3rdステージ46:僅差を破るために
あれから、かれこれ10時間くらい戦いが続いている。
私たちの全力で、儀長5人とようやく互角に戦えているのが現状だ。
「我らに歯向かおうとするのは誉めてやろう……なぁ、ディル」
シバはボロボロの私に向けてそういった。
正直言えば、限界まで力をあげているのに。こんなにもギリギリになってしまうだなんて。
なんて力なんだろうか。
「さすがは、旧世代最強と言われた光属性の太古の大魔導士……」
シバ。
旧世代最強と言われた元光属性の太古の大魔導士。
彼の魔法は、光を凝縮させて放つ一撃。
俗に言う、ビームを出す魔法使い。
閃光魔法の使い手。
古に禁忌とされ、封印されていた魔法を唯一現代に伝える継承者。
私と似たような境遇だが、唯一違うとすれば彼は彼の師匠を彼が殺したと言うこと。
師匠殺し。
決闘によってもぎ取った魔法が、最強だっただけなのだ。
「ディ~~ルちゃぁぁあん……あたぁぁぁくしをぉぉ、無視しちゃぁぁ、だめよぉおおお!」
そういって、ダイアリーは私に向かって攻撃する。
彼女の攻撃は絶対に回避しなければならない。
「うぉ! あぶな!」
ギリギリでかわした私は、ゾッとした。
空間の1部が消滅していた。
完全なる無の世界。
それを目の当たりにした。
ダイアリー。
元闇属性の太古の大魔導士。
彼女の魔法【無効魔法】は、この世の全てを無効にしてしまう。
アニオンの魔法と近いような気がするけど、アニオンの魔法は限りなくゼロにするのに対して、ダイアリーの魔法はゼロよりも存在しなかったことにしてしまう能力。
この場合は、【ゼロなんて、そんなのなかったじゃないの】ということにされてしまう魔法なのだ。
消去魔法にも近いが、天野翔琉の二重人格の煉……いや、レネンが使用した究極とまで言えるほどの消去魔法のような効果は持ち合わせていない。
しかしながら、命を代償にしてないとはいえ、充分に恐るべき能力なのだ。
先程のドッペルゲンガーが消されたのも同様の魔法であろう。
「かわさないでぇぇほしぃぃぃわぁぁぁ」
「いや、かわさなきゃ死ぬだろ!」
「あたぁぁぁくしの魔法はぁぁぁ、別にぃぃぃ殺す魔法じゃなぁぁぁぁくてよぉぉぉ。 無に帰す魔法なだぁぁぁけよぉぉぉ」
「それって、殺してるのと同じじゃん……うわっと!」
無詠唱での、無効魔法攻撃。
危ない危ない。
「きぃぃぃぃいいいい!!!! かわぁぁぁすだなぁぁぁんてぇぇ、いけなぁぁぁんしょ!」
「もう! 個性強い奴らばっかりだな!」
一応空間の時間を止めているので、攻撃などは全て世界を壊すような勢いではないのが幸いだ。
ただ、酒場はもはや破壊されているので、この酒場のあった荒野での死闘となっている。
長い長い戦闘。
次第に私たちの気力体力を蝕んできている。
どうにか、優位に立てるような作戦を考えなくては……。




