3rdステージ40:失う
ドッペルゲンガーの正体は、ミコトが魔法によって作り出した人形だった。
ドッペルゲンガーは、天野翔琉の姿で私たちの前に現れた。
ドッペルゲンガーは、1度死んで蘇った。
ドッペルゲンガーは、消滅した。
ドッペルゲンガーは、再び現れた。
ドッペルゲンガーは、現在古き歴史の怪物【パラノイア】に変身してしまっている。
パラノイア……生命を喰らう魔物。
犬の姿をした怪物などなど、それくらいしか情報がなかった。
「あれ? でもまって……そもそも、なんであなたが動けるの? ミコトによって、全て消されたんでしょ? 魔力や記憶なんかも全部……」
と、私はドッペルゲンガーに訪ねる。
ドッペルゲンガーは、にこやかに爽やかに答えた。
「あー、それね♪ ほら、おれっちってさ他人の能力使えるじゃん? だから、そこの人殺し……おっと、人形殺しの時の魔法使いのお嬢ちゃんの時空間魔法を使って、防いだんだよ。 まあ、もちろん天野翔琉くんの力も使ったんだけどね♪ いやー、本当にすごいよ。 天野翔琉くんは……あと、人形殺しのお嬢ちゃんもね」
ふふっと、笑みを浮かべるドッペルゲンガーは、まるで無垢な赤子のようだった。
翔琉がいたら、惚れてるのかな?
はたまた、こいつが翔琉に惚れちゃうのかな?
恋敵は、少ない方がいいんだけどね。
「とりあえず、おいらは自由になったんだ……ようやく、心と言うものも芽生えたことだし……まあ、それは泉の水を飲んだからなんだけどね♪」
「泉の水を飲んだ?」
「そうそう、飲んだ。 そこの年増の涙を飲んだってことでしょ? いやー、しょっぱかったけど、お陰で心と魂がこの人形に宿ることができだんだ。 改めまして、おれっちの名前はドッペルゲンガー。 他者の能力、容姿を模倣出来る魂と心のある人形だぜ♪」
「誰が年増だ! コラァ!」
と、ドッペルゲンガーはミコトに殴り飛ばされた。
そして、泉にドボンと落ちてしまう。
「はぁ……はぁ……まだ、たったの×××××歳だし!」
え……そんなに歳いってるの?
てか、なんで生きてるんだよ。
「不老不死かよ……」
と、思わず言葉をこぼしてしまうほどの年代だった。
年上どころですまない。
下手すると、宇宙が出来るより遥か昔の時代だ。
「お姉さんは、ピッチピチの17歳なんだゾ♪ 文句ねぇよな?」
ぶるぶると大気を振るわせるような迫力を出しながらすごみにきた。
怖いよぉ……。
ザバァンと、泉から飛び出てその場で愉快なダンスをドッペルゲンガーは踊っている。
「てかさ……ドッペルゲンガーくん。 なんで、さっきから踊ってるの?」
と、ジンライが突っ込みをいれる。
ドッペルゲンガーは、凄まじいほどのアクションハードダンスを決めてから返答する。
アクロバティックな技が数秒の間に30個以上はやってやがる。
「うんん? うーんとね、本当はおれっちって陽気な性格なのね♪ だから踊るんだYo!」
「答えになってないような……」
「踊ると、魔力が高まるんだYo♪」
「魔力を高めてなにするの?」
「お前らの記憶を消すんだよ……」
「え?」
次の瞬間、ドッペルゲンガーの身体が光ったと思った……んだよね。
ん?
というか、光ったっけ?
あれ?
あれあれ?
私って誰だっけ?
ここで、何してるんだろ。




