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4thステージ1:死の接吻

「あはぁぁぁぁぁぁ……主の寝息がおいらの首もとまでやってくるぅぅぅぁぁぁぁぁ……なにこれ……最高なんですけどぉぉぉん……」


他の場所で言えよ、と言わんばかりの恥ずかしい台詞を平然と言うパラノイア。

しかし、侮ることなかれ。こいつは、始まりの神が命がけでようやく倒したほどの実力を持っている。

先程の、山を破壊したのもほんの準備運動程度だろう。

それほどまでに、恐ろしい相手なのだ。


「ところでさ……君たちだれ?」


そういって、パラノイアはあたしたちを指差した。

みんな、動揺してすぐにしゃべる事はできなさそうだったのであたしが話すことにした。


「はじめまして……あたしは、リュウ。 世界魔法連合っていう組織の水の大魔導士って称号を与えられている女よ。 後ろにいるのはあたしの仲間たち……どう? これで、説明になった?」


ふふっと、パラノイアは笑う。


「君すごいね……リュウって言ったね。 今までおいらの質問にきちんと答えられたやつなんていなかったぜ。 大抵すぐに攻撃してきて、おいらの反撃で殺されてくんだから……だからこそ、ここできちんと挨拶もできて質問にも答えてくれた君は素直にお利口さんだねって誉めてあげるよ」

「それはありがとうございます……ところで、パラノイアさん……あなた先程天野翔琉を殺すって言っていたけど、どういう意味かしら?」

「おやおや? お利口さんかと思ったけど、ちゃんと理解していないのか、はたまたわざとやっているのかな? 天野翔琉を殺すって言うのは、そこにいる男と、今異世界にいる最後の天野翔琉を殺すって意味だよ。 おいらの大好きで愛している蘚琉(マスター)は、天野翔琉を兄としてしたっているからね……おいらはどうしてもそれが許せないんだよ。 (マスター)は、おいらだけを見ていてくれればいい……主はおいらだけのものだ……主はおいらの……おいらの……おいらのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


そういって、パラノイアは鼻血を垂らした。

どんな妄想に浸ってるんだ?

いやいや、そもそもその前にこいつ……ヤバイ。典型的なストーカー&病んでるやつだよ。考え方が猟奇的でサイコパス的すぎる。


「それじゃあ、取引しましょうよパラノイアさん……」

「取引?」


鼻血を止めながら彼は、あたしを睨み付ける。


「そうよ……その最後の天野翔琉っていう人……あたしたちにとってすごく大切な人なの……だから、殺さないでほしいの……」

「取引っていうんだから、それに合った報酬ってのはあるはずだよな?」

「勿論……そこにいる天野翔琉……いや、イミナ=ファルコンを檻に閉じ込めるって条件はどうかしら?」

「ほう……今はイミナ=ファルコンってなのってるんだ……翔琉お兄ちゃん……いや、イミナお兄ちゃん……」

「どうかしら?」

「いやだ……条件として釣り合っていない……そもそも二人とも殺すんだから、死なない時点で論外だ」

「じゃあ、あなたがもし開示できる最低限の条件と言うのはなにかしら?」

「ふむ……天野翔琉の死だけだな」

「じゃあ、交渉の余地はないと?」

「まあ、そうなるな……悪いねリュウ。 おいらは別に君たちを殺そうとかそう言うことは考えてないんだけど……天野翔琉を擁護するなら容赦しねーぜ……」


ぞわっとするような、殺意が一瞬漏れた。

あたしは、息を飲んだ。全身から魂が抜け出してしまうほどの、脱力感を一瞬味わったのだ。

改めて感じたけど、こいつはヤバイ。


「まあ、でもそうだな……うーんと、ちょっとそこの小さいお嬢ちゃん」


そういって、パラノイアはアニオンを指差す。

アニオンは、私!?と言う、ようなリアクションをとっている。


「うん、君君。 ちょっとこっち来て……」


アニオンは恐る恐るパラノイアに近づいていく。


「君小さくて可愛らしいのに、すごく強そうな力を秘めているね♪」

「ええ……まあ、これでも3人の太古の魔導士の1人だし……」

「そっかそっか、じゃあご褒美……」


そして、パラノイアはアニオンにキスをした。

ぶちゅ……。


「むぐっ!?」


アニオンは突然のことでかなり動揺したが、気持ち良いのか?

頬を赤めている。

しかしながら、それはすぐに青くなった。

みるみる彼女の身体は白くなっていった。

そして、最後には白目を向いてだらんと、身体の力が抜けていった。


「むぐむぐ……ぷはぁぁ……久々に食べる魔力おいしい♪」


と、パラノイアはそういって、アニオンをあたしの方に放り投げた。

アニオンは白目を向いたまま、宙を舞う。


「危ない!」


と、あたしは彼女を抱き抱えた。


「アニオン? アニオン! しっかりして! アニオン!……冷たい……え? 嘘でしょ……」


アニオンの手は氷のように冷たかった。

まるで死んだように……。


「アニオン! アニオン!……これは、魔力零(ノーライフ)の症状……! トルネ!ホルブ!力を貸して!」


あたしは、急いで応急処置に入る。

あたしたちの世界では、体内に精神の器を持っている生物で構成されている。

この精神の器の中には、その人その生物の命の源とされる魔法の力……魔力が宿っている。

そして、この世界の住人にとって致命的なのは魔力が零になると生命活動が停止するということだ。

翔琉の拒否、ダイアリーの無効魔法ですら、相手の体内の魔力に干渉することは出来ない。

唯一例外があるとすれば、消去魔法。

これが、多くの命を代償にする理由が【精神の器のリミッターを外して使用する】ため、零になるまで魔力を消費してしまうからなのだ。

逆に言えば、魔力零の状態で生命活動を停止した場合は、すぐに魔力を注いであげれば復活できる。

つまり、あたしたちにとって魔力とは、翔琉の世界で言うところの車のガソリンみたいなものなのだ。車はガソリンがなければ動かない。

つまりあたしたちにとっての死とは、肉体的に致命的なダメージの他に、魔力零による生命活動の停止が含まれているのだ。


「アニオン! 今助けてあげるからね! 水の魔法:体外魔移(マジックリフト)!」


あたしは、自分の中の魔力とトルネ、そしてホルブの魔力を変換してアニオンの身体に注ぐ。

すると、アニオンの冷たかった手が暖かくなり、顔に生気が戻った。

なんとか、一命はとり止められたか……。


「うぉ! すごぉい! 君まるで、魔法使いみたいなことできるんだね♪ 拍手拍手」


そういって、パラノイアは楽しそうに笑っている。

冗談じゃない。

人の命をなんだと思ってやがるんだ。

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