3rdステージ44:私の名前は……
「なぜお前達がここに!」
と、シバが狼狽する。
他の儀長も明らかに動揺していた。
「それは、私から説明してやるぞ」
と、太古の大魔導士アニオンは口を開く。
「あの時……あの洞窟の戦いの後、私たちは起源泉を入手することには成功した……だけど、ドッペルゲンガーの最後にはなった完全記憶消去によって、仲間の一人がやつに誘拐された。 そして、私たちは水の大魔導士リュウと、その師匠ミコトの【完全異常状態回復魔法】によって、記憶も傷もその時に既に回復していた……気がかりだったのは、誘拐された仲間。 私の情報網ですぐに居場所は分かったけど、ドッペルゲンガーが近くにいたのでは、取り返せない。 それで、監視だけはしていたんだけど、するとどうだろうか? 儀長さんたちもその場にいるじゃないの。 何か変だと思って、調べてみたら真っ黒い企みが浮上してきたって訳……儀長たちの目的は【不老不死となること】。 その点仲間の時空間魔法の使い手である彼女はまさに時間を操ることのできる女……刹那を永遠にすることも造作もない……だからこそ、不老不死の生け贄……いいえ、【代償生命術】の犠牲にしようとした。 他者の時間を奪って、永遠を与える時空間魔法中のもっとも禁断で禁忌とされる悪魔のような魔法……そんな事をさせないためになにをするのか……儀長たちを逮捕すればいい話。 だけど、儀長の権限があるから普通の手段では捕まえられない……だから、儀長といえど許されずに即座に逮捕できる【緊急特例38号】の瞬間を待っていた。 つまりは、犯罪の現場を現場で押さえること……つまり、今のあなたたちは儀長にですらなく、犯罪者ってことよ……この人殺し」
人殺し……。
人殺し……。
人殺し……。
「うぐぅぅぅぅぅぅ……あぁぁぁぁぁぁ……頭が痛い……」
私は苦しむ。
なんだろう、あの単語。
あのせいで何かが狂った気がするんだ。
「ボル!」
と、ジンライが光の大魔導士ボルに言うと彼は指をならす。
すると、いつの間にか私はボルに抱き抱えられていた。
「くっ! しまった、空間魔法!」
シバは悔しそうな顔で見ている。
歯をギシギシとたて、まるで幼稚な子供のようだった。
「じゃあ、リュウ……よろしく頼む」
「任せて……完全異常状態回復魔法発動!」
青い光が私を包み込んで行く。
すーっと、頭の中に何かが流れてくる。
「こ……これは……」
私の記憶?
"「お前の名前はディルだ……私の……娘……」「ディル! なぜできないんだ! いいわけをするな!」「ディル……心配させるなよ……」「ディル……幸せになれよ……」
"
お父さん?
あれ?
今度は違う人が……。
"「ディル……ありがとう!」「この世界って? どう言うことなんだ?」「俺の名前は……だ!」「神魔法光天神発動!」「おーい、ディル♪」「またな……」"
か……か……。
うぐぅ……もう少しで思い出せそう。
"「ねえ、……―――もうすぐ旅が終わっちゃうね……」
「え?」
「恐らく、明日でこの旅は終わりを迎える――――つまり、……は明日、元の世界へと帰るの」
「それって、予言か?」
「――――まあ、そうなるわね。 時魔法を使える女だから、分かることね」
「そうか、明日か――――いよいよって感じだな」
「そうね―――」
「流石に、……でも、寂しいと思うのかしら?」
「失礼な‼ そりゃあ―――そりゃあ、俺は寂しいし、悲しいよ。 みんなと別れなきゃいけないのもさ……」
「―――……、泣いてるの?」
「……かもな。 研究以外で、こんなにも胸躍る世界や、友達が出来た世界を離れるんだから、心が締め付けられるくらい、痛んでいるよ」
「そっか……そうよね。 私も、……と別れてしまうのは寂しいな―――」
"
か……け……。
うぐぅぅぅぅぅぅ……。
"「ディル……思い出して……俺との冒険を……俺との物語を……それでこそ俺の知るディルだろ?」"
言われなくても分かってるわよ!
翔琉。
「お……思い出した……そうだ……そうだった……私は、ディルだ……時の監視者……私はディル! そうよ! ディルだ! 全て思い出した!」
改めまして皆さんこんにちは。
私の名前はディル。
時を操る魔導士。




