3rdステージ50:きっと待ってるから
「召喚魔法終了まであと、15秒か……」
ジンライが残念そうに呟いた。
ジンライにとっては、久々に親に出会えたのだからもう少し長く会わせてあげていたいという気持ちもある。
だけど、今いる彼は私たちが助けようとしている天野翔琉じゃない。
それどころか、もし未来の翔琉ならば助け出さなきゃ彼はここに存在することができなくなるだろう。
「翔琉……召喚時間がそろそろ限界ね……」
「そうだな……お?」
天野翔琉の身体が光に包まれて行く。
まるで魂だけの存在であるかのように……。
「じゃあな、みんな……また……」
「翔琉!」
そういって私は走っていた。
彼のもとに走る。
しかし、近くの石に躓き、倒れてしまう。
「うぅぅ……翔琉……」
ポタポタと涙が地面に向かってこぼれ落ちる。
天野翔琉は、そして消えた。
ただ、彼は笑って消えた。
太陽のように明るく眩しい笑顔。
全てを元気にするその笑顔。
「約束する……必ず、助けてあげるから! 絶対に助けてあげるから!」
私は改めて決意を固めた。
天野翔琉を救い出す。
そのためには、一刻もはやくオールドアを直さなければ……。
あれから数時間経過した。
といっても、数時間過ぎたには色々と問題があったからだ。
まず、儀長たちを拘束・投獄するところから始まった。
罪状は【権利の乱用】。
あと、200年くらいは牢屋の中から出られないでしょうね。
かわいそうに。
次に、ドッペルゲンガーの復活。
彼は彼で、利用されていただけの人形だった。
だから、私は彼を助けてあげたいと思った。
そして、復活したら私の弟子にして心について教育しようと思う。
私とリュウ、そしてジンライの3人がかりでようやくダイアリーの無効魔法を解除した。
空間に亀裂が走り、そこから天野翔琉の姿をしたドッペルゲンガーが姿を表した。
「おや? 助けてくれたみたいだね……一応礼というものはしておこう。 ありがとう」
と、ドッペルゲンガーはペコリと頭を垂れる。
そんな彼に私は言った。
「ドッペルゲンガー……あなた、私の弟子になりなさい……」
え?と言わんばかりの顔をしたドッペルゲンガー。
「は?なんで、僕がお前の弟子に?」
「あなたは強さはあるけど、志というか心がない。 だから、私があなたに心を教える。 心とは人と人とが育み育つ力。 だからこそ、あなたには師が必要です。 だから、私があなたの師匠になってあげる」
「なってあげるって……勝手な……まあでも、僕が知りたい心を教えてくれるならば、その心意気に免じて弟子になってやってもいいぞ」
「かわいくないやつ……まあ、じゃあよろしくねドッペルゲンガー」
「うん。 あ、僕の事は気安く【ドッペル】って呼んでくれて構わないよ」
「あ、そうですか……」
こうして、新たにドッペルゲンガーが仲間になった。
心惑わす人形。
果たしてこの先どうなるのか……
それは、結末まで分からない。




