3rdステージ49:残り30秒
「神絶対滅亡操作……」
そういって、魔法はかき消された。
天野翔琉の拒否。
儀長たちは、なすすべもなくやられていく。
ファイバー、そしてソルの意識は失われた。
魔法拒否からの、行動拒否。
天野翔琉は、もはや神の領域さえも脅かす最強の魔導士となってしまった。
「あと2人……残り、54秒……」
天野翔琉召喚終了まで、残り1分を切った。
残る儀長はシバとダイアリーの2人のみ。
「翔琉……強すぎ……」
私は不意に声を漏らした。
10時間以上かけて、ようやく互角だったのに……天野翔琉はものの数分であんなにも強い儀長たちをあっさりと倒してしまった。
翔琉のパラメーターというか、強さの度合いが違いすぎるんだけど……
「ねぇ……そこのライの弟子……えっと、名前は……」
「フィリよ。 気安く呼び捨てで構いませんわ」
「じゃあフィリ。 あの翔琉っていつの時代の翔琉?」
「え? 知りませんわ」
「は?」
しれっとなに言ってるんだ?
「あの召喚魔法は、この世界の時間軸ってだけだから、過去かもしれないし未来かもしれない……というか、そういうのはあなたの方が専門分野じゃないんですか?時の監視者ディル」
「チッ……そうだね。自分で調べますか……」
私は衣の懐より、とある道具を取り出す。
それは、双眼鏡である。
時の双眼鏡。
他者の時の流れを見ることができる道具。
まあ、衣の七つ道具の1つだ。
「えっと……今の翔琉は……2か月後の姿?」
この場合は、今から2か月後という計算になる。
つまり、この時点で天野翔琉救出はほぼ確定している。
だが、なんだ?
平和になったなら、翔琉がこんなに強くなるはずはない……。
まだ何かと私たちは戦わなければならないのか?
こんどは何と……。
「これで終わり! 光の魔法:完全強制終了」
完全強制終了。
光の魔法の中で、唯一無二の【異常状態系】の魔法だ。
他者の能力を全て封じ込めて、行動不能・思考不能にする魔法だ。
ちなみに、発動するには通常ならば自身の寿命を消費しなければならない。
絶対的な力を使う代償なのだが、神魔法状態だと別だ。
単に神魔法が解除されるだけで済む。
本当に神魔法は特権事項が多すぎる……。
「あたぁぁくしぃぃの、無効魔法がぁぁぁぁぁ!!!!」
そういってダイアリーは気を失った。
断末魔に近いなにかを感じるが、彼女の話し方はいつも特徴的なので、似たようなものか。
シバは、必死にこらえていたのだがとうとう力尽きた。
いや、別に死んでないからね。
気を失ってるだけだからね。
「残り30秒……うん、儀長たちを倒せてよかったよかった♪」
神魔法の解けた天野翔琉は、満面の笑みでこちらに向かってピースをしている。
私たちの10時間がバカらしくなるほど、鮮やかに勝利した。
結論を言わせてもらうならば。
「気持ち悪い才能ね……」
の一言だった。




