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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第1章~真実の神に願いを~
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4thステージ10:命の駆け引き

こうして、あたしの治療は始まった。

世界最高峰の治癒魔導士にして、水属性の大魔導士。これがあたしなのだ。状態異常、治癒なんかはあたしが本来やるべき責務であり、義務であったのだ。

しかしながら、暫く【異世界最強の魔導士】天野翔琉……【神魔法の後継者】ジンライの強大な光属性の治癒魔法に頼りっぱなしだった。つまり、あたしは自分の仕事をサボっていたんだ。誰かがやってくれるから……そんな、子供みたいな言い訳を自分にしながら、あたしは自分の責務を放棄していたと考えただけで、怒りがこみ上げてくる。

何をしていたんだ自分、と……。

つまり、今こそあたしは本来の目的というか責務を果たすべきだ。そうしなければ、水の大魔導士リュウという女は死ぬのだ。生命的な死ではなく、役職的な死を味わう。それは避けなければならないだろう。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅ……水の魔法……完全回復執行(パーフェクトリカバリー)……発動!」


ロギウスの額より、あたしの手の方へ黒いエネルギーがどんどん流れてくる。そのエネルギーが、あたしの身体の中に入る(たび)に、激しい激痛が襲いかかる。この痛みは、生きたまま腕から骨を神経ごと引き抜き取られるほどの、激痛……というか、下手したら死ぬレベルだぞ!


「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


結晶のある広間に、あたしの叫び声が木霊する。先程まで泣いていた蘚琉はピタッと泣き止み、目を見開いてぎょっとしたような顔でこちらを震えながら見ていた。他のみんなも同様に、ここまで苦しんで治療を行っているあたしを、初めてみたらしく非常に驚きながらも、あわあわと、何をしてよいのか分からないような顔をしていた。


「ぐぅぅぅぅぅぅぅ……(もう少し……もう少しだ……)」


黒いエネルギーが、どんどんあたしに流れていくと、ロギウスの傷はどんどん治っていく。その代わり、あたしの身体は次第に傷だらけになっていく。腕、足、肩、腹、指……まるで切り傷のような傷が次々に現れていく。

この黒いエネルギーというのは、ロギウスの受けたダメージそのもの。つまり、今あたしがロギウスのダメージのエネルギーを受け取っているのだから、彼が受けたダメージ箇所に反映されるように傷は転写されていく。血がポタポタと流れてく……。


「もういい! やめなさい、リュウ! 死んでしまうわ!」


と、アニオンが叫ぶがあたしは止めない。


「やめてくれ! 頼む! やめてくれ!」


と、ボルが叫ぶがあたしは止めない。


「「やめろぉ! リュウぅぅ!!」」


と、みんなが叫ぶがあたしは止めなかった。全身から血がポタポタと流れてく中、あたしは言った。


「処置……完了……」


そして、ばたっとその場に気を失い倒れてしまった……。


あれから、3時間ちょっと……あたしは目が覚めた。そこは、結晶の近くだった。ベットの上に包帯まみれであたしは寝かされていた。その側には、天野蘚琉が寝ていた。

彼女の頭を静かに優しく撫でると、彼女は気持ち良さそうな顔をして、起きた。


「ん……ムニャムニャ……!! リュウさん! 目が覚めたんですね!」


と、ガバッとあたしに抱きついた。その目からは涙が流れ落ち、あたしの身体にポタリポタリと、落ちる。

雫はやがて止まり、彼女は改めてあたしの顔を見つめる。


「よかった……本当に……ううう……」

「もう、泣かなくていいわよ。 ありがとう、蘚琉ちゃん。 あたしを心配してずっと側にいてくれたの?」

「うん………私、元の世界にいたときは医者だったから……正確には医学研究の博士だったんだ……だから、私が看病した方がいいって、お兄ちゃんが言ってくれたの」

「あなた、医者だったんだ……そうか、そういえば童話ではパラノイアが出来たのって、あなたが開発した死者復活の副産物だったんだっけ?」

「ええ……まあ……昔はあの子もいい子だったんだけどね……パラノイア……いえ、これはあの嫉妬に飢え、妄想でなりたった怪物になった獣の名称か……本来の名前は別なんだけどね」

「へぇ……パラノイアって別称なんだ……じゃあ、本来の名前は?」

「生物名称【不死人狗(エルウルフ)】……不死なる肉体を有する犬の少年……まあ、正確には犬の仲間の狼なんだけど……まあ、そんな中でも、私が彼にあげた名前は【天野狼牙(あまのろうが)】。 私が生み出した私の子供……になるのかしらね?」

「天野狼牙……それが、パラノイアの本来の名前か……ねぇ、少し教えてほしいんだけど……あなたの過去をもしよければ聞かせてもらえないかしら? あたし、せっかくならあなたとあなたの子供の話……そして、翔琉ちゃんの話も聞きたいし……」

「うーん……分かったけど……聞くなら、後ろでこそこそ隠れてる皆さんもこちらに来て聞けばよろしいのでは?」


と、彼女が言うとゾロゾロとボルたちが現れた。居たんなら、素直にこっちに来ればいいのに。えへへっと、頭をかきながら彼らは彼女の話を聞くため、あたしの近くに固まるのだった。まあ、ロギウスが元気そうに歩いていてホッとした。あたしに、ありがとうと言ってきた。礼には及ばないのだけど……言われると嬉しいものね。


「じゃあ、みなさん揃ったところで……話を始めますね。 私とお兄ちゃんとパラノイアと呼ばれた子供の物語を……」

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