♪ じゃあ、狼牙の好きなホットケーキでも作りますか」

「わーい! やったやった!」


犬は喜び庭駆け回り、なんて言葉が相応しいんじゃないかと言うほど彼は喜んでいる。はしゃぎ回って、回って回って、目を回している。本当に、犬みたいな子だよ。



「いただきまーす!」


と、狼牙は私の作ったホットケーキをムシャムシャと喜んで食べている。がっつき方が、見ていて清々しいほどにいい食べっぷりだ。


「さて、夜弥さんのところにお茶でも持っていこうかしら……」


そういって、私は京都から取り寄せた緑茶を湯呑みに入れて、地下の実験室に、向かった。

私の作った研究所の構造は、1階が薬品系の実験室、2階が自宅、地下がシェルター兼生物系の実験室。

なぜシェルターなのかと言えば、まあもしもの時に実験データ等があるサーバーを守るために作ったというのと、研究所なので強盗などから身を守るために使用すると言うのも目的なのだ。

まあ、夜弥さんに言われて念のために作っておけって言われたから作ったんだけどね……。

コンコン、と扉を叩いて地下実験室に入ると、夜弥さんがいた。まあ、当然と言えば当然か。


「夜弥さん、お茶です」

「ああ、所長。 ありがとう……」

「だいぶ疲れた表情してるわね……大丈夫?」

「ああ……今、丁度いいところでね……」

「いったいなんの研究をしているの?」

「……まあ、いいか……実はな、こないだ狼牙から血液を少し採血しただろ?」

「ええ……たしか、病気がないかを調べるために……よね?」

「ああ……それで、調べていたら面白い結果が分かったんだ」

「面白い結果?」


と、私が首をかしげていると、夜弥さんはノートパソコンを持ってきて、ある画像を見せた。

これは……なにかの細胞?


「なに?この細胞……自発的に再生と破壊を繰り返して……まるで、これは……」

「そう……これは、不老不死のメカニズムに限りなく近いんだよ……。 昔翔琉と話し合ったんだ……【もしも、永遠の命があったら】ってね……俺はその話しにすごく興味があった。 永遠に生きられたらなんて幸せなんだろう……そう二人で話し合っていたりもした……。

だが、翔琉が死んだと聞いたとき……俺は、それは妄想だったと知らされた。 翔琉が死んでから、俺の心にはポッかりと穴が開いた。 大切な友人を失った絶望に冴えなまれたよ……でも、そんな時、翔琉の妹であるあんたが、兄を蘇らせようとしていると聞いた。 始めは何をバカなことを言っているんだと思ったよ。 でも、ふと思った。 この穴を埋めるには翔琉しかいないんだ……だから、俺はあんたに協力した。 そして、それはなし得てしまった……天野翔琉の復活。 残り約25日後……やつは目覚める……その前にこれを終わらせてしまっておこうと思ってな……」

「じゃあ、あなたがやっていたのは……不老不死の研究?」

「そうだ……だから、邪魔するなよ?」

「邪魔なんかしないわよ……まあ、でも狼牙にはなにもしないでね……もう十分に血液データは取ったでしょ?」

「あー、分かった分かった」


この時の私はなんて甘かったんだろうと、今更ながらあの時の私をひどく憎む。あの時、夜弥さんの深意にして真意を気が付けなかったから、今この事態は引き起こされているのかもしれない……"

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