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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
オールドア編:第2章‐暗黒魔法教団‐
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1stステージ16:運命の兄

 重い表情のまま、ディルは俯いてしまった。

 彼女と組織の間には、いったい何があったのだろうか?

 きっとそれは、俺が聞いていいような、簡単な話ではない事は分かる。

 ライは再び組織について語りはじめる――――


「―――暗黒魔法教団には、暗黒賢者ダーククリフと呼ばれる幹部が5人いてな、その5人は7人の大魔導士や、3人の太古の魔導士にも劣らない実力を持っていてな――――全員が、太古魔法を使える手練れだ……」


 とライは言い、表情を暗くして彼もまた、俯いてしまった。

 彼にもまた、忘れたい悪夢が、胸の奥に沈んでいるのであろう―――

 ん? まてよ?


「幹部って事は、じゃあボス―――いや、この場合は教祖か。 教祖がいるって事か?」

「いいや、それは無いよ翔琉ちゃん。 何故なら―――何故なら、教祖のブラッド=ブラックは、戦争後に処刑されたからね。 つまり今、あの教団は暗黒賢者たちによって成り立っているという事なのでしょうね―――」

「その、暗黒賢者の1人が今ここにいるらしい―――神殿最奥部の、封印の間に」


 封印の間―――後にエンに聞いたところ、本来の封印の間の用途は、龍族の長老達が代々記憶を転生させて、龍族のしきたりを永遠に残すための神聖な場の事で、普段だと長老以外は立ち入り禁止となっている場所である。

 そんな場所に暗黒賢者がいるだなんて、まるでRPGのボスみたいな立ち回りだな―――

 とにかく、俺たちは封印の間へと向かった。

 そこにいると思われる暗黒賢者とホルブに会うために―――

 

 厳格で気品あふれる扉の前に、俺たちは立っていた。

 扉の表面には、龍族の紋章が描かれていて、装飾に金銀などをあしらっている。

 この扉の奥が、封印の間―――つまり、暗黒賢者が現在いる場所である。

 ――――重々しい扉を開けて、封印の間へ入ると、空中に磔にされている男と下でその光景を眺めているマントの人物がいた。

ディルが磔にされている男に向かって


「ホルブ!」


 と叫んだ。

 どうやら、磔にされている男が、闇の大魔導士ホルブであるらしい―――ならば、マントの男が暗黒賢者という事だろう。

 ――――マントの人物は、ディルの声によって、こちらに気付くと振り向いて、淡い炎の灯りの中、口を開いた。


「おやおや、これはこれは大魔導士ども―――それにライ、久しぶりだな」

「その声は、まさか――――――」


 ライの声に反応するように、マントの人物は、自身のマントを脱ぎ捨て、正体を明かした。

 炎の灯りが照らした、暗黒賢者の正体とは―――灼眼の虎の獣人だった。


「ふはははは―――兄の声を覚えていてくれたとは嬉しいよ、ライ」

「ボル―――暗黒魔法教団暗黒賢者の1人にして、空間魔法の使い手、そして俺の義理の兄だ―――」



 語られていなかった歴史がまた1つ紐解かれる時がやってきたようだ。

 ライには兄がいた―――悪魔みたいな男、という表現を彼はするだろう。

 幼少の頃、ライは兄からDVを定期的に受けていた。

 ボルは痛めつける行為にこそ快楽を覚えていたのではないか、と言うほど狂っていた。

 人間からの容赦ない暴力―――そして、兄からの日常的なDVに、ライの肉体は限界に来ようとしていたのだが、そんな彼に転機が訪れる。

 ディルの父であるディンが、奴隷を解放するために、村へと訪れたのである。

 奴隷から解放された直後―――ライはディンに弟子入りした。

 そうすることによって、兄から逃れることが出来ると考えたからだ。

 しかし直後、ボルは行方をくらませた。

 当時は、気にも留めていなかったが、いずれ最悪の形で再開を果たすことを、彼はこの時知る由もなかった――――

 ライがディンの弟子になり7人の大魔導士の1人までになるほどに成長したあと、ライは世界を守る戦争へと出撃することになった。

 暗黒魔法教団と呼ばれる、世界を混乱に陥れようとする教団と戦うためである。

 しかし、彼はこの戦いに参加するべきでは無かった――――何故ならば、暗黒魔法教団の幹部である暗黒賢者と呼ばれ、人々を斬殺する義兄ボルの姿を目の当たりにすることにするからだ。

 ライは他の大魔導士と協力し、どうにかボルを撃退することに成功する。

 その後ボルは捕まり、死刑になった―――そう聞いていた。

 だが現実は生きながらえていた。

 こうして、目の前にいるのだ。

 あの悪魔のような兄が――――



「よお、ライ。 久々に兄に会えて、嬉しいか? 嬉しいですって言え」

「うるさい‼ なんで生きてるんだよ‼ お前は死んだはず―――そう、処刑されて死んだはずだ、それなのに何故―――」


 ライの顔は怒りに満ちていた。

 彼にとっては、もう2度と会いたくなかった人物であり、何より、この世界には既に存在しない人物なのである。

 ライの悪夢の元凶を作った男―――ボル

 その男は、表情を変えずに、ただただ冷淡に


「公式記録では―――な。 いや、危なかったんだぜ実際。 あの時、仲間が助けてくれなきゃな―――」


 と言う風に言うのだ。

 彼が生きているという事は、あの時処刑されたのは替え玉、つまりは影武者であったという事である。

 つまり、世界魔法連合内に裏切り者がいるという事を示しているのだった―――


「まあ、なんにせよ。 俺は生きている。 ライ―――お前を痛めつけ弄り殺しにして、その後に他の魔導士たちを殺し、世界を再び混沌へ誘うのだ‼」

「なんだと! そんな事はさせるものか!」


 ライの声が気に入らなかったようで、ボルは耳に指栓をする。


「そういちいち大声出すなよ、ライ。 耳がキンキンするぜ―――」


 はははっと笑うボルに、怒りに身を任せてライは向かっていこうとした―――が、ディルとリュウがそれを抑えた。

 ライは静止を振りほどこうとしたが、それをエンはさせなかった。

 仕方がなく、ライはその場でボルに怒鳴りつけるかのような大声で言う。


「お前の目的は俺なんだろ? 他の連中は関係ないはずだ。 黙って俺と戦え!」


 するとボルは指栓を外して、顔色一つ変わらなかった表情を、黒々しく変えていき、首を横に振り


「いいや―――お前らには苦しみを与えなければならない。 苦しみの先に、快楽を―――ブラッドは俺にそう教えてくれた。 だから、俺はお前たちに快楽を与えてやる。 永遠の苦しみに、喘ぐがいい―――」


 が、その前に―――と、ボルは俺を指さした。


「一番後ろのお前――――いったい誰だ? あの戦争の時には見なかったが――――なんだ? ライの新しい仲間か?」


 ボルはすごい顔で睨んでいる。

 ――――と言うか、殺気に近いだろう。

 俺はその殺気に、ビビッて後ろに後退りしたが勇気を持ち、踏みとどまった。

 そして口を開く―――


「俺の名前は天野翔琉、今はディル達と旅をする、ただの見習い魔導士さ」

「ほう―――見習い魔導士の割に、大魔導士たちに比べて、劣らず高い能力値だが――――」


 といい、ニヤリと笑いながら、虫眼鏡を取り出し俺に向けたのだった――――

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