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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第2章~罪深き妹は兄を思う~
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4thステージ13:天野蘚琉の物語③

"そして、私は夜弥さんのいった通りに実験を開始した。

といっても、薬を調合して様々な条件の元でその薬に負荷を与えていっているだけだった。

当時17歳。兄が死んでから、2年の月日が流れていた。その間、兄は私の作った特殊な液体の中で死体のまま眠りについていた。長い長い眠りを早く覚まさせてあげなければならない。

そう思って必死に、がむしゃらに頑張った2年間……とうとう、報われる日がやって来た。

ついに、あの薬が完成したのだ。

死者を蘇らせ、全てを治すことの出来る万能薬【ANGEL】。私は喜びを隠せなかった。そして、夜弥さんも……。


「やったぁ!! これで、お兄ちゃんを生き返らせられる!」

「これで、また翔琉と遊べるんだな……やった……やったぁ!」


私たちは、これまでにないほどはしゃいでいた。ようやく報われるときが来たのだと……。

毎日毎日実験、実験の繰り返し。いい加減、心も身体も壊れてしまうかと思うほどに疲れていた。何せ、2人でしか研究をしていないのだから、急ごうと思っても時間はかかるし、負担も大きかった。だけど……だけど、ようやく……その苦労もこれでおしまいだ。


「さっそく、兄の身体に投与するね」


と、私が兄の入っている液体にその薬を投与したその時。微かに泣き声が聞こえた。


「ん? なんの声?」


私は辺りを探索して、そして近くの段ボールの中に犬の耳を生やした赤ん坊が泣いているのを見つけた。


「オギャァァァァァァ、オギャァァァァァァ……」

「え……なんでこんなところに赤ちゃんが……」

「オギャァァァァァァ、オギャァァァァァァ……」

「……まあ、今はとりあえず……よいしょっと」


と、私は赤ちゃんを抱き抱え、よしよしっとあやした。次第に赤ちゃんの泣き顔は安らかな笑顔に変わっていった。


「キャハハハ♪ バブー!」

「おお、よしよし……いい子ですね♪ 君はどこから来たのかな?」

「バブー?」

「まあ、言っても分からないよね……なにいってるんだろ私……」

「あうあ!!あうう……」

「ん?なに?」

「おいらは、この研究所で生まれたんだぞ」

「へえ……そうなん……!! って、喋った!」


それはそれは、驚いた。何せ、さっきまでバブバブ言ってた赤ちゃんが突然にさも当然であるかのように日本語を話し始めたのだから。


「ちょっと! 夜弥さん! 来て!」


と、私は大声で彼を呼んだ。何事かと、夜弥さんは何故かペロペロキャンディーを食べながらこちらに来た。


「どうした? なにかあったか?」

「ええ、この子……」

「うぉ! 所長! いつの間に隠し子だなんて! 誰の子?誰の子?」

「知らないわよ! ってか、隠し子じゃねーし! 私がお腹痛めて生んだ子じゃないわよ! なんか、そこの段ボールの中にいたのよ……なにか知らない?」

「段ボール? ああ!」


バキッと飴を噛み砕くほどに、彼はビックリしたような顔をしていた。なんだ?なんだというんだ?


「ごめんごめん、あそこの段ボールの中に実は今回できた薬の副産物としてできた結晶体を入れておいたんだよ。 あとで解析しようと思ってさ……まるで、化石の琥珀みたいになにか中に入ってたから……」

「じゃあ、この子はその結晶体の中にいたのかな?」

「わかんねーけど……そうなるんじゃねーかな? 所長の隠し子じゃない限り……」

「隠し子隠し子って、そういうフライデーに載りそうなネタばかり言わないでくださいよ! でも、とりあえずこの子に服とかご飯とか用意してあげないと……あ! あと、名前か……」

「名前? ナナシノゴンベじゃだめ?」


と、夜弥さんがいうと赤ちゃんは首を横に降る。首はもう座ってるんだな。じゃなきゃ、こんな動き出来ないものね。


「うーん……じゃあ、天野狼牙(あまのろうが)って名前にしましょう……なんか、この子の見た目って(おおかみ)に見えない?」

「天野狼牙ね……まあ、所長が決めたんならいいんじゃねーの?」

「よし決めた! あなたの名前は天野狼牙! よろしくね、狼牙♪」


そういって、狼牙の方を向くととても可愛らしい笑顔をこちらに向けて彼は言った。


「……ありがとう、主人(マスター)


こうして、私は天野狼牙……のちのパラノイアと出会ったのだ。一方兄には薬を投与したのだが、この薬は投与されてから1ヶ月ほどたたないと死者は蘇らないという特性を有しているので、兄が目覚める間の1ヶ月……私は夜弥さんと狼牙と3人で待つことになったのだった。そして、1ヶ月後に訪れる惨劇と悲劇……それをこの時私を含めて誰も知らなかったのだった……"

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