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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
パラノイアクライシス編:第1章~真実の神に願いを~
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4thステージ7:不死者vs生命を食らう獣

不死者……そう一般的に定義させるには、とにかくどんなことをしても死なないということを確証させなければならないだろう。

例え話だが、どんなに攻撃を受けても無傷の男がいるとしよう……。だけどそいつは、毒などの内部からの攻撃には弱い……。毒を飲んだら死んでしまう。

こいつの場合は外的には無敵だけど、内的には一般人と同じだ。だから、この場合は不死者ではない。

また例え話……とある女がいたとしよう。彼女は身体は弱々しく、すぐに倒れてしまう。しかしながら、どんなに攻撃を受けても、どんな毒を飲んでも、どんな状況でも死なずに生きている。

こういうのを不死者というのだ。

とにかく不死者とは、どんな状況でも生き延びなければならない。それが、そのものにとっての定義になるからだ。


「おりゃ♪」

「ぐっ!」


パラノイアはあたしの腕を噛み千切った……が、すぐに腕は治った。


「あはは♪ こりゃいいや……無限に喰える……少なからずとも魔力が宿った肉体なのだから、少量だがちゃんと魔力は奪えているし♪」

「ぜぇ……ぜぇ……そう、易々と喰ってると痛い目見るわよ……」

「む? なに? ぐ! ……。……。ぐぅぅぅぅぅ……」


パラノイアは、お腹を押さえて苦しみ始めた。それもかなり痛そうに……。そりゃあ当然だろう。あたしの身体は毒だぜ。

というのも、水属性の治療魔導士ってのは、相手のダメージを1度自分に不純物として蓄積させて治すシステムだ。その後蓄積した不純物を身体から放出して浄化するというのを古くから行っている。

丁度、この後に行う予定だった不純物の浄化をまだあたしは行っていない。

つまり、今のあたしは痛みの塊みたいなものなのだ。

そんなやつの身体を食べたらどうなるか……もう、想像がつくかしら? あたしは、毒なのよ。今現在……。だから、パラノイアは毒を喰らい続けていたってわけ。

蓄積された痛みという毒は、やがて全身に周り動けなくなるでしょうね。


「ぐぅぅぅぅぅ……痛み……久方ぶりに感じた……ぐぅぅぅぅぅ……」

「今よ!」


あたしの号令と共に、【それ】はパラノイア目掛けて打ち出された。その【それ】……キューブはパラノイアに命中した。


「しまった!」


と、彼が叫ぶつかの間……あっという間に彼は包囲され、そして体内の天野蘚琉と切り離された。

まるで、アメーバの分裂のように……ぶちっと、二手に見事に分かれたのだ。


蘚琉(こける)! おいらの蘚琉ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」


パラノイアの必死の叫びも届かず、天野蘚琉はあたしの方に飛んできた。そして、あたしは優しくキャッチした。野球で言うフライのボールをとるように、手を添えて優しくキャッチした。

思った以上に軽くて驚いた。もしかして、これは!


「水の魔法:生命診断(せいめいしんだん)!!」


やはり、思った通り……栄養失調になりかかっている!それも、かなり重度だ。


「パラノイア……あんた、蘚琉にあげるエネルギーって、実はあんたのその燃費の悪い身体のせいで、まともにあげられてなかったんじゃないの?」

「いや!そんなことはない! 何故ならば、数百数億年経とうが、天野蘚琉の歳も見た目も変わっていない……つまりは、エネルギーをちゃんと吸収していると言うことだ! なにいっちゃってんの? 蘚琉(マスター)に愛してもらうための物語なのに、蘚琉(マスター)殺しちゃったら元もこもないじゃん!」


まあ、確かに……。だとしたら、なぜ彼女はここまで弱ってしまっているのだ?栄養がもし足りているとするならば、残る問題は天野蘚琉自身の【生きる力】ってやつか……。つまりは、精神論に到達してしまうわけだ。目の前で大好きな兄が死ぬ。それが2度も繰り返されたときの精神……自分を愛していると言う獣のせいで死に行く違う世界の兄達。それをもしも、間近でずっと見続けてきたのなら……彼女の精神状態は微弱となって、生きる力を失う……つまりは、生きながら死ぬことにつながる。その状態で栄養を与えられても、彼女の身体は拒否してしまうだろう。彼女はもはや、生きようとしていない。むしろ、今ギリギリのところで生かされ続けて、永遠に覚めることのない悪夢を見続けさせられていると言うことか。


「じゃあ、彼女を起こすにはたった1つの方法しかないね……」


あたしは彼女の耳元である言葉を呟いた。おそらく、彼女がもっとも必要として、もっとも聞きたい言葉であろう。


「あなたのお兄さんは生きています……今この世界で……」


すると、天野蘚琉は静かに目を明けあたしに向かって言った。


「その話、本当ですか?」


なんとも、優しい声だった。この感じ、やはり兄妹って似るものなのだな。

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