表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第1章~真実の神に願いを~
173/349

4thステージ8:健全なる強奪

「そんな……蘚琉(マスター)が目を覚ました……蘚琉(マスター)!!」


っと、パラノイアは蘚琉に駆け寄ろうとするが檻に阻まれて近付くことはできない。ガシャガシャと、檻を怖そうと必死に叩くがいっこうに壊れる気配など無かった。


「無駄だパラノイア……その檻は、お前のような魔力零を使う生命体のための対策として考えられた状態(モード)だ。 そう易々と破壊することは出来ぬ」


ロギウスは、そういって檻を見上げている。檻の中から野蛮な獣の悲痛な叫び声と怒号が飛び交うなか、あたしは蘚琉を地上へと誘う。


「おっと……きゃっ!」


着地とともに、バランスを崩した蘚琉は、地面に倒れてしまった。無理もない……しばらく歩いていなかったのだから、足の筋肉が衰弱しきっている。これは暫くリハビリが必要だな。


「肩貸すわ」


と、あたしは手をさしのべ彼女を掬い上げる。さながらお姫様だっこのような形をとった。あーあ……翔琉ちゃんにやってほしいなこれ。


「ありがとうございます……えっと……あなたたちはいったい……」

「あたしの名前はリュウ。 まあ、医者ってことでいいわ。 あそこにいる男はロギウス。 まあ、神様ってことでいいわ」

「医者は分かるけど、神様って!え!?」


分かりやすいリアクションを取ってくれて、ありがとうございます。まあ、今となっては当たり前になっちゃってるから実感が薄くなっているのもあれなのだけど……本当は易々と神様になんか会えないのが普通よね。こうして、神様にお願いとか色々しちゃったり、されちゃったりしてるのが異常なのよね。


「まあ、とりあえず神様なんだってことで、割り切って貰っていいかな?」

「んじゃ、はい……そうしないと、話が進まないんですもんね」

「あら、物分かりのいい人だね。 あたしは、そういう人好きよ……もちろん人として。 恋愛感情なら、あたしはもちろんあの人だけね……」


ふふふっと、顔が赤くなってしまった。恋する乙女の顔って真っ赤になるものよね。


「えっと……リュウさん……? で、いいんですよね?」

「そうよ、なに?」

「さっきの話って本当ですか? 兄が……翔琉お兄ちゃんが生きてるって……」

「ええ……今のところ、あの化け物に殺されなきゃね……」


と、チラッとあたしはパラノイアの閉じ込められている檻を見る。パラノイアは依然として、檻を壊そうと死に物狂いで這えずり回っている。生物って追い詰められると、あんな感じになるんだな。まあ、【窮鼠、猫を噛む】って言葉もあるくらいだからある意味当然なのかもしれないね。


「あ……パラノイア……」


と、恐怖に脅えながら彼女はその獣の名を口にした。兄を殺し続けた獣の姿を直視するということは、彼女にとってどんなに辛いことなのか、あたしには想像が及ばない。だけど、痛くて辛いと言うことだけは何となくわかる。大切な人を目の前で失う痛み……それは、どんな傷よりもある意味で痛いものなのかもしれない……。


蘚琉(マスター)蘚琉(マスター)がおいらの名前呼んでくれた! 蘚琉(マスター)がおいらの方を見てくれた! 蘚琉(マスター)♪ 愛してるよ♪」


暴れることを止めて、まるで子犬のようにうるうると主人(こける)を見つめる一匹の檻の中の獣。

そんな、獣に主人はにこりと笑みをこぼして……。


「パラノイア……私に好意を抱いてるのは、わかった……でも、お兄ちゃんを殺した瞬間、あなたは人殺しの(ケダモノ)になってしまった……そんなあなたを愛し返すことはできない……だから、私は厳しいことを言いましょう……あなたのことが嫌いだわ!」


と、冷たい一言を発したのだった……。その瞬間、獣の理性は消え失せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ