3rdステージ27:神木【時年樹】
(ライ……生きて……)
頭の中に響くようなこの声。
なんなんだ、いったい。
「でも……この声……翔琉?」
「まちなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!」
そういってフィリは凄いスピードで追いかけてくる。
しかしながら、木が密集した地帯であるので、中々俺には追いつけないようだった。
「そっちにいっちゃだめだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と、さらに後ろから親衛隊の者の声がしたが、俺はお構いなしに進んでいく。
すると、奥の方で緑色に光る空間を見つけた。
「あそこだな!」
といって、俺は一気に向かう。
到着したその場所は、樹齢測定不能と言わんばかりの緑色に発光する巨大な木があった。
そして、その木の上の方から黄色い光に包まれた【なにか】が降ってきた。
あれはなんだろうか?
「やあ、ライ……始めましてだね……」
と、その【なにか】は人の形となって俺に話しかけてきた。
「あなたがさっきから俺に話しかけてきたのか?」
そう聞くと、表情はよくわからないが嬉しそうに頷いた。
「そうだよ……僕が君に話しかけていたんだよ」
そう発光体が言った瞬間に、後から追いかけてきたフィリと親衛隊、そしてトルネたちがやって来た。
「これは……」
と、発光体を見たフィリは驚いていた。
「何故、御神木様がここに……これは、王家に代々伝わる秘匿通路を通らないと拝めないはずなのに……」
狼狽するフィリをよそに、御神木様と称される発光体は俺に手をかざした。
なんというか、暖かくて優しい光……まるで、翔琉みたいだった。
そして、俺の中にあった【戒めの呪い】を取り除いて砕いてしまった。
すると、俺の身体は元通りになった。
「ふふっ……やっぱり君はその身体の方が似合っているよライ♪」
そういって、発光体は宙に浮かび上がった。
そして、木のたもとにちょこんと座り。
「さて、まず自己紹介をしなきゃね~」
と言った。
「僕の名前は【時年樹】。 つまりは、この御神木本体って事かな……まあ、本体は今君たちが見ている後ろにある大きな木なのだけどね」
「木が意思を?」
「そう驚くことないだろ? 風の大魔導士トルネ。 世の中にはまだまだ知らないことが多くあるんだ。 君のお仲間の自称なんでも知ってるアニオンでさえ、知らないことが多くあるんだしね」
「……なるほどな」
「ふふっ。 理解してくれて助かるよ。 まあ、理解できてなくても話を続けさせてもらうけどね♪」
「御神木様‼ 何故、あなた様がこの場所に? ここは、我ら王家の精霊のみが入ることを許される場所……」
「ふむ……勘違いしないでくれるかな? 別に僕はお前ら精霊族のルールで生きてる訳じゃないんだ。 僕は僕の生きたいように生きる……それだけだよ。 まあ、強いて言えばこの僕は、謁見する生物を選ぶことができる。 もちろん、任意でね。 今回はたまたまそれがライくんだったってだけだよ……」
「俺?」
なぜ俺なんだ?
と、いいかけたが発光体は、しーっと口を閉ざしてというポーズを取った。
「ライくんはね……少し特殊な虎族なんだよ……出生は普通。 ごくごく普通の誕生だった……でも……でもね? 君は、ある者の生まれ変わりなんだよ、ライくん」
「あるもの?」
「うん、そうだよ。 その者、強き事稲妻のごとく……命をかけて僕を守ってくれた恩人にして、最高の友達だった人物……いや、人ではないからこの場合は獣と言うべきかな?」
「???」
「彼の名前は、白虎。 虎族初代にして最強とうたわれた戦士……」
えぇぇぇぇぇぇぇ!!!
「え? 俺って白虎様の生まれ変わりだったの?」
「うんそうだよ。 知らなかったの?」
しれっとした態度で、とんでもない爆弾発言しやがったよ……この神木。




