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魔法世界に来てしまった結果、最強の魔導士になってしまった  作者: ただっち
ミラージュエンド編:第6章-記憶を無くした女と世界魔法連合-
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3rdステージ42:放虎者

またまた数日たったある日。

いつものようにダンスをしていたんだ。


「いいねぇ……お嬢ちゃん……そのうち、枕営業とかも覚えられるんじゃないかな♪」



と、ビールを片手にした汚ならしいオヤジがテーブルをひっくり返しながら友人と騒いでいた。

なんというか、次第に客層が年配になってきたな。

ガチャリ、と音をたてて入ってきた新しい男を除いて。


「マスター……ビールくれ」


と、男はカウンターのはじの席に座った。

ボロボロのコートを来た、青年だった。

首もとには黄色いマフラーをぶら下げている。

今は夏の時期なのに。

暑くないのかな?

ドッペルゲンガーは、無愛想にグラスを置き別の客の接客に向かう。

男はごくごくと勢いよく飲み干し、ひといきついている。


「あの……すみません」


と、私は彼に声をかけてみた。

すると、男はこちらを向いてにこりと笑い。


「はい、なんでしょうか?」


そんな風に答えた。

その瞬間に、私の脳裏にはある言葉が浮かび上がった。

文字でしかないけど。

発音はできない。

確か、【天野翔琉】って書いたはず。

でも、読むことはできない。

言葉が分からないから。


「この辺じゃ見かけませんけど、どこからやって来たんですか?」


と、男に質問すると。


「俺は、癒しの泉からやって来たんだぜ」


と答えた。

癒しの泉……確か、世界魔法連合の1人の太古の大魔導士と神魔法の後継者が行方不明になった事故現場。

水の大魔導士と氷の大魔導士……そして、2人の太古の大魔導士と癒しの源の元である起源泉を生み出した魔導士は無事だったらしいけど、未だに意識が戻らず入院していると聞いた。


「癒しの泉……」

「おや? お嬢ちゃんよく見ると、俺の知ってるやつに顔がそっくりだね……」

「へぇ……それって、誰なんですか?」

「世界魔法連合の最強と言われた3人の一人にして、時空間魔法の使い手のディルという女だ」

「ディ……ル……うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」


頭が痛い。

吐き気がする。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い‼


「どうした! 大丈夫かい? お嬢ちゃん……」


そういって、男は私の頭に手をのせる。

一瞬光りを帯びたと思ったら、痛みは消えていた。


「はぁ……はぁ……すみません……私、実はここで働く前の記憶がなくて……時々思い出そうとすると、こうして痛みが襲ってくるんです」

「そうだったのか……そりゃあ、かわいそうなことをしてしまって、すまないね……」

「いえいえ……問題ないですよ」

「ところで、お嬢ちゃんは名前は?」

「名前……私は記憶ないので名前は無いんです。 だから、ここのマスターや常連さんにも娘ちゃんとか、呼ばれてるんですよ」

「そうなんだ……じゃあさ、いきなりだけど俺が名前考えてもいいかな?」

「え?いいんですか?」

「まあ、減るもんじゃないから、いいでしょ?」

「……ありがとうございます……これからは、その名を名乗らせて貰いますね」

「うーんと……じゃあ君の名前は【メモリー】。 記憶を取り戻すまでその名前を名乗るといいよ♪」

「ありがとうございます……メモリー……これからは、それが私の名前です」

「じゃあ、俺は行くよ。 ある人物を探さなきゃいけないからね」


カウンターのテーブルに金を置いて、男は去ろうとする。


「あ、すみません……失礼ですが、あなたのお名前を聞かせてもらっても?」

「あーあ、そうだな……名乗らずに失礼した。 俺の名前は【ジンライ】。 神魔法の後継者と呼ばれる魔導士だ……まあ、しばらくは行方をくらませなきゃいけないから、この事は秘密にしといてな♪」


と、言って店をあとにした。

その頭には、虎の耳がひょこっと生えている。

彼こそが、現在行方不明になっている神魔法の後継者。

すなわち、世界最強の魔導士。


「ジンライ……すごく懐かしい名前……でも、思い出せないな……でも、あの人とどこかであった気がする。 私にとって大切な誰かの……あーあ……ダメだ。 思い出せない」


私は忘却のままに立ち尽くすのだった。


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