4thステージ4:神の逆鱗
伏神殿最上階【謁見の間】。全ての世界を見ることができる、巨大な水晶体がある場所。歴代の神はここから全ての世界を見て、観賞し干渉してきた。あくまでも、あたしたちの世界へと移動する以外には【オールドア】を用いなければならない。
それは、始まりの神が定めた世の理だ。
そりゃあ、ディルみたいな時間の監視者になると、ある程度干渉は出来るが、肉体の移動は出来ない。だけど、翔琉は例外中の例外。稀に何かの弾みで、次元に歪みができる場合は移動できる。そんな奇跡みたいな確率で迷い混んだ翔琉は、ある意味ラッキーボーイなのかもしれない。
「さあて、謁見の間に着いたぜ」
そういって、ブラッドは謁見の間の扉を勢いよく開けた。強い光が差し込み、その先に見えた巨大な水晶体ーーーそして、そのそばには【真実の神】がいた。
真実の神ロギウス。以前見た容姿とは異なり、今では見た目が爽やか系色黒男性だった。布を身体に巻き付けているだけの、お見せできるギリギリな格好だけど……まあ、今はそれどころじゃないのよね。
「おやおや、珍しいお客……というか、大魔導士の諸君とその他もろもろ……久しきものもいれば、始めましてというべき人物もいるな……改めて名を名乗るとしよう」
と、ロギウスはこちらを振り向いてペコリとお辞儀をした。神様なのに何て律儀なのだろう。
「俺の名前はロギウス。 真実の神の称号を与えられた神だ。 よろしく頼むよ」
「さてさて、早速で悪いんだけど……今起きてる事情は把握してるかしら?」
「うむ……分かっているぞリュウ……あの伝説の怪物が目覚めたんだろ? この水晶で下界を眺めていたから知っていた……」
「じゃあ、なんらかの対策は? 一応考えているということでいいのかしら?」
「否……いまはまだ考えつかない……というか、対策が思い浮かばない。 我が主である、レネン様なら何か知っておられるかもしれぬが……今は天野翔琉と共に別世界におられるからな……」
ふう……と、ロギウスは疲れきったような溜め息を溢した。まあ、確かにレネンならなにか知っていたかもしれない。仮にもロギウスを転生させた張本人なのだから。
「じゃあ、今パラノイアはどうなっているか分かる? 急いで逃げてきたから、いまどこにいるのか分からなくて……」
「おお、それならば分かるぞ……映像水晶」
ロギウスが、手を水晶に翳すと下界の様子が映し出された。そこには、民にキスをして魔力を奪っているパラノイアが映し出された。
『やめてくれ!』
『やめないよ~チュ』
『んんん!!!! …………。』
【バタッ】
『ぷはぁ……薄いね、君の魔力。 これじゃあ、試食コーナーレベルじゃん……。 さっきのアニオンとかなら、まだお菓子レベルだったのにな~。 逃げたあいつらの魔力分なら、腹一杯になりそうかな……うふふふ……蘚琉……君に捧げよう……あいつらの命をね……あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは♪』
『逃げろ! みんな、逃げろ!』
『うむ……でも、面倒だからこの世界にいる生物の魔力は1度に奪い去ってしまおうかな……』
【ふわりと、上空にパラノイアは浮かび上がり手を広げてニコリと笑みを浮かべる】
『魔力全吸収発動』
【ズズズッと、まるで麺ものをすするように彼が仕草をすると、下界の生物は活動を停止した。そして、光の玉が彼のもとに集い、彼はそれをすべて食らいつくした。】
『さてさて、リュウたち探すかな……うふふふ』
ブツン。
映像はそこで切れた。まあ、映像だけでなくロギウスもキレていた。
「あいつ……民をよくも……よくも……」
ロギウスは、急ぎ支度を始める。まさか……。
「ロギウス! どこにいくつもり!?」
「決まっておろう……下界じゃ! あいつをぶっ殺してやる!」
「落ち着いてロギウス! 今無策に挑んでも……」
「うるさい!」
そういってロギウスは下界に飛び出していった。それは、水晶に映し出されていた。
『お前は誰だ?』
【ロギウスは、もうすでにパラノイアの前に来ていた。】
『真実の神ロギウス……民の命……返してもらうぞ』
『‼ お前……蘚琉を奪う気だな! 渡さないよ! 蘚琉は俺のものだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
激昂の真実の神vs被害妄想の化物。その壮絶な戦いが幕を開けた。




