3rdステージ34:この人殺しが!
「ディル! あんた、なにやったか分かってるの!?」
そういって、私の胸ぐらを掴んでいるのは太古の魔導士の一人であるフルートだ。
それも、鬼気として染まっている。
「分かってるわよ……」
と言って私は彼女の手を振りほどいて、空を見上げる。
そして、次第に私の心は闇に染まっていくようなそんな気分だった。
「私は、ただの人殺しよ……かっこうつけようが、何しようが……私は今日ここで人を殺したんだ。 単純にムカついたって理由で人を殺したんだ……」
「……おいおい、勝手に殺すなよ」
え?
声のする方をおそるおそる振り向くと、天野翔琉の姿をしたドッペルゲンガーが立っていた。
「なぜ生きている! 確かに殺したはず!」
「おいおい、いつから殺人鬼のでる小説になったんだよ……この作品ってあくまでもチート少年のチートな物語だったはずだぜ?」
「なにいってんの? こいつ……」
「つまりは、これも天野翔琉の能力なんだよ……死の縁から蘇る事の出来る強運と魔法能力……いやいや、俺もいろんなやつに変身したけど、ここまで凄まじい能力を持つやつは始めてみたよ……」
ふふっと、笑っている。
翔琉……あなたのおかげで人殺しにはなっていないかもしれないけど、もう私の手は汚れてしまったよ……。
私は人殺しになりそうになったんだよ。
「でもね……これだけは、言わせてくれよな♪」
そういって、ドッペルゲンガーは私の方を笑顔で向いて。
「この人殺しがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と、叫ぶ。
その瞬間だった。
私はハッとなって、目が覚めた。
あれ?
気がつくと、泉の上にいた。
氷は溶けており、既にフルートとアニオンが底に行っている。
あれ?
夢?
さっきのは何?
「おーい、ディル達! 早くおいでよ!」
そうアニオンはいっている。
私はジンライを連れて、底に向かう。
これって、デジャヴ?
あれ?
あれ?
あれ?
底についた瞬間に私は、時空間魔法【夜見戻】を発動した。
この魔法は、直前に使った魔法を知ることが出来る魔法である。
「これは!」
そこで驚くべき結果がでた。
私が本来使った直前魔法は、ここに来るまでに使った空間転移魔法のはずだった。
はすだった。
のに。
最後に使った魔法は、時空間魔法の中の禁じ手の1つ。
【時空間魔法:時間遡】。
つまりは、タイムリープだ。
私は、人殺しといわれたあのとき……少し過去の世界へと、無意識に戻ってしまったんだ。
「無意識に……か……」
私はホッとしたような、気がした。
そして、同時に罪悪感も……。
また、あいつが出て来たらどうしようか。
そんな不安が心を支配しかけた時、洞窟の奥からヒョウが現れた。
そして、その場に倒れる。
すごい、怪我だ。
ジンライの光治によって、治したのだが意識が戻らない。
「さっきとおんなじ……」
そう呟くと、再びやつが現れた。
不敵に笑う、天野翔琉の姿をしたドッペルゲンガーが……。




