3rdステージ38:パラノイアの正体
さて、私の方は終わったけど。
ジンライの方は?
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!聖邪光纏・剣ver!」
ずばっと、ようやく触手は切り裂かれた。
なんだったんだ?あの触手。
まあいいや。
「みんな、大丈夫?」
と、ヒョウが氷の中から出て来た。
どうやら、全回復したようだ。
よかったよかった。
「うっ……ここは?」
と、リュウが目を覚ます。
足元を触るとびちゃっと濡れている。
その匂いを嗅ぐと彼女は大声で。
「臭っ!」
という。
うん、ここからでもすごい臭いする。
獣臭ぷんぷんな臭いだわ。
「あれ? あいつは?」
「あいつ? あーあ、パラノイア?」
「違う違う、ウール」
「ウール?」
「なんか、パラノイアって名乗ってたけど、あれはウールよ」
「えっと……その……あそこ……」
と、私は目をそらしながらパラノイアことウールがのびている壁を指差す。
「まぁ……ずいぶんと派手にやられちゃって……それよりジンライちゃん。 お願いがあるの」
「なに?」
「あなたの聖邪光纏で、ウールを貫いて欲しいの」
「ってことは、何かに取り憑かれてたってことか?」
「恐らく……のびてる今ならチャンスよ」
「分かった……じゃあ、遠慮なくそれぇ!」
と、手に持っていた剣をウールに向かって投げつけた。
大きな弧を描いて、ウールに突き刺さる。
ザクッ。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
そう叫んだウールから黒いもやが飛び出て、そのまま光によって消滅した。
なんて邪悪な力なんだろう。
まさか、今のがパラノイア?
「見て! ウールの姿が!」
と、リュウが駆け寄る。
彼女に抱き抱えられたウールは幼い人狼の子供の姿になっていた。
「クゥゥン……ハッ!」
と、ウールは起き上がった。
「あれ? 師匠! それに皆さんも……ここはどこ? あれ? 俺は確か師匠を探しに癒しの泉に来て……そこで、天野翔琉さんと出会って……あれ? そこから記憶がない……」
「天野翔琉……いいえ、それは天野翔琉の偽者であるドッペルゲンガーよ……」
「ドッペルゲンガー?」
「まあ、やつは死んだんだけどね……」
「そうですか……気を失ってる間に、俺が何か悪いことをしてしまっていたなら謝ります、ごめんなさい……」
と、彼は深々と頭を下げた。
操られていたなら仕方がないじゃない。
フルートも、アニオンも許してくれてるようよ。
よかったわね、ウール。




